俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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ドクター・ストップ ④

「えぇ!? ギャラクシオンちゃんの身柄を秘密裏に移送したぁ!?」

 

「しぃー! 声が大きいよ縁クン! 何処で誰が聞いてるとも分からんのだよチミ!」

 

防音素材で囲われた会議室に縁さんの声が響く。

今この場にいるのは局長さんと縁さん、そしてアンサー(わたし)の3人だけだ。

気密性でいえば、こうして縁さんが声を荒げても外には1ミリも漏れる事はないだろう。

 

「な、なんでそんな事を急に! 危険すぎますよそんなの、一体どこに誰がどうやって!?」

 

「お、落ち着きたまえぇ……仕方ないんだよ、どこから情報が洩れるか分からないとさっきも言ったじゃないかね」

 

「うぅ、局長は私が信用できないというんですね……」

 

「あー、局長さんが縁さんを泣かせてるー」

 

「ち、違うよ! 違うからね!? わわ私はただ局長としての仕事をだね!」

 

縁さんが眼鏡を外し、さめざめと泣く真似をすると局長さんが面白いように慌てだす。

なんだろう、この2人のやり取りは見ていて飽きない。 

 

「……はぁ、分かってますよ。 魔法局が直接襲撃されたぐらいです、病院に身柄を置いておけば何が起きるか分からない、と言う事でしょう?」

 

「そ、そういう事だよ。 だから私が直々に秘密裏でだね」

 

局長さんが言いたい事は分かる、きっと相手もギャラクシオンの入院先を知ったら奪還か……もしくは口封じに来るだろう。

魔法局を潰しに来るような相手だ、仲間だろうと容赦をしてくれる保証はない。 だからこその避難だ、理屈は分かる。

 

「で、今その病院の方は忽然と要監視対象が消えた事で大騒ぎになってますが」

 

「……………………うん、秘密裏に運んだからね」

 

「だからって本当に黙ってただ連れて行く人がありますかー! もー、誘拐されたんじゃないかって大変だったんですからね!」

 

「ご、ごめんなさーい!」

 

「まぁまぁ。 それで局長さん、今日はなんで私呼ばれたんですか?」

 

「っと、そうだったね。 しばらく君の身柄は魔法局で保護させてもらうため、今日はもろもろの書類手続きを……」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「……で、ギャラクシオンの身柄を移しに来たってわけか」

 

「左様でござる! 拙者の魔法は隠密特化でござるからな!」

 

ギャラクシオンを縛り付けたベッドを適当な部屋に移し、文字通り肩の荷を下ろしたシノバスは晴れやかな顔だ。

 

「……ここは保育園じゃねえけどな」

 

「いやいや、局長殿が言っていたでござるよ先生殿、こう言う時に頼れるのはあなたしかおらぬと!」

 

「……チッ、あのタヌキジジイ」

 

「局長って、もしかして知り合いだったのか?」

 

「個人的にな、魔法局は関係ねえよ」

 

なるほど、公的に関わりのない付き合いなら移送先として選ばれても相手には悟られない。

もし魔法局を襲撃させた黒幕が内部に潜んでいたとしても、そもそも情報のないこの場所を見つけるのは難しいだろう。

 

「つっても……大分無茶したなぁ」

 

「いやいや、魔法少女のパワーならこれくらいどうって事ないでござるよ!」

 

「そういう意味じゃないんだけどな……一応、ギャラクシオンはお前の友達を襲った相手だろ?」

 

「……それはまあそれ、これはこれでござる。 耐え忍ぶ者と書いて忍者、私怨で断るほど不出来者ではないでござる」

 

「でもお前……なりきりだろ?」

 

「拙者心は立派な忍者でござるー!」

 

腕をグルグル回して抗議するシノバスの頭を押さえてせき止める。

相手も本気を出している訳ではないが軽い軽い、もっと飯食べて大きくなってから出直して来い。

 

「…………どうでもいいが、俺はこいつの入院を許可した覚えはないぞ」

 

「えっ、でも局長さんがここに連れてくれば間違いなく悪い扱いはされないって言っていたでござるが」

 

「断ってたらい回しにでもされたらギャラクシオンは命を狙われる危険もあるな」

 

「………………チッ、どいつもこいつも……金は十分ふんだくるからな」

 

「あとこの小切手に好きな数字を書いていいからとの事でござる」

 

「………………あんのタヌキが」

 

《はぇー、局長さんって前にあった時は頼りなさげでしたが案外やり手だったんですかね》

 

「いや、多分この先生なら悪用はしないって信用してるんだろ」

 

それでも無断でシノバスを動かし、ギャラクシオンを移送したのだ。 きっと縁さんから大目玉を喰らってる事だろう。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「……と、言う訳で。 ギャラクシオン殿の事は頼むでござる!」

 

「まさか切った張ったした相手と相部屋になるとは思ってなかったっす……」

 

「無駄に部屋離すよりは一緒に監視した方が合理的だネ、我慢してヨ」

 

「ギャラクシオン自体もこの通り動けない身体だしな……ちょっとやり過ぎだったんじゃないか?」

 

「しびびびびびびれびれぎゃらくしぃ……」

 

花子ちゃんが入院する病室には、シノバスに運び込まれたギャラクシオンのベッドも設置された。

ベッドの上ではいまだ電気の痺れが抜けないギャラクシオンが蒼い顔で震えている、たぶん自分を倒した相手が目の前にいる恐怖も交じっているのだろう。

 

「いやー、カナさんの一撃は強烈っすから……後遺症とかは残らないっすよ?」

 

「残ったら困るネ、まあ錠剤は取り上げられてるし見ての通り動けない様子だから仲良くしてヨ。 それじゃちょっと先生呼んでくるネー」

 

「俺たちも先生が戻ってきたら引き上げるか、何かあったら気にせずいつでも連絡してくれよ」

 

「分かってるっす、自分もこの身体じゃ無理できないっすからね……すみません」

 

「気にすんな、治るまでしばらく休んでいろって。 直ぐに良くなるからさ」

 

……嘘だ。 恐らく花子ちゃんの傷は完治に通常以上の時間がかかるだろう。

あるいは、魔法によって付けられた傷なら本体を倒さない限り、なんてこともありえる。

 

「……まあ、ゆっくり養生してくれ。 きっといい情報を持って帰って来るさ」

 

いずれにせよトワイライトの打倒は避けられないだろう、彼女の魔法が解かれない限り、花子ちゃんは正体不明の爆弾を抱え続ける事になる。

相手は躊躇いもなくこちらの命を狙って来る、次にあった時は……こちらも、加減をしている余裕はないかもしれない。

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