俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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鏡映しの双竜 ③

「シルヴァ、支援頼むヨ!!」

 

「ま、任せよぉ!!」

 

再度横なぎに振るわれる「それ」を2人がかりで凌ぐ。

シルヴァの魔法で爆発し、浮き上がったそれの下にライオットシールドを差し込んで無理矢理掻い潜りながらだ。

周りで私たちの逃げ場を塞いでいたパニオット達は諸共薙ぎ倒されるが、いちいち気にしている余裕がない。

 

「あら、まだ生き残ってたの?」

 

「おあいにく様だネ、おばさん。 こちらには若さと余力が有り余っているんだヨ……!」

 

ヴェールに顔こそ隠れているが、呆れた表情をしているだろうことは何となくわかる。

馬鹿にされているが、実際防戦一方なのは事実だ。

目下最大の脅威である、彼女の腕から伸びた野太い“木の根”が生きているかのようににゅるにゅるとのた打ちまわる。

 

「……人間じゃない、けど魔法少女のはずがない。 お前は一体何なんだヨ」

 

「いやね、こんなお姉さんを捕まえて。 どこからどう見てもただの人間でしょう?」

 

「寝言は寝てからほざくもんだヨ、お・ば・さ・ん!」

 

「……口の減らないガキんちょね」

 

せめてとばかりに口数だけは減らしてはいないが、こちらの間合いも関係なく振るわれるあの根の鞭は強敵だ。

こちらも十全なら対抗できなくはないが、条件が悪い。 避難客を巻き込む危険がある私達と、仲間諸共巻き込んで鞭を振るうローレル、戦況は間違いなく向こうが有利だ。

 

「いくら分身とはいえ」

 

「こうも気負いなくやられると」

 

「少し複雑」

 

「ふふ、ごめんなさいね。 お詫びは後でするから……それじゃあ、そろそろお開きにしようかしら?」

 

「ま、また来るぞ、ゴルドロス!」

 

しなる木の根が更に太くなり、地面にたたきつける度に軽い地響きと砂埃を巻き上げる。

今まで振るわれていた攻撃が可愛く見えるほどだ、これまではまだ本気じゃなかったのか――――

 

「――――――……」

 

「……えっ?」

 

不意にローレルの動きが停止し、巨大に膨れ上がった木の根が針で突いたかのようにしぼみだす。

演技か? いや、そんな小細工に頼るほど危ない状況とはとても思えないが。

 

「……ロウゼキが? なんで……そんな情報……」

 

「ろ、ローレル?」

 

「……ごめんなさい、事情が変わったわ。 私はすぐに引く、あなたも逃げなさい、パニオット」

 

「な、なんと?」

 

何事かを呟いたのち、途端にローレルの身体がミイラの様にやせ細り始めた。

その場の全員があっけにとられるのもつかの間、ローレルだったものはバキリと音を立てて半ばからへし折れた。

 

「ひ、ひえっ!?」

 

「…………木?」

 

ローレルだったものをよく観察すれば、それは人の形にまとまり、枯れ細った老木だ。

最初から私達の相手はデク人形だったらしい、通りで魔力の気配から何まで雰囲気がおかしいはずだ。

 

「……これは想定外」

 

「時間は稼いだと思われる」

 

「我々も逃げるべき」

 

「あっ、コラ待て!!」

 

ローレルがいなくなるや否や、蜘蛛の子を散らしてパニオット達も逃げ去る。

待てとは言うが散り散りになるパニオットのどれが本物か分からない以上、下手に追うのも危険だ。

結局ローレルもパニオットも取り逃がしてしまった。

 

「チィッ! ゴルドロス様がとんだ失態だヨ!」

 

「今は良い、こちらの無事だけで十分だ。 それより客の避難をせねばならぬぞ!」

 

「……そうだネ、急ごう」

 

そうだ、石階段前の戦闘が収束すれば客の誘導もスムーズになる。

戦闘こそ終わったが、魔法少女としての役目はまだ終わっていない。

大分時間を稼がれてしまったが、向こうの状況はどうなっているのだろうか?

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

 

この身に宿った魔法、その性質を一言で表すならいわば「コピー」だ。

鏡のように磨き上げられた青龍刀の表面に写したものを鏡に封じ込め、いつでも解放できる。

倒した魔物ならいつでも自由に使役が可能、他者の魔法なら別に用意した手鏡一枚に1つの容量でストックできる。

 

シルヴァの構築した結界すら打ち破る万物破壊の魔法、その身で味わうのは初めてだろう。

見事彼女の脚は自らの魔法で粉みじんに……なった、はずだ。 そのはずだったんだ。 しかし現状はどうだ。

たった今()()()()()()()()脚が私の胸部へとめり込んでいる。

 

「っ……!?」

 

骨が折れ、肉が抉れる感覚。 容赦なく撃ち込まれた一撃は私の身体をあっけなくふきとばし、砂利道の上を2~3回バウンドする。

何が起きた、何をされた。 私は確かの奴の脚を吹き飛ばしたはず――――

 

「――――()()()()()()()()。 彼女の魔法はな、超が付くほどの再生能力や」

 

肋骨がへし折れたか、激痛に悶えて立ち上がる気力も無い私を前にロウゼキが語り始める。

知らない魔法少女の名を語りながら、生えそろった両足で私の方へと歩み寄りながら。

 

「“生き残る”ための能力と言い換えてええわ、まあ……もう一つの特徴はこうやって」

 

ロウゼキの背に待機した龍が私に向かい、炎を浴びせ掛ける。

その途端、私の全身を苛む痛みが少しだけ和らいだ。

 

「自身の再生能力を他人に譲渡できることやな。 多少やり過ぎてもこうやって治す事が出来るさかい」

 

「グハ……ッ、多少だと……これが……?」

 

確かに傷こそマシになったが、戦う余力は残っていない。

元から戦闘向きの能力ではなかったから仕方ないが、とっておきの隠し玉がこうも容易く失敗したのは精神的にも堪える。

 

「……破壊の魔法に加え、他人の魔法を扱う魔法か。 人のことを言える立場じゃないが、規格外にもほどがある」

 

「魔法少女1人につき1つの魔法、そないな常識とっくの昔に“破壊”したわ。 伊達に10年最強は名乗ってないんよ」

 

魔法少女ロウゼキ、その強さの本質は圧倒的火力を誇る破壊の力ではなく、この対応能力か。

隠し持っている魔法も一つや二つではないだろう、こんな化け物を相手にしたのが間違いだった。

 

「……私たちはどうなる?」

 

「降伏したら悪いようにはせんけど、まあ神社としては終わりやろうなぁ」

 

「くく……そうか、なら後悔はない」

 

まさか跡取りである一人娘がこんな惨事を引き起こしたともなれば、信用はガタ落ちだ。

ざまあみろ、これがお前が蔑ろにしてきたものだ。 お前の愚かさが導いた結末だ。

 

「満足してる所悪いけど、これからちょっとうちとランデブーしてもらうで? ここの魔法局には尋問に丁度ええ魔法少女もおるしな」

 

「はは、それは怖い……だけど、見落としたなロウゼキ?」

 

「……? 何を――――」

 

「――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

その瞬間、気を見計らっていたかのように私の胸の中で何かが音を立てて砕け散った。

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