俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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ある魔法少女について ⑨

「…………トワイライト?」

 

「ん、アタシたちの仲間。 結構強いよ、つっても付き合い悪いけどね」

 

「同感」

 

“停止”の魔法を使い、魔法少女の力の源である魔力の供給すらも止めてしまう恐るべき魔法少女、トワイライト。

その実力は仲間からも認められているようだが、コミュニケーションのほうは上手く行っていないらしい。

 

「付き合い悪いって、どんな奴なんだ? まあ寝起きで刃物突きつけてくる相手よりは印象悪くはならないと思うけど」

 

「…………」

 

「ただの冗談だって、だからそんな深々と土下座するな! 分かった、許すから! 面を上げろ!」

 

床にこすりつけた頭を上げ、再度汚れた手をハンドソープで洗い清めてからまたパニオットが調理に戻る。

とは言っても卵液を作ってもらっているだけだが、慣れていないとただ黄身と白身を切るだけでもこれが結構苦戦する。

 

「んー、一応呼んでみるけど多分ムリ……既読スルーされるわ」

 

「そっか、残念だな。 いっつもそんな感じなのか?」

 

「まあ大事……というか魔女活(まじょかつ)なら参加はするんだけどさ、プライベートはあんま踏み込ませてくれないんだよね」

 

「親が問題……」

 

「親が問題? 門限に厳しいとか?」

 

「虐待だよ、多分だけどね」

 

ヴィーラの言葉に危うく油揚げを切る手元が狂いそうになった。

 

「……虐待?」

 

「そ、多分だけどね。 初めて会った時も頬っぺた腫らしてたし」

 

「体にも青あざが多い、転んだだけじゃあそこまで酷くはならない」

 

魔女になる子供の多くは何かしらの悩みや問題を抱えている。

2人の目撃証言からして予想に間違いはないと思う、だとすれば次の問題が浮かんでくるわけだが。

 

「……こう言っちゃなんだが、魔女の力があるんだろ? だったらその子は親に反撃を……」

 

「しないしない、アタシも始めはそんな感じで勧誘したんだけどね。 本人が拒否した」

 

「“お父さんは私のお父さんだから”、とのこと」

 

「…………そうか」

 

その言葉は殆ど自白のようなものだ、自ら父親に暴力を受けていると。

そして他に換えのいない親だからこそ庇う、なんとなくトワイライト側の気持ちも分かってしまう。

 

「……2人は、トワイライトって子のことはそれでいいのか?」

 

「正直、なんで反撃しないのかってもモヤモヤするし、いい気分はしない」

 

「他人の事情に過干渉はしない、魔女の力を与えた以上はどう使うも本人の勝手」

 

「そう、か……」

 

本名ではなく、魔法少女名で呼び合う間柄だ。

プライバシーにはあまり干渉しないのが暗黙のルールなのかもしれない。 その割にはヴィーラはフレンドリーな気もするが、まあリーダー特権か。

 

「ちなみにそのトワイライトの家は分かるのか?」

 

「…………一応の調べはついている」

 

「マ? 私知らないんだけど、パニパニってそんな仲良かったっけ」

 

ヴィーラの問いかけにパニオットが視線を逸らす。

その動きで何となく察した、人の首にナイフを当てて覚悟を確かめるような奴だ。

問題児が出たら家の住所まで突き止めていてもおかしくはない。

 

「よし、決まりだな」

 

「ん、なにが?」

 

「朝飯を済ませたらその子の家に行ってみよう、今の話を聞いてみて見ぬふりってのも気分が悪い」

 

出来上がった味噌汁と卵焼きをとりわけ、レンジで温めた市販の白米を器に取り分ける。

これにお浸しと焼き魚、子供の食欲には少し物足りないボリュームだが、それでも健康的なものが揃えられた。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「……ここがその家」

 

「はぁー、結構立派なお宅だね」

 

「まあ、見た目は良いな」

 

朝食を終えた俺たちはそのままパニオットに先導され、トワイライトの自宅へと向かった。

極ありふれた住宅街にある一軒家、屋根付きの車庫に収められた外国車が少し目立つが、それ以外に別段変わったところはない。

なんというか、本当にここなのかという不安すら覚える。

 

「何かもっとパチンコ通いのおっさんが住むようなボロっちいの想像してたわ……」

 

「ヴィーラの家みたいな感じか」

 

「あはは。 箒、首絞めていい?」

 

ヴィーラにじゃれつかれながら電柱の陰で待っていると、しばらくして玄関の扉が開く。

出て来たのはタバコをふかしながら、クシャクシャのアロハシャツをめくって腹を掻く細身の男性だった。

 

「……あれが父親か?」

 

「たぶん、トワイライトは……いない?」

 

「学校行ったのかな、アタシらはサボりだけどさ」

 

「お前らなぁ……」

 

まあ自分も学校の話題になるとボロが出るから強くは言えない。

仕方なく喉まで出かけた言葉を飲み込んで、再び玄関から出て来た男の観察に戻る。

 

「…………箒」

 

「静かに、こっちに気付かれるぞ」

 

「…………箒?」

 

「だから気づかれるって、ちょっと後にしてくれ」

 

「いえ、ですから箒。 こんな所で何してるんですか?」

 

「だから……ん?」

 

目の前の作業に集中し、聞きなれた声だったのであまり違和感を覚えなかった。

しかし改めて考えてみるとおかしい、彼女がここにいるはずがないのだから。

 

「…………あ、アオ……イ?」

 

「ええ、こんな所で何をやってるんですか? あなた達」

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