俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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アウトレイジな奴ら ①

「リーダー、平気?」 「だいぶお疲れ」 「燃費がわるわる」 「おつかれさんした」

 

「あっはっはぁー……ありがとぉパニパニ」

 

魔力の多くを失い、何とも言えない怠さを伴った体を引きずりながらアジトへの帰路を歩く。

この辺りは監視カメラの死角も多く、人通りも少ないアウトストリートだ、毎度の事ながらよくもまあ隠れ家を探すのが上手いパトロン様だ。

 

「してやられた」 「やはり本職」 「量産体を多めに向かわせて正解」 「負傷は?」

 

「あぁー……ムカっつくことにケガはありませーん」

 

最後にまともに蹴りを受けたせいで腕は痺れるが、せいぜいそのくらいで他には本当に大した負傷も無い。

あの野郎、あれだけ追い込まれておいてなお敵であるアタシの体を気遣いやがった。

 

「……まぁじ気に食わない、次にあったらケチョンケチョンにしてやる」

 

「我々の」 「スペックでは」 「難しい」 「やはりここは野良らしく」 「卑怯&らっきょう戦術で」

 

「あーあぁ、そうだぁよね……」

 

自然と口角が釣り上がってしまう、正義の味方というのも大変だ。

いくらあたしらみたいな小悪党を倒そうとも、守れるものを守れないなら負けも同然なのだから。

 

「向こうは上手くやってるかなぁ、楽しみだなぁ」

 

「大丈夫」 「きっと上手くやってる」 「あっちに魔法少女はいない」 「計画通り」 「ギャフンと言わせよう」

 

 

「「「「「魔法局の守りは今手薄だから」」」」」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「ゴルドロス、シルヴァ! 無事でしたか」

 

「Heyサムライガール、合流が遅いヨ」

 

「ゴルドロスよ、避難と建物の補強は終わったぞ!」

 

無限に湧き出るパニオットを斬り払い、ゴルドロス達と合流した頃にはすでに事態は終わっていたらしい。

まんまと嵌められたものだ、我ながら不甲斐ない。

 

「申し訳ありません、先走りすぎました。 まさか敵が徒党を組んでいるとは……」

 

「いや、こっちも予想外だったからしゃーないヨ。 ……そのうち今回みたいな輩は現れるような気はしていたけどネ」

 

魔女と名乗り、魔法少女の力を悪用して魔法局と対立する存在。

それはゴルドロスが話した通り、インスタントがばら撒かれ続けた先の危険性として危惧していたことだ。

 

「けどいかんせん早すぎるような気がするぞ我、即席のチームワークにしては統率が取れすぎている」

 

「シルヴァの意見ももっともです、錠剤が出回った時期から逆算しても魔法に随分慣れている」

 

魔法なんてものを一朝一夕で扱われては私たちの経つ背がない。

どうもあの二人組だけの犯行とも思えず、拭えぬ違和感が胸中に張り付くばかりだ。

 

「……そういえばブルームスターはどこですか? 彼女も一緒にいたのでしょう」

 

「さっきから残党がいないかって辺り飛び回ってたからネ、そのまま帰っちゃったカナ? パパラッチも集まってきたしネ」

 

辺りを見れば、災厄が去ったと見てか命知らずの野次馬やカメラマンが集まり始めている。

このまま好き勝手に夕方のニュース番組に使われるのも気分が悪い、私たちもさっさとこの場を……

 

「―――――……」

 

「あーあぁ、午後の予定丸潰れだネ。 どうしよっかナー……って、どうしたのサムライガール?」

 

「………………ですか」

 

「What?」

 

「―――――魔法局には! 今誰が残っているんです!?」

 

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「ふへー、疲れたー!」

 

「お疲れ様、一度お茶にしようじゃないか。 取っておきの茶葉を引っ張り出そう」

 

喋りつかれた喉をウーロン茶で潤し、両手を投げ出してソファに背中を預ける。

午前中だけで何人の魔法少女(偽)に私の魔法を使っただろうか、ちらりと見上げた時計の針は12時を少し過ぎたあたりで止まっている。

 

「何か頼むかね? 寿司でもかつ丼でもなんでもいいぞ」

 

「きょーくーちょー? 職権乱用やめてくださーい、また税金の無駄遣いだってマスコミに餌を与えるだけですから」

 

「ひえっ、縁クン!? いいいいいつの間に帰って来たのだね!?」

 

「ほえぇ、誰? あっ、お邪魔してます!」

 

隙のない動きで局長さんの後ろに立ったのはクシャクシャの白衣を羽織った眼鏡の女性だ。

目の下には野暮ったいクマが刻まれているが私には分かる、ちゃんとお化粧すればかなりの美人さんだ。

しっかし局長さんかなり怯えているけどどうしたんだろう。

 

「それより局長、保護下とはいえインスタントを魔法局内に招きあまつさえ勝手に……!」

 

「わーわーわー! 待って、待ってえっと……ゆかり、さん? 私が自分から言い出したんです、局長さん悪くないです!」

 

2人の間に割って入り必死に弁明を述べる、このままおじゃんにされてはこっちだってたまらない。

こっちだって、笹雪(ともだち)の容態が掛かっている。

 

「……紫陽ちゃん、あなた達にも事情があるのは分かるわ。 けど駄目なの、面倒くさい大人たちはそれじゃ納得してくれない」

 

「で、でも私……!」

 

――――その言葉を遮り、大音量のアラームが鳴り響く。

心臓がドキリと跳ねる本能的に焦燥感を煽られるアラーム、つい後ろにいた局長さんの膨れたお腹にしがみ付いてしまう

 

「うっひゃぁ!? ななななにこれなにこれ!?」

 

「緊急警報……!? な、何があったのかね!?」

 

「局内に大規模破壊確認、総員原因を調べて、至急!」

 

縁さんの一声で弾かれたように職員たちが動き出す。

インカムでどこかに連絡を取る人、キーボードを目にも止まらぬ速さで打鍵していく人、モニターに次々と映る映像を見えているのか分からない速度で切り替えながらチェックしていく人、全員プロの動きだ。

 

「これは……局長、葛城主任! 大変です!!」

 

「情報は簡潔に伝えて、何があったの!?」

 

「――――魔法少女です、この魔法局が攻められています!!」

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