俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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ドクター・ストップ ③

「…………傷は魔法とやらで塞いだのか?」

 

「そうだヨ、今向こうの部屋で寝てる子がネ」

 

「うわへへっへぇ、くすぐったいっす……」

 

診察台に寝かせられた花子の腹に聴診器を当てながら、先生は顔をしかめている。

見るからに状況は良くないと言わんばかりの顔つきだ。

 

「……脆いな、傷口の具合が安定してねえ。 これじゃすぐに開くわけだ」

 

聴診器を外し、先生が1つ大きなため息をつく。

同時に手元のカルテに素早く何かの走り書きを残した。

 

「…………一応聞くが、こいつの傷を塞いだ奴はヤブか?」

 

「そんなわけないヨ、シルヴァーガールは出来もしない事を進んでやるほど無謀じゃないカナ」

 

「…………そうか、ならこいつも魔法って奴なんだろ」

 

「ま、魔法……? 傷の治りを遅くする魔法って事っすか?」

 

「…………ああ、俺にはよく分からんがなんでもありが魔法なんだろ」

 

確かに、シルヴァの治療も不完全とはいえ花子ちゃんの傷口は開きやすすぎる。

ナイフで刺された時、敵が持つなんらかの魔法を当てられたと考えてもおかしくはない。

 

「そういえば……刺された時に何か独り言を言っていたっす。 “投与量を間違えた”とかなんとか」

 

「投与量……ナイフを通して魔力を注がれたって事か?」

 

「かもしれないネ、どう思うタイガー先生?」

 

「…………本職のお前らが分からんことが俺に分かるわけないだろう、だがそれが原因である可能性は高いな」

 

先生が手に持ったカルテを閉じ、睨みつけるような視線を診察台に寝かせた花子ちゃんへと向ける。

 

「お前は入院だ、その傷が治るまで戦闘行為は許可できん、分かったな」

 

「うえぇえっ!? そ、それは困るっす!」

 

「駄目だ、大人しく寝てろ。 でなけりゃ治るもんも治らん」

 

「う、うぅ……ブルームさぁん!」

 

「うーん、悪い花子ちゃん、俺も同意見だ」

 

花子ちゃんに助けを求められるが、今までの調子から見て無茶は禁物だ。

少なくとも傷口がしっかり塞がるまでは先生の言う通り、しっかりと療養したほうがいい。

 

「私もだヨ、魔法の影響を受けているなら何が起きてもおかしくないんだからサ」

 

「……どれぐらいで治るんすか?」

 

「…………さあな、自然治癒を待つにしてもかなり掛かるかも知れん」

 

「そ、そんなぁ。 自分はこんな所でもたもたしてる暇は……」

 

「今無理をして傷が悪化すればその分だけ復帰が遅れるんだ、ほんの少しの辛抱だから……ん?」

 

ふと、今まで株価を映していたパソコンの画面が切り替わる。

それはこの病院周りに設置された監視カメラの映像だろうか、8等分に分割された画面にそれぞれ撮影中の景色が表示される。

 

「……また客か? おい、お前らはここで待ってろ」

 

「待った、なんか怪しい。 俺も着いて行っていいか?」

 

「……ふん、好きにしろ。 そこの患者は勝手に動くなよ、成金娘は見張ってろ」

 

「お? 喧嘩? 喧嘩カナ今のは???」

 

「まぁまぁ。 花子ちゃん、そっちのコルトが暴走しないように悪いが見ててくれ」

 

「あいあいっす……いざとなったら止められる保証はないっすよ」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「…………見たと思うが、この建物の周囲には監視カメラがある」

 

警戒して廊下を歩きながら、沈黙に耐えかねたのか先生が喋り始める。

 

「……異常を感知したらすぐに点灯して俺に知らせる仕組みだ、だがさっきは何も映らなかった」

 

「そりゃおかしいな、その仕組みなら何かは映りそうなもんだが」

 

これで木の葉や野良ネコが通り過ぎました、なら可愛いもんだが今の今までで俺たちは随分神経質になっている。

万が一を考えて箒がわりに適当なロッカーから借りたモップを担ぎ、先生を庇うようにして前方を歩く。

考えすぎならそれでいい、だがトワイライトやヴィーラのような奴が来るのなら一瞬の判断遅れが致命傷だ。

 

「…………魔法少女ってのは全員テメェみてえな奴なのか」

 

「どういう意味かは分からないけど俺ばっかってのはあんまりじゃないか? 俺みたいな奴は相当珍しいと思うぞ」

 

「…………だろうな、お前本当に子供か?」

 

「ヴェア!? み、見ての通りですけどぉ!?」

 

「…………その口調や歩き方、妙な度胸の据わり方、違和感を感じるなと言われた方が無理だな」

 

「つ、つってもなぁ? 見ての通り俺は……わ、私は女の子ですわぞー?」

 

《おハーブ生えますわね》

 

「お前後で覚えてろよ……ああもう! 良いからほら、さっさと確かめるぞ!」

 

気恥ずかしさを誤魔化す為に歩測はつい速くなり、モップを振り回しながら先を進む。

先ほど監視カメラの映像に見えたのは、俺たちも入ってきた入り口付近のものだ、つまりこの先に何かが……

 

「―――――たのもー! たのもーでござる! お医者様はおるでござるかー!」

 

「…………最近の悪役は随分堂々としてるもんだな」

 

「いやいやいや、違うだろ。 それにこの声はまさか……」

 

「ん? おぉ、ブルーム殿! ブルーム殿ではござらぬか! 奇遇でござるなー!」

 

「お前……シノバスか! 何でこんな所に?」

 

入口から差し込む夕暮れの明かりを背負い、堂々とそこに立っていたのはあの3バカトリオの1人、忍者娘のシノバスだった。

そして、有り余ってる元気で目一杯に手を振り返す彼女の背には身の丈以上の何かが背負われている。

 

「…………知り合いか?」

 

「ああ、ちょっと色々と……シノバス、その背負ってる荷物は何だ?」

 

「おっとそうだったでござる、魔法局からの配送でござるよー」

 

背負い紐を外し、シノバスが肩の荷を下ろす。

荷物は全体が布でグルグル巻きにされているようだが、よく見ればそれは小型のベッドのようにも見えた。

そして……そのベッドには誰かが縛り付けられていたようで、シノバスが180度回転させてその人物の顔を俺達の方へと向ける。

 

「ぎゃ、ぎゃらくしぃ~」

 

「「………………は?」」

 

「――――魔法局から1名、患者のお届けでござる!」

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