俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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闇の力 悪い奴ら ⑤

全身を覆うロングローブ、黒い羽飾りが張り付いたとんがり帽子。

あとは手に持つ豪快なハンマーが箒に変わればまさに魔女、という様相だ。

 

「……で、そんな奴が魔女を名乗るたぁなんて冗談だよ」

 

「キャッハ! あんたがブルームスター? なんか本物見ると大分ちっこいなぁ」

 

「……人気者は辛いね、なんか―――――」

 

用かという問いを、振りかぶったハンマーの威圧が遮る。

自重だけでコンクリを砕く塊を軽々と振り回し、跳躍した少女が頭上からこちらを見下す。

軽く下ろしただけの先ほどとは違う、明確な破壊の意思を持って振り下ろされるその鉄槌は容赦なく俺たちを押し潰す気だ。

 

「シルヴァ、ゴルドロス、跳べ!!」

 

≪――――WITCH's SHOT!!≫

 

振り下ろされる軌道上に撫でる様に掌を添え、相手の勢いに逆らわないように横から向きを逸らす。

2人に続き、遅れて跳んだ俺の足元ではハンマーを中心とした特大のクレーターが刻まれた。

……逃げ遅れた大量のスーツ少女を巻き込み、吹き飛ばしながら。

 

「ちょっと」 「リーダー」 「酷い」 「あふぅん」 「抗議、抗議する」

 

「あー、ごっめんパニパニ。 ヤッベ本体居た?」

 

「「「「「だいじょーぶ」」」」」

 

「じゃ、あとでクッキー奢るから許して。 今ちょぉっとばかし気ぃ立ってんだわ」

 

重力に引かれて落ちる瓦礫と大量の松ぼっくりの合間から、ハンマーを弄ぶように旋回させる少女と目が合う。

その瞳にはいつしか、あの東京で見たものとも微妙に違う……しかし、はっきりと自分に向けられる敵意が込められていた。

 

「……んー? キックに飛ぶホーキにあと黒いやつ、何今の? アタシ知らないんだけど」

 

「聞かれてホイホイ答えると思うかよ」

 

「まあいいや、浮いてるところに近寄ったアタシを狙おうとしてんだろーけどさぁ」

 

「……!」

 

こちらの不意打ちが悟られているのを見て、袖に隠していたカラス羽をすぐさま箒に変えて起動姿勢を取る。

そして巻き上がった瓦礫が降りしきる中、見通しの悪い視界に見えたのは野球選手のようにハンマーを構えた魔女の姿だ。

 

次の瞬間に何が飛んでくるなどもはや分かりきった事だろう。

 

「め、盟友! 危な……!」

 

「こっちはいいから自分の身は自分で守れ!」

 

≪BURNING STAKE!!≫

 

予想通り、ハンマーで打ち出された瓦礫を蹴りで迎撃しながら叫ぶ。

元は路面を形成していただけのコンクリート、だというのに蹴り砕いた足が痺れる。

ただの瓦礫が魔法少女に届くほどの魔力を帯びている、あのハンマーの特性か。

 

「あっは、さっきのへなちょこパンチはどーした……のっ!」

 

「ありゃ“必殺”技じゃないんだ……よっ!!」

 

相手が動き出すよりも早く距離を詰め、互いに振りかぶった得物がぶつかり合って大気を震わせる。

見るからに重っ苦しそうなハンマーだが、取り回しは実に軽い。 武器の荷重を無視できるのか、あるいはその手の魔法か。

 

「ブルーム! 私たちも加勢――――」

 

「おっと」 「それは駄目」 「リーダーの邪魔は」 「させない」 「ディフィーンスディフィーンス」

 

「ぬわー!?」

 

こちらに合流しようとした2人の前にスーツ少女の群れが壁となって立ちふさがる。

先ほどの衝撃で半数は吹き飛んでいたように見えたが、一体どこから湧いて来たのやら。

とにかくこれでは相互支援に回る事も出来ない、完全に分断されてしまった。

 

「…………改めて聞こうか、名前と目的は?」

 

「魔女、ヴィーラ。 目的はうざったいアンタらの撲滅」

 

「理由は?」

 

「鬱陶しいんだよねぇ、ブルームスター。 野良と魔法局が仲良くやっちゃってさぁ」

 

ハンマーの柄とつばぜり合いを続ける箒がミシミシと悲鳴を上げ始める。

合宿で強度は上がったがやはり羽箒はまだ脆い、いやそれ以上に相手に膂力があるのか。

この超近距離でハンマーを振り回されるのは抑えてはいるが、いったん距離を取らないとこのまま砕かれる。

 

「あんたさぁ、何なの? 野良の癖に人助けなんてしちゃってさ、魔法局に収まればいいのに義賊気取り?」

 

「うるせーな、こっちにも事情ってもんがあるんだよ!」

 

「あーね、だったらその理由って奴をメッタメタにしてやればいっかぁ!」

 

つばぜり合いに痺れを切らしたヴィーラの魔力が増幅する。

その瞬間にへし折れた箒と共に、俺の身体が見えない何かとぶつかったように弾き飛ばされる。

肺の空気が押し出される衝撃に短い嗚咽が零れ、吹き飛ぶ身体。 壁に叩きつけられて体勢が崩れる。

 

「あんたが大事に隠している正体、ここでバレちゃいなブルームスター! パニオット!」

 

「あいあい」 「任された」 「押さえろー」

 

「ぐっ、こいつら……?!」

 

背を打ち付けた建物の壁を突き破り、伸びて来た無数の腕が俺の腕や胴体を雁字搦めにつかみかかる

反撃のために取り出したスマホを取り落とし、多勢に無勢で体の自由を封じられる。

そこに飛んでくるのは先程目の前で巨大クレーターを作り上げたハンマーだ。

 

《あーもー鬱陶しいですねこの子らぁ!?》

 

「死にな、ブルームスター!!」

 

そして躊躇なく振りかぶったハンマーは、外すことなく俺へ向かって落ちてくる―――――

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