俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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ある少女の救出作戦 ④

「ふぅー、それじゃ作戦会議始めるかぁ!」

 

「切り替えが早い」

 

「箒、それがヴィーラの良い所」

 

ひとまず散らかった空き缶などを片付け、昼食のそうめんを食し終わると、ヴィーラがはにかむ。

さっきまでの重い空気はどこへやら、思う所があるだろうにそんな雰囲気はおくびも見せない。

 

「いやー、やっぱシーチキンまぜたそうめんはマジで美味いよ。 ズルい、そりゃ元気にもなる」

 

「俺は刻んだミョウガを薬味にした奴が好きだけどな、今回は使ってないけど」

 

茹でるだけで簡単、量もある。 やはりそうめんは手軽で食べ盛りが揃っていても安心だ。

ただ、毎日食べるものでもないので頼り過ぎるのは危険だ。

欲を言えば薬味と野菜類も添えたかったが、材料不足で錦糸卵とシーチキンぐらいしか用意出来なかったのも痛い。

 

「好みがジジくさい」

 

「やかましい、それで作戦会議ってのは……今話しても大丈夫なのか?」

 

襖で仕切られた隣の部屋からは豪快ないびきが聞こえてくる。

仕事の疲れで熟睡しているのかもしれないが、それでもいつ目を覚ますか分からない横で魔女について話し合うのはいささか肝が冷える。

 

「平気平気、アイツ私には何も興味がないし、どうせ子供のごっこ遊びか何かだと思ってるっしょ」

 

「……今までの経験から、このいびきだと夕方まで目を覚まさない」

 

「てことはここでの会議も一度や二度じゃなさそうだな……」

 

よく今までボロが出なかったものだ、少し複雑な心境だ。

それもバックアップしてるローレルという存在があってこそだが、ここまでヴィーラたちと行動しているがその尻尾すら見せない。

ひとつ聞いてみるか? いや、何も知らないはずの俺が後ろの存在に勘付くような動きは不自然だ。

 

「で、話を戻すけどトワっちの事だね。 どうするか」

 

「……第一の問題は実際に父親が虐待しているのか、だ。 一度この目で確認したい」

 

「しかし、どうやって?」

 

「そっこが問題なんだよなぁ……」

 

あいにくと透明化できるような都合のいい魔法は誰も持ち合わせてはいない。

暴行している姿を記録に残して通報すれば一発だが、まさか見ず知らずの家を隠し撮りするわけにもいかないし、そんな技術もない。

 

「わかったわかった! こう、親父を呼び出したところでハンマーでクシャッと」

 

「論外だバカ、それに第二の問題がある」

 

「第二の問題、とは?」

 

「事態の解決をトワイライトが望んでいない、という可能性だ」

 

これまでの会話と態度から、トワイライトは暴行を受けながらも父親を庇うそぶりを見せている。

依存といってもいい、そんな状態で無理やり父親を引き剥がすとどうなるか。

最悪の場合、自暴自棄となって魔女としての力を存分に振り回すかもしれない。

 

「うーん、勝手に大暴れされるのは困るわ。 こっちにも段取りってもんがあるし」

 

「そうなると魔法局との全面戦争は避けられない、回避するべき」

 

「それはいろんな意味で避けたいな……」

 

アオから3日の時間制限付きで問題を起こすなと言いつけて来たのだ、トワイライトが暴れようものなら皆諸共一刀両断になる。

それに刃が交わる間合いで負けるとは思えないが、万が一ラピリスの変身能力まで止められてしまえば一大事だ。

 

「トワっちを刺激せず、穏便に事を済ませる方法……」

 

「説得、もしくは依存の理由について知る事からだな……ともかくもう一度トワイライトについて知らないと」

 

「なら呼び出してみればいいのでは?」

 

「そうは言ってもなぁ、パニオット。 さっきコンビニで邪険にされたばかりじゃないか」

 

「でも魔女の集会には来るんだよ、魔女としての用事つけて呼び出せばトワっちは真面目に来るよ」

 

そういいながらヴィーラが取り出したスマホに素早くメッセージを打ち込む。

内容は分からないが、すぐに返信が帰って来たのかピロンと軽い着信音が鳴る。

 

「ん、おけまる。 今夜の集会に誘えたよ」

 

「マジか……そんなにあっさり」

 

「そして今夜の集会の議題は打倒ブルームスターだから気合い入れていくっしょ」

 

「マジかぁ……」

 

正体がばれていないとはいえ、もしかして至近距離で打倒俺の談話を聞かせられるのだろうか。

今から考えるだけで胃が痛んでくる。

 

「それに、結局“アレ”の正体は分からずじまいだしさ。 一回話し合いたいんだよねー」

 

「アレ? なんかあったのか?」

 

「んー……ここだけの話、昨日ブルームスターとバチった時のことなんだけどさ」

 

「……とんでもないことが起きて、負けた」

 

「負けてねーし! ちょっと戦術的撤退しただけだし! まあその時はなんとか逃げt……撤退したわけだけどさ」

 

「昨日……?」

 

昨日、となれば思い出すのは倉庫での戦闘だ。

トワイライトに変身を封じられた一戦でもある、忘れるはずもない。

だが撤退……あの時の記憶は俺もかなり曖昧なのだが、何かしただろうか。

 

「……なあ、撤退って具体的には何があったんだ?」

 

「えぇー……箒でもちょっと喋りたくないなぁこれ」

 

「負けた記憶を誤魔化してはいけない、はっきり言うべき。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()退()()()と」

 

「………………こお、り?」

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