俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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アウトレイジな奴ら ⑤

「……これはひどいネ」

 

「散々な有様ですね……」

 

私たちが息を切らせてようやく魔法局に戻ると、そこは凄惨な状況だった。

消防車、救急車、パトカーが入り乱れ、集まった人の群れと高そうなカメラを担いだ記者の方々が建物の周りを取り囲んでいる。

肝心の魔法局はと言うと、表の頑丈な門扉はねじ切られたかのようにひしゃげ、黒い煤で汚れたフロントを露わにしている。

 

「……あっ! 皆さん、魔法少女です! この街を守る魔法少女達が現れました!」

 

「皆さん、今回の事件についてどうお考えですか!」

 

「街で交戦していたという話でしたが、この結果を見て何か予測などは立てていなかったのですか!」

 

「はいはい、話は全部あとで話すヨー。 シルヴァーガール」

 

「う、うむ……!」

 

シルヴァが手元の本にペンを走らせると、私達の身体が銀色の光に包まれて薄く透き通って行く。

私達たちは互いの姿を確認できているが、周りを取り囲んだ記者たちはすでに私たちを見失ったらしい。

 

「急ぎましょう、縁さんの話では人的被害はそこまでではないとのことですが……」

 

「そだネ、まったくとんだ失態だヨ……」

 

魔法局も馬鹿ではない、むしろセキュリティなら万全の対策を講じている。

だがそれはすべて科学の力、魔力を伴わないものならばこうもあっけなく突破されてしまう。

……魔法少女の人材不足と魔力と言う干渉不能の力、それが揃えばたった1人の力によってこうも容易く、か。

 

「……魔物相手ならわざわざこの建物を狙う知能はありませんでしたが、魔法少女が相手ならこんなにもろいものなのですね」

 

「それだけ今回の事件が危険だってことだヨ、対策を考えないとこのまま第二第三の被害が出てくるかもね」

 

魔力が溢れたこの世界、その均衡はもしかしたら思っている以上に危うい所で保たれているのかもしれない。

魔法局が襲われるという大事件、もしこのまま魔法少女の秩序が崩れてしまえば一度堰を切って溢れた悪意は留まるところを知らずに……

 

「…………これは本当に、モタモタしていられませんね」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「3人とも無事ね、良かったわ」

 

「そっちは全然無事じゃないっぽいけどネ、被害はどうなのカナ?」

 

記者たちを避けて局内に入ると、すぐに警備員たちによって何とか無事な作戦会議室へと案内される。

中ではすでに縁さんたちが席について待っていた、端の方には頬に絆創膏を張り付けたアンサーの姿もある。

 

「こっちは幸い死者はゼロ、だけど重軽傷者は多数ね……犯人は未登録の魔法少女とそこのアンサーちゃんのおかげで撃退出来たわ」

 

「いやー、私なんて結局何もできなかったので……」

 

「全くです、戦闘能力も無いのに無茶をしますね」

 

「狙われてるならさっさと後ろ下がって、むしろ全力で逃げるぐらいしないと駄目だヨ」

 

「あ、あのその、二人とももう少し加減と言うものがあってもいいと我思うぞ……」

 

「あはは、でも事実なんで何も言えないですわ……」

 

小さくなってしょぼくれるアンサー、言い方はきつくなってしまったがあくまで一般人である彼女は戦わなくていい存在だ。

それが前に出て、なおかつ怪我を負ってしまったという事実につい言葉に棘が出てしまった。

 

「すみません、少し言い過ぎましたね……建物の被害はどれほどですか?」

 

「うふふ、修繕費を考えると頭が痛いわねー……けどまあ、思ったより酷くはないわ。 問題はこの後の対応ね」

 

「あー……マスコミ集まってたもんネ」

 

「……? ???」

 

「普通に事情を話せばいいんじゃないかって顔してるネ、シルヴァーガール。 世の中そう甘くはないんだよネー」

 

「魔法局の魔法少女がいない間の襲撃、しかもそれを解決したのが野良の魔法少女……間違いなく今回の失態は叩かれるわね、記者会見が憂鬱だわ」

 

縁さんの言う通り、既に外に集まっている記者たちに何が起きたかは大方知られている所だろう。

人の口に戸は立てられぬ、そうでなくともネットにも情報は漏れ出しているはずだ。

 

「まあ、受け答えするは私なのだがね……」

 

「「「だから心配なんです(だヨ)」」」

 

「酷くないかねぇ!!?」

 

局長という立場上、こういう場面で矢面に立つにはまあこの人だ。

悪い人ではないのだが、今なお血の気が引いた顔で狼狽えている人にまともな受け答えが出来るかは心配ではある。 会見前に入念な打ち合わせが必要かもしれない。

 

「それと、主犯の魔法少女はどこに?」

 

「変身用の錠剤は既に取り上げられたみたいだから、私達の方で今緊急拘束してるわ。 ……流石にこれだけの事をやってくれたからには未成年とはいえただで返すわけにもいかないのよね」

 

「あっ、話をするのはもうちょっと先になるよ。 ダメージデカいから私の魔法でも口が割れなくて……」

 

「そうですか……それではその間に会見用の原稿を考えましょうか」

 

「君達はもう少し私を信用してくれてもいいと思うのだがね……」

 

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「あー、ギャラっちやられちゃったー? マ? 重力使いとか結構強いと思ったんだけどなー」

 

「――――使いというより、使()()()―――――負けるのは、ある種必然―――――」

 

薄暗い隠れ家にリーダーの笑い声と、真から冷えるような感情のない声が響く。

その声は同年代の子供とは思えないほど無機質なもので未だ慣れない、つい分身用のまつぼっくりを用意する手が止まってしまう。

 

「―――――彼女は、どうする―――――? 必要なら、消す―――――」

 

そう言いながら彼女は身にまとったマントの下から腰に携えた短剣をちらつかせる。

……彼女の実力はギャラクシオンの比ではない、やると言えばきっと厳戒態勢の魔法局だろうと事を運んで見せるだろう。

 

「怖い事言わないでよー、うちら仲間っしょ?」

 

「――――否、私は―――――命令だから、一緒にいるだけ―――――」

 

「あーね、まったくもー連れないなぁ……」

 

「――――――コミュニケーションは十分にとっている、作戦に支障はない―――――」

 

「そーじゃなくってさあ、もっとこう……ああいいや、お菓子食べる? 実はさードンパチやる前に良いお店に入って……あ」

 

「―――――何か?」

 

「…………あはは、全部砕けちゃった」

 

苦笑いを浮かべながら、リーダーが見せたコブクロの中のクッキーはすべて粉々に砕けていた。

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