俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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ある少女の救出作戦 ⑦

「あっ、きたきた! 箒、こっちこっち!」

 

「おいおい、何があったんだ?」

 

ヴィーラからの電話から十数分後、呼ばれた場所に駆け付けて最初に見たのは何かを取り囲む野次馬たちだった。

場所は交差点だが、周囲はキープアウトのテープが張り巡らされて封鎖されている。

少し視線を上に向けると、半ばからポッキリと折れた信号機の支柱が見えた。

 

「2人とも、これは?」

 

「わからない、おそらく魔女の仕業」

 

「さっき救急車が来てたんだよ、女の子が1人運ばれていった」

 

「知り合いだったのか?」

 

「うん……アタシが勧誘した子」

 

「そっか、ちょっと見てくる」

 

具体的な明言を避けてはいるが、魔女に勧誘した子という意味だろう。

小さな体を野次馬の中にねじ込み、最前線まで進み、あらためて現場の状況を確認する。

 

「……これは酷いな」

 

テープで囲まれた事件現場の有様は凄惨な物だった。

アスファルトの上には巨大なツメで刻まれたような無数の痕跡が刻まれ、鑑識や警察官がせわしなく動いている。

 

「相手は魔物か?」

 

「……いいや、聞いた話じゃ相手も魔法少女だったみたいだし」

 

「魔女同士の交戦って事か?」

 

ラピリス、ゴルドロス、シルヴァ、魔法局が抱える3人のうちにこんな爪痕を残せる魔法少女はいない。

まあ、シルヴァなら可能かもしれないが……それなら別の痕跡や発動媒体である紙片の1枚ぐらい見つかってもいいはずだ。

花子ちゃんたちは……現在魔法局に保護されている、人目を盗んでこんな犯行が出来るはずがない。

 

「襲われた子は無事なのか?」

 

「気絶した状態で発見、傍には粉々に踏み砕かれた錠剤があった」

 

「幸い怪我は酷くないみたいだけど……これ、かなりヤバいよね」

 

現場の状態を3人で再度確認する。

推定“ツメ”で刻まれた痕跡はアスファルトや金属製の支柱をバターのように切り裂いている。

それが現場いっぱいに夥しい数だ、おそらく反撃の隙もない一方的な物だったのだろう。

 

「魔女同士の交戦……魔女狩りか」

 

「不吉……」

 

「とりまここじゃ物騒だし、場所移そっか」

 

「……秘密基地まで移動するべき」

 

秘密基地、というのは例のアジトの隠語か。 なるほど子供同士の会話なら違和感もない。

それに、どうやらこの魔女狩りは2人にとっても相当イレギュラーな出来事のようだ。

 

《……マスター、葵ちゃんから着信が入ってます》

 

「ん……悪い、先行っててくれ。 電話がかかって来た」

 

「おけまる、親からだったら散々なじってやんな」

 

「先に向かっている……場所は?」

 

「問題ないよ、悪いね」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「箒、無事ですか?」

 

「俺ってそこまで信用ないのかな……」

 

ヴィーラもアオも一言目から俺の心配をするあたり、相当頼りないと思われているのか。

まあ、まともな変身も出来ない状況なので大きく反論も出来ないが。

 

「例の現場についてだろ? そっちでも調べてたのか」

 

「当たり前ですよ、幸いにも監視カメラなどの映像が残っていたので下手人の姿は分かっています」

 

「そうか、知ってる相手か?」

 

「いいえ、被害者と加害者どちらも知らない顔でした」

 

「襲われた子は?」

 

「現在は魔法局が抱える病院で療養中です、意識はまだありませんが命に別状はありませんよ」

 

ヴィーラたちにも確認していたことだが、その話を聞いて少し安堵の息を零す。

意識が戻れば話も聞けるだろう、襲われた経緯などはその時に聞き出すしかない。

 

「映像記録が残っているのか? それなら相手の魔法は?」

 

「まず相手の杖は巨大な爪を模した籠手(ガントレット)です、映像を見た限りでは爪に魔力を乗せて飛ばす攻撃を多用してますね」

 

「遠隔攻撃持ちか、厄介だな……」

 

現場に刻まれた爪痕のサイズから見て、攻撃の範囲は相当広い。

魔力という分かり易い残弾はあるが、それでもパカスカ連射できるなら近づくこともままならない。

 

「逃げた加害者の足取りは?」

 

「現在捜索中ですが……魔法少女の機動力だと難しいでしょうね、それに変身を解除されればそれだけで追えなくなります」

 

「だろうな、他に何か分かっていることは?」

 

「逆に聞きたいですよ、何故魔女同士が仲間割れしているんですか?」

 

「なんでだろうなぁ……」

 

そこが分からない、ヴィーラたちも首をかしげていた。

対立するような派閥があるなら何かしら反応はあったはずだが、そんな素振りも無かった。

 

「……とにかく、気を付けてくださいね。 魔女を狙うなら今の貴方が襲われてもおかしくはないです」

 

「ああ、そっちもな。 無差別な犯行だとしたら魔法少女もターゲットだ」

 

「その時は返り討ちにしてやりますからご安心ください」

 

「ははは、油断はするなよー……」

 

一通りの報告を終え、アオとの通話が切れる。

トワイライトたちの家庭事情、魔女組への潜入、その上更に謎の襲撃事件か。

 

《問題がジェンガみたいに積み上がってますねー、どうしますこれ?》

 

「何とか一個一個対処するしかねえだろ……そのためにもヴィーラたちとの作戦会議だ」

 

スマホを懐に仕舞い、例の秘密基地に向かい歩き出す。

解決する術が見つからず、どんどん問題が積もって行く今の状況は悪い流れだ。

どこかで断ち切らないと……たぶん、俺の体が持たないな。

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