俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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終点・ノンストップ ③

「……駄目だな、繋がらない」

 

日が傾き、既に店じまい状態の店内の奥に隠れながら、ブルームスターの姿で繋げた通話はコール音が響くばかりだ。

 

《取り込み中ですかね? あとで掛け直した方が良いかもしれません》

 

「いいや、さっきの今で繋がらないってのはちょっと気になるな。 ちょっと探すか」

 

袖に縫い付けたカラスの羽を一本抜き取り、箒に変える。

どうも胸騒ぎがする、ギャラクシオンを倒した彼女を敵が警戒していないわけがない。

もしも敵のフットワークが予想以上に軽いなら、あるいは……

 

「ハク、花子ちゃんの魔力は追えるか?」

 

《無茶言いますね、やってみますが時間もかかりますし余り期待しないでくださいよー!》

 

「サンキュー、足りない分は目で探すよ!」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「あぶな―――いなぁアホんだらぁ!!」

 

反射的に交代したカナさんが斧へと姿を変えた携帯電話を振るう。

ナイフと斧、得物の重量差は歴然で下から押し返す形でこそあったが軽いナイフの一撃はあっけなくはじき返される。

 

「――――変わった―――――報告、通り――――――」

 

「じゃかあしい、なんやそのけったいな喋り方は! よくも花子傷つけようとしてくれたなぁオドレは、名を名乗りや!!」

 

「―――――魔女、トワイライト―――――不穏分子を、始末しに来た―――――」

 

「不穏分子? てことはオドレらあのギャラリーとかいうやつの……」

 

言葉よりも先にナイフが飛ぶ、おそらく杖と思われる武器の投擲、思慮の外から跳んで来た不意打ちだが面と向かって警戒していれば躱せないものではない。

落ち着いて最低限の動きで躱そうと体を傾けるカナさん――――その目の前でナイフがピタリと停止した。

 

「なっ――――!?」

 

「――――隙だらけ――――」

 

思慮の外の外、空間に縫い付けられたかのように急停止したナイフの動きにあっけにとられたその隙にトワイライトが距離を詰める。

空中で制止したナイフを掴み取った動きそのまま、殴り込むかの如く振るわれた横一閃を仰け反って躱すカナさん。

だが苦し紛れの回避は相手の指摘通り隙だらけ、がら空きの胴部に飛んで来たのは3連打の徒手空拳だ。

 

ほぼ同時とも思えるような速度で叩き込まれる三回の衝撃、そして休む間もなくくっと息を吐いたカナさんの足元が払われて地面に転がされる。

 

「ケホッ!? やぁってくれる……!」

 

「頑丈――――――」

 

流れるようにトワイライトは慣れた手つきで倒れ込んだカナさんを踏みつけて、逆手に構えたナイフを振り下ろす。

あわや首を切り裂かんと振るわれたその一刀は、しかし届くことなく抜き放たれた閃光によって防がれた。

 

「交代デスね、銃は剣より強いデス……!」

 

「―――――多重人格、報告どおり―――――」

 

()()()()、つまりギャラクシオンとの一戦は既に伝えられているのか?

いや、今はそれよりも……

 

「……なん、デスかねぇその魔法は……!」

 

「――――素直に答える―――――バカはいない――――」

 

カナさんからタツミさんへの瞬間交代、斧から二丁拳銃へと変形する杖。

ろくすっぽ狙いも定めずに撃たれた弾丸だが、それでもこの距離ならと命中は確信していた……はずだったが。

 

『弾が……止まってる……?』

 

転がりながらトワイライトの足元から脱出したタツミさん。

振り返った先ではトワイライトに命中する数センチ手前、そこですべての弾丸が静止していた。

電気は迸る事も無く、その空間だけ時間が止まったかのように弾は微動だにする事も無く、例えトワイライトが触れたところで感電する事もない。

 

『クソ、代われタツミ! こいつなんかヤバいぞ!!』

 

「駄目デスね、あんなの見せられたら余計に近づける訳にはいかないデスねっ!」

 

『そらそうやけどお前……』

 

「返事は聞いてないデス!」

 

セキさんたちの制止すら振り切ってタツミさんが両手に構えた拳銃をやたらめったらに撃ち出す。

電気で形作られた弾丸はリロードの必要もなく、そのため弾幕の隙も少ない。

視界を埋め尽くすほどの閃光、これだけの数なら例え何発か止めた所で焼け石に水だ。

 

「―――――5人がかりでも、表に出てくるのは1人だけ―――――なら、対処は簡単―――――」

 

「なっ……!?」

 

先ほどまで目の前にいたはずの声が気づけばすぐ背後から聞こえて来た。

弾かれたように振り返るタツミさん―――――その腹部に赤い痛みが刺し込んだ。

 

「ぐ、ガ……ハ……!」

 

「―――――自ら視界を潰すのは、愚策――――――飛び道具こそ厄介でも―――――あなたが一番()()()()()―――――」

 

『タツミさん!!』

 

口から吐き出された鮮血が、腹部に深々と突き立てられた傷の深さを物語っていた。

黒い身を血で濡らすナイフは今もなお肉を裂いてより深くへと潜り込んでくる。

 

「―――――? ()()()()()―――――投与を―――――見誤った――――」

 

『タツミ!! おいこら、意地張ってねえでさっさとオレに……!!』

 

「―――――予定外、やはりこのまま仕留め――――」

 

 

「……られるとでも思ってるのカナ?」

 

瞬間、何かを察して飛び退いたトワイライトを追うように弾丸の雨が河川に敷き詰められた小石を打ち付ける。

 

「グ、げほっ……! だ、誰デスか……?」

 

「いいから、まずは血を止めなヨ。 それまであいつらの相手は任されたからサ」

 

「―――――対象、視認――――魔法局の―――――」

 

「AHAHA、私を知ってるようで嬉しいネ! そういうわけだからさ、ここから先はこのゴルドロスが選手交代だヨ!!」

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