俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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闇の力 悪い奴ら ②

「おぉ、アンサーだっけ? この前捕まったインスタント魔法少女だったカナ」

 

「はい、以前とっ掴まった大バカ娘です! その件につきましてはご迷惑おかけしましたぁ!!」

 

「まあ、あなたを捕まえたのはドレッドですし、謝るのならばそちらが筋でしょう。 ご両親にお話は?」

 

ソファに腰かけた少女が勢いよく頭を降ろし、硬質ガラス製のテーブルへ強かに額を打ち付ける。

それを全く気にせずに運んできたお茶を人数分テーブルに置いて行くラピリスクン、いやはや慣れているものだ。

 

「しましたよぉ、けどそれでも……私を呼んだってことは何かあるんですよね、局長さん?」

 

「う、うむ。 そういう事だよチミィ……」

 

眩しい瞳で真っ直ぐに私を見つめ返す少女、仮に付けられた名前がアンサーという魔法少女だ。

例の錠剤によって変身能力を得たインスタント、戦闘能力こそ低いものの彼女が持つ魔法には一つ目を見張るものがある。

 

「確認だがね、君が得た魔法は”投げかけた質問に答えさせる魔法”でいいのかね?」

 

「はい! ……ああでも、ちょっと語弊があるかな」

 

「ふむ、というと?」

 

「私の魔法でも必ず正しい回答が返ってくるとは限らないです、相手が間違った内容を信じているならその答えが返ってきます。 質問に対する答えを持っていない場合もおんなじです、例えばいきなり難しい数式の答えを聞いても誰も答えられないです」

 

「ううむ、それはそうだね」

 

アンサークンが持つ相手の回答を引き出す能力についてはいくつか検証済みだ。

魔法少女相手なら、その強制力にも抵抗が生まれることもだ、つまりこれから行う事は不意打ちの1問目が肝心になってくる。

 

「……この魔法で魔法少女薬をばらまいている売人を見つけるんですよね、すごい! 本物の魔法少女みたい!」

 

「……局長、本当にやるんですか?」

 

「う、ううむ……」

 

この作戦にあまり乗り気ではないラピリスクンが怪訝な顔を見せる。

ブルームクンという相手でも初めは痛烈な拒否反応を見せた彼女だ、正式な魔法少女ではない彼女の力を借りることに思うところはあるか。

 

「私は賛成カナ、多少強引にでもことを運ばないとドンドン後手に回るヨ」

 

「それは、そうですが……」

 

「ラピリスクン、何も彼女に戦ってくれと言うわけではないのだよ。 今までに保護されたインスタントな少女達から再度事情聴取の手伝いをしてもらうだけだ」

 

「まあ、一緒に戦ってくれと言われる方が困るけど……でも、ここまできて私も引けないです。 局長さんとの約束もありますから!」

 

「局長、買収はもっと口が硬い相手じゃないと危ないヨ?」

 

「違うからね!? その件ならもちろん果たすとも、私は約束は守る男だからね!」

 

先ほど少しばかり整理した書類の中から抜き出したファイルをテーブルの上にデンと置く。

中にあるのは魔結症に関する数少ないレポート、それと治療に携わった医師たちの書類。

魔法局の権限を大いに振るって集めた貴重な資料だ、ただこれはあくまで信用を得る為だけの材料に過ぎない。

 

「……笹雪の脚が治るならなんでもするわ、だからなんでも言ってちょうだい」

 

「うむ、安心しなさい。 私はこう見えても顔だけは広いのでね」

 

「……局長、知っていると思うけどまだ治療例がない病気だヨ」

 

「う、うむ……」

 

そ、それでも未だ不治の病だろうとこれから先治らないとは限らない。

その笹雪クンという子が第一人者になるだけの事だねうん、まいったね歴史に乗っちゃうよ。

 

「ともかく、今より状況が良くなるなら何だってやってやるわ! さあさ初めは誰に尋問するの? じゃかじゃか行きましょ!」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

《はへぇー……バカンスも楽しかったですけどこうして帰ってくるとやっぱり落ち着きますねぇ》

 

「お前はどこいても実家(スマホ)に籠ってるだろ」

 

《気分の問題ですよ気分! まったくもうマスターは冗談が通じないですねえ、帰ってきてすぐなんですから今日ぐらい店もお休みで良いでしょうに》

 

そう言って吐いたハクの溜息ががらんどうの店内に広がっていくようだ。

合宿期間中店を閉めたままだったせいか、いつも以上に閑古鳥が酷い。

道楽稼業でもなければもうすぐにでも潰れてしまいそうなほどだぁれも居ない。

 

「だからっていつまでも閉めてたら来る客もどんどん減って行くよ、ちゃんと店は開けておかないと誰も寄ってこなくなる」

 

《でもロウゼキさんにシバかれてボロボロでしょうにー、今日ぐらい休んでもばちは当たりませんよ》

 

「駄目だ駄目だ、優子さんもいつも通りだらけ切ってるから俺ぐらいしっかりしないと……と、いらっしゃい」

 

不意にからんころんとドラベルを鳴らして誰かが入店してくる。

慌ててハクを隠し、扉の方へ目を向けるとたった今扉を開けて来たのは1人の少女だ。

 

夏の日射に焼かれたのか、オーバーオールの下から健康的な小麦色の肌には汗が滲んでいる。

ニマニマとつり上がった瞳に口元から覗く八重歯はなんというか小悪魔的な印象を思わせる……子供だった。

 

「はぁーあっつあっつ! 世の中マジしんどいわー……あれ、人いないじゃん、マ? お休みだった?」

 

「いや、やってるよ。 ただお客さんが少ないだけでね……えっと、君一人? 親御さんは?」

 

「えー、子供一人だと駄目なん? こんな寂れてんだから大人でも子供でも貴重な客じゃーん」

 

「うーん、まあいいけどさ……」

 

今日は平日、近くの学校が特別に休みになったという話も特にない。

現に今朝、目の前の通りを歩いて通学する小学生たちの姿もあった、こんな真昼間に子供1人出歩くなんて……

 

《マスター、時期が時期です。 怪しいかもしれませんよ》

 

(ああ、そうだな……)

 

《なにせマスターの顔を見てビビってません》

 

(お前は一言余計だな!)

 

だが思えばその通りだ、最近ずっと合宿の中に居て麻痺していたがついうっかり顔を出してしまった。

気が抜けていた、しかし目の前の少女は何の反応も示すことなく適当なテーブルに腰かけてメニューに目を通している。

怪しい……が、今はただのお客でしかない。

 

「いや、子供も大人も席に着けば1人のお客だ。 ご注文は?」

 

「おっ、いいじゃーん、サービス行き届いてるねえ。 まあまあお金ならいっぱいあるからさあ、縁起が良さそうなのもってきちゃって!」

 

メニューを閉じて足をばたつかせ、行儀が悪く少女ははしゃぐ。

よく言えば子供相応の無邪気さだが、悪く言うのなら……

 

「――――この後さぁ、大事な用事があるんだよねぇ?」

 

……そこはかとない、悪意を感じた。

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