俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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茹だるような暑い日の話 ⑦

「今日は……失言が多い日だヨ……」

 

「今度我と一緒にお祓い行こうか?」

 

「うっかりは神頼みじゃどうにもならないだろうな」

 

まったくコルトの奴め、こっちの苦労が水の泡だ。

流石にあれだけ大声で叫ばれたら隠し通す事も出来ず、結局花子ちゃんにもすべて話してしまった。

 

「いやあでもお祭りっすか、羨ましいっすね」

 

「な、なんかごめんヨ……」

 

「ああいやいや、別に皮肉って訳じゃないっす! 自分の事は気にせずに楽しんできてほしいっす」

 

「でも……嗾ける訳じゃないが、いいのか花子ちゃん?」

 

「あはは、残念ながらこの傷じゃまともに戦えないって重々承知したっすから」

 

「そうだぞ盟友、あまり変な事を言わないでくれ」

 

シルヴァの治療を受けながら、花子ちゃんが自虐気味に笑う。

これで表面上は塞がるが、またいつ開くかもわからない状態だ。 本人が言う通り無茶は禁物だ。

 

「それに……見張りも必要っすよね」

 

「ギャラクシープイッ」

 

花子ちゃんが視線を横のベッドに向けると、察したギャラクシオンがそっぽを向く。

痺れもだいぶ抜けてきたようだ、確かに今なら無茶をすれば逃げられる可能性もある。

 

「とは言っても逃がさないけどネ、素顔がバレた状態で国家権力から逃げ切れるわけないヨ。 身元だってすでに割れているしサ」

 

「恐ろしいぞ我……それなら見張りを立てておくのはダメなのか?」

 

「俺たちがここにきてるのがイレギュラーなだけで、本来は局長以外知らない潜伏場所だ。 わざわざ足がつきそうな見張りなんて立てたら水の泡になるよ」

 

まあ見張りも立てず、ろくに警備もない闇病院に放り込むのがそもそも無茶な作戦なんだが……あの局長、一体何を考えているんだ?

 

「……けど、いろいろな事情を抜きにしてもお祭りに行けないのは残念っすかね」

 

「花子ちゃん……」

 

それもそうだ、姉を救うために無茶をするような子だが中身は遊びたい盛りの子供。

夏祭りなんてイベントに参加できないのは悲しいはずだ。

 

「いやぁ……ブルームさんの浴衣姿、自分も見たかったすね」

 

「花子ちゃん……!?」

 

なんてこったこの世界に味方はいないのか。

嫌な予感を覚え、退路を確認しようと背後を振り返ると、ぬいぐるみの腹から綺麗に折り畳まれた浴衣と帯紐を取り出す笑顔のコルトと目があった。

 

「……ごめん、ちょっとテレパシーでSOS入ったから俺はこれで」

 

「この世に魔法はあっても神や超能力者はいないヨ、ブルーム。 まあまあまあものは試しにちょっとだけ試着してもバチは当たらないヨ」

 

「当たる当たるめっちゃバチ当たるからもうやめようぜほらさっさとそんなもんしまってコラコルトお前どこ触って待て! お前今どうやってパンツ盗っ…あぁ゛ー!!?」

 

「許せ盟友……我もちょっと見たい」

 

じりじりと笑顔でにじり寄るコルトから距離を取り、後ずさるが背後は壁。

助けを求めても答える声はなく、迫る魔の手から逃れる術はなかった。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「うーむ……やっぱり何着せても似合うネ、ブルーム」

 

「なぁ、本当に今着る必要あるかなぁ! パンツまでしっかり履き替えてさぁ!?」

 

「そうやって恥ずかしがる姿が見たかったら必要だヨ」

 

「外道!!!」

 

コルトによって着付けられたのは黒地に赤色の花びらが躍る少し大人びた印象の浴衣だ。

ぬいぐるみの腹から取り出された姿見に映る自分の姿は、幸いにも服に着られている感じは薄い。

 

《いやいや、お似合いですよマスター。 ですからもっと背筋をピーンと伸ばして、そんなもじもじしてると余計に恥ずかしいですよ》

 

「スースーするんだよこれぇ! コルト、せめてパンツは返せ!」

 

「いやー、ジャパニーズ着物は本来なら下着もつけないって言うしネ。 それに、恥じらってるブルームって結構新鮮だしネ?」

 

「う、うむ……」 「そうっすねぇ」 「ぎゃらくしぃ(同意)」

 

「オイこら全員、とくにギャラクシオン! あーもー、もういいだろ! 動きにくいし帯は邪魔だし、もう脱ぐからな!」

 

「あーあー待って待って! そんなグシャグシャに脱いだらダメだヨ、皴になっちゃうからサー! 着崩すなはだけるな慎みを持ちなヨもぉー!!」

 

こんなのずっと着ていたらストレスで俺が死ぬ、無理矢理帯を外して脱ぎ捨て、その下にスマホから起動した魔法少女衣装を身に纏う。

マフラーの厚みが半分、その他衣装も半そで仕様になっていたりと猛暑を乗り越えるクールビズバージョンだ。

ああ落ち着く、今はこの衣装が凄く落ち着く。 はじめは無駄に露出が多いんじゃないかとハクに文句は言ったが取り消そう、サンキュー相棒。

 

けどまあそれはそれとしてさっきこっそり写真撮ってたのは知ってるからな、消せ。

 

「あらら、もう着替えちゃったんすか。 勿体ないっすね、ブルームさん似合ってたのに」

 

「俺には心底勿体ない言葉どうもありがとうよ……コルト、まさか当日もそれ着ろって言うんじゃないだろうな?」

 

「もちろん、お祭り会場じゃ魔法少女姿は人目を引きすぎるヨ。 何か起きてから現場に駆けつけるにしても遅いし、変装と潜入はしっかりとネ!」

 

「本音は?」

 

「ブルーム引っ張り回してお祭りを楽しみたー……あぁ、ちょっと待ってヨ! 高かったんだから燃やすのだけは! 燃やすのだけは勘弁してほしいカナ!?」

 

「め、盟友! 流石に室内で炎は不味いぞ!」

 

「ふん、まあコルトの言う事にも一理ある……が、お前らは良くても魔法局が許すか?」

 

ただでさえ魔女が問題になっている状況だ、野良の魔法少女が隣を歩くことを魔法局が許すとは思えない。

それに、アオもブルームスターを目の敵にしてる節があるからな。 ロウゼキ直々の許可が降ろされた合宿とは違い、今回は……

 

「ああ、そこら辺は問題ないヨ。 局長とロウゼキさんからしっかり許可降ろされたからネ!」

 

「ちょっと待て、なんで今回もちゃっかりロウゼキが許可降ろしてんだ!?」

 

「へあぁ!? ま、まだロウゼキさんこの街に居るんすか!? ちょっと待って聞いてないっすどういう事っすか!?」

 

「あー……まあ、話すとちょっと長くなるんだけどネー」

 

「なんか、いつの間にか、ついて来てた……」

 

《一行で説明できましたね》

 

コルトが持ってきたチラシの日程を見るに、祭りまであと2日。

ロウゼキの許可が下りて逃げ場のなくなった俺は、当日ブルームの格好で参加することが決定したのだった。

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