俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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ある少女の救出作戦 ②

浮気者、といったのは語弊がある。 私も少し頭に血が上っていた。

そうだ、最近は良く協力しているから忘れていたがブルームスターはもともと部外者だ、知らぬところで知らぬ友人たちとつるもうが私達には関係ない。

だから語弊がある、あるといったらあるのだ。 だから訂正しようと踵を返して箒たちの後をつけ回し……いや、尾行していたらついその通話を盗み聞きしてしまった。

 

「で、どこからどこまで聞いてた?」

 

「……あの少女達が魔女という所は聞きました」

 

「そっか」

 

盗み聞きという品がない真似をしたというのに、箒はそれ以上何も言わなかった。

……いや、私が悪いのだろうか。 そもそも魔女である方が悪いと思うが。

 

「どうするんだ、魔法局として見過ごしては置けないんじゃないか」

 

「……箒はどうしたいんですか」

 

「見逃してほしい」

 

即答だ、こちらをまっすぐ見つめる瞳はそれが冗談ではない事を伝えている。

魔法局、というより私個人としては目の上のタンコブである魔女は一日でも早く討伐したいのが本音だ。

しかし、通話を聞いていた以上相手の事情についても少しながら理解してしまう。

 

「頼むよ、トワイライトは俺が何とかする」

 

「できるのですか、今の貴方は変身も出来ないじゃないですか」

 

「できるよ、ちょっと劣化版だけどな」

 

下手くそな笑みを見せて、箒は懐から錠剤が詰まったペンダントを取り出す。

魔法局が押収していた魔女化の薬、ロウゼキさんが条件付きで箒に与えたものだ。

 

「私はそれも懐疑的ですよ、魔法局でさえまだ詳細な構造が解析できていない代物です。 過剰に頼るのはあなたの体が危ない」

 

「んなもん幾らでもなんとかなるし、何とかするさ。 それに危険っつったって、変身手段が今はこれしかないんだ」

 

「だから、使わなければ良いでしょう! あなたはもっと人に頼るって事を覚えてください!」

 

「いいや、今回ばかりは譲れないね」

 

箒は頑なにこちらの提案を拒む。

 

「頼むよ、今日であいつらを取り押さえるのは簡単だ。 でも、それじゃ絶対に根本的な問題は解決しない」

 

箒が頭を下げる、彼女の動きに合わせて老人の様な白髪がふわりと揺れる。

 

「魔女は純粋な悪じゃない。 あいつらの芽を今摘むと、その先の未来まで無くなっちまうんだ」

 

彼女の言葉には力が宿っている、まるで自分がそうであったかのように。

一体彼女の過去に何があったのだろう。 ああ、そうだ……私は、彼女についてまだ何も知らないんだ。

 

「あいつらを俺みたいにしたくないんだ、頼むよ……」

 

「……確かに情状酌量の余地はあるでしょう、しかし彼女達が犯した罪が消える訳ではないです」

 

「ああ、分かってる」

 

「庇い立てするようであれば、あなたにだって責が及ぶことだってあり得ますよ」

 

「覚悟の上だよ」

 

「……なにも、家庭に問題があるなど彼女達に限った話じゃない。 魔法少女には家族すらいない人だって」

 

「だからって魔女を見捨てる理由にはならないだろ」

 

苦し紛れの説得に意味もなく、彼女の決意は変わりそうにない。

ああ、これは駄目だ。 一つ間違えば彼女の身が危ないというのに、一切決意を変える気がない。

きっとこのまま言い争いをしても時間の無駄にしかならない。

 

「…………3日です、3日だけ待ちます。 その間に何かしらの成果がなければこちらも動き出しますからね」

 

「ああ、分かった。 なんだ、思ったより猶予もくれるんだな」

 

「勘違いしないでくださいよ、3日以内でも魔女として暴れるようなら即座に斬ります。 その時まで庇う気ならあなたごとです」

 

私は魔法局の魔法少女で、相手は魔女だ。 この一線だけは譲らない。

いつものブルームスターなら「斬る」と断言するのは難しいが、錠剤での変身は目に見えて性能が低下する。

白い姿のブルームスターなら勝てる自信と覚悟が私にはある。

 

「それとこれは貸し1つです、近いうちの私のわがままにも付き合って貰いますからね」

 

「分かったよ、けど頼みって何だ?」

 

「……それはまだ秘密です」

 

敵を騙すならまず味方から、実行段階まではブルームにすら秘密だ。

なにせ失敗するわけにはいかない、()()()()()()を止めるための作戦なのだから。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

《思ったより穏便に終わりましたねぇ》

 

「ああ、こっちは冷や汗もんだったけどな」

 

始めはアオに見つかった時点で終わったと天を仰ぎかけていた。

何せあいつは自分の持つ正義に関してはかなり強い芯がある、スパイの真似事なんて断じて許さないと突っ張って来ることを予想してなるべく穏便に話を進めたかったのだが。

 

《彼女も何か理由があって引いた感じですね、こうなると貸し1つってのが怖くなりますよ》

 

「まあそれで見逃してくれるなら安いもの……と思う事にする、3日の余命だけどな」

 

それもヴィーラたちが問題行動を起こせばすぐに途切れる、薄氷の上に敷かれた約束事だ。

明日の昼には俺たち全員揃って真っ二つになっているかもしれない。

 

《そんなに怖いなら逃げちゃえばいいと思うんですけどね、そうしないのがマスターなんですから》

 

「あったりまえだ、一度面倒みるって決めたからには最後まで付き合うぞ」

 

愚痴りながら歩けば、いつのまにかヴィーラの住むアパートに戻ってきてた。

ここから先はハクとの会話も脳内回線(マナーモード)に切り替える、さて茶化してくるであろうヴィーラたちにはなんて言いわけするか。

 

「――――いいから、出てってよ!!」

 

……なんて、頭を悩ませながら階段を上がっていると、絞り出すようなヴィーラの絶叫が聞こえて来た。

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