俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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零れた水は救えない ⑦

「……一応警告する、降伏する気は?」

 

「そのセリフ、毎回聞く気? マジで面倒くさいなぁ!」

 

ヴィーラは拒絶の意志を振り降ろすハンマーで表す。

こちらも駄目で元々だが、こうも拒まれると取り付く島もない。

 

《気を付けてくださいね、マスター。 一撃でも貰うと不味いですよ》

 

「ああ、分かってる」

 

攻撃自体は大振りで集中すれば躱しやすいが、持ち主の身の丈以上の大槌は、ハクの忠告通り相当な破壊力を持っている。

地面に叩きつけられるたびに高速で飛び散る破片も厄介だ、ヴィーラの魔法が付与された石片は魔法少女の肌を切り裂き、殴りつける。

乱雑なラッシュを避けてはいるが、こちらも攻めあぐねているのもこれが原因だ。

 

「忠告はした、だったらこっちも実力行使しかないぞ!」

 

「上等だよ、ムカつくあんたをぶちのめすならそっちの方が好都合ッ!」

 

「……なんで俺をそこまで目の敵にするんだよ! 俺が何かしたか!?」

 

「逆に聞きたいなぁ、ブルームスター! ()()()()()()()()()!!」

 

スタミナが尽きてきたのか、息を荒げながらヴィーラが叫ぶ。

 

「なんだよ、お前! 野良の癖にいい子ちゃんぶってさ、魔法局と協力なんかしてんなよ、だったらちゃんとした魔法少女になれよ!!」

 

「ヴィーラ……? お前―――――」

 

「お前みたいなまともな奴が野良だと……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! こんなよく分からない薬に頼ってまで魔女やってる私達がさぁ!!」

 

やつあたりだ、言いがかりも甚だしい。 こちらも事情が事情だから仕方ないが、それでも無茶苦茶ないい分だ。

文字通り振りかざしたハンマーごと一蹴してしまうのは簡単だ、だが……

 

「だったら……お前は何で魔女なんてやってるんだ!!」

 

《WITCH's STRIKE!!》

 

合えて振り下ろされたハンマーを真正面から拳で受け止める。

魔力を伴った拳は僅かな時間だけ拮抗するが、それでも繰り出される威力が圧倒的に違う。

ヴィーラの魔法で弾き飛ばされた体は地面を二三回バウンドして転がる。

 

《ちょっと、マスター! いきなり何やってんですか!?》

 

「ぐ……悪い、まだちょっと無茶する!」

 

《あーもー止めても結局聞かないですもんねあんた! 本当に危ない時は全力で止めますからね!》

 

「サンキュー、相棒……!」

 

「なぁにごちゃごちゃ一人で喋ってんのさぁ!!」

 

態勢が崩れた所に飛び掛かって来るヴィーラの追撃を転がって躱し、生成した羽箒に飛び乗って一度距離を取る。

ハンマーを殴りつけた腕は感覚が鈍い、これではしばらくまともに箒も握れない。

 

「そのパンチ、腕に魔力で包んでるっしょ。 そんでもって当たった瞬間弾ける、コスい技だ!」

 

「こっちも向こうと同じくタネはバレてるか、まあ隠してもしゃーないもんだしな……」

 

WITCH's STRIKE、魔女の一撃。 ロウゼキとの特訓で身に着けた小技だ。

炎として纏う蹴りよりも消費が少なく、いざという時にぱっと使える。 何百回やったかも分からない組み手で何度助けられたか。

 

「お前が俺を気に食わねえ理由は分からねえけど分かったよ! だったらとことん物理で話し合うしかねえな!!」

 

「話し合うつもりなんてこっちには一切……ないんだよっ!!」

 

距離が空いたと思えば、ヴィーラがなにもない空間に向けてハンマーを空振りする。

一瞬、大気が陽炎のように揺らめき、その次に襲ってくるのは魔力を帯びた空気の塊。

寸前のところで躱した俺の背後で、倉庫の壁がたやすく砕けて瓦解する。 中の荷物含め損害費用はどれほどのものになるだろうか。

 

「そっちの飛び道具はあの羽箒ぐらいでしょ、一生撃つ隙与えないし!!」

 

「上等だオラァ! かかって来い!!」

 

周囲への被害は……きっと魔法局が何とかしてくれるだろう、気の毒だが一度考えないものとする。

目の前のヴィーラの相手でだいぶ余裕がない、倒すだけならまだ何とかなるがこいつは……真正面からぶつかる必要がある。

 

「何でお前は魔女やってんだ! クーロンみたいに何か現状に不満があるのか!?」

 

「ああ、あるさ! 私達は世の中が大っ嫌いな連中さ!!」

 

「その年で随分スれてんなぁ……!」

 

「お前が言うな!!」

 

繰り返し放たれる大気の塊が港の倉庫街を粉みじんに粉砕していく。

見えない打撃ってのは厄介だが、集中していれば避けれる。 それにこうして回避に集中していれば……

 

「……大振りを連発しているお前の方が先にヘバる」

 

「ハァ……ハァ……! くそ、ちょこまかと―――――!」

 

息が上がり、動きが鈍った隙に足元で魔力を炸裂させ、その勢いで距離を詰める。

瞬きの間に距離は鼻先がくっつきそうな超至近距離だ、そしてがっちりと腰を掴んで離さない。

 

「なゅっ!?、おま、どこ触ってんのさ!!」

 

「つーかまぁーえたー……! この距離ならハンマーは振れないな!」

 

「うっせばーか! そっちだって箒が……」

 

「悪いがこっちは密着状態で打てる技があるんだよ」

 

掌に握った小石をヴィーラの背中に当てる、この密着状態で箒を生成すればぎっくり腰では済まない。

 

「う、ぐ……! この、このこのこの!!」

 

「いでででで! いい加減暴れるなこの……!」

 

苦し紛れに放たれる駄々っ子パンチが地味に痛い、こいつ鍛えれば世界を狙える器があるぞ。

 

「お前なんか……! お前なんか……!」

 

「これ以上の抵抗は無駄だ、いい加減話をしようぜ。 魔女」

 

「うるさい!! お前になんて……分かるかよ!! ネグレクトされた奴の事なんて!!」

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