俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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激しく解釈違いです ①

「……ゴルドロス、そちらは何か見つけましたか?」

 

「駄目だネ、今の所酔っぱらいのおっさんぐらいしか見つけられないヨ」

 

手に持った携帯が指し示す時刻は20:00、街は街灯に照らされながらも夜闇の中に呑まれている。

つまり、こそこそと暗躍するなら都合のいい時間帯という事だ。

 

「こちらも索敵は続けていますが、おたがい気は抜かない様にしておきましょう」

 

「アイアイサー、まあ魔女がいなくても魔物が出てこないとも限らないしネ」

 

「わ、我も頑張るぞ!」

 

見晴らしの良いビルの屋上に揃った魔法局3人、仮眠とやる気は十二分だ。

私なら風の動き、ゴルドロスならお得意の嗅覚で視覚に頼らず周囲の異常を辿れる。

相手を見つけ次第、私が接敵してシルヴァとゴルドロスが中~遠距離から援護、十把一絡げの魔物が相手なら十分倒せるコンビネーションだ。

 

「まあ今回は手ごわい相手になりそうですけどね、ツメの一撃には気を付けてくださいよ」

 

「分かってるヨ、あんなの喰らったらたまったもんじゃないからネ。 ブルームスターは?」

 

「盟友は一人で動くとさきほど連絡があったぞ!」

 

「まーた勝手に……いや、今回ばかりは下手に合流するのは危険でしょうね」

 

ヴィーラたちも()()()()()()に動いているなら途中で鉢合わせる可能性がある。

その時にブルームスターまで合流すると交戦中に動ける人員がいない、不慮の事態が起きた場合のためにも1人は動ける余裕を持ちたい。

 

「それにブルームはスパイ作戦中だからネ、変身中でも接触するのは多少のリスクがついて回るヨ」

 

「難儀なものですね……む?」

 

ふと、風の流れに乱れを感じる。 人ではない、自動車ほどの大きさの何かがせわしなく羽ばたいている。

この大きさでまさか鳥か何かではあるまい、十中八九魔物だ。

 

「……ゴルドロス、4時方向です」

 

「分かってるヨ、幸い人ごみから離れてるネ」

 

同じく魔物の存時に気付いたゴルドロスが、ぬいぐるみの腸から身の丈以上のサイズをもつライフル銃を取り出す。

敵の飛行高度はこのビルとほぼ平行、彼女の腕なら的は外すまい。

 

「シルヴァ、一応暗視の補助をお願いします。 撃ち抜き次第、私は魔石の回収に走りますよ」

 

「うむ、もう術式は描き上がっているぞ」

 

「サンキュー、おっとどうやらコウモリの魔物みたいだネ。 気取られる前に撃ち抜いちゃうヨ!」

 

パスっと気の抜けた音を鳴らし、亜音速で射出された弾丸は寸分違わず数百m先の魔物を撃ち抜いた。

心臓部を一撃だ、絶命して落下していく肉体は地面に到着する前に魔石と変わるだろう。

 

「人に当たれば危ないですね、落下前に回収してきます」

 

「ういー、気を付けてネ」

 

私がビルから飛び降りようと足に力を込めたその瞬間――――落下するコウモリと交錯するように横から跳んで来た誰かが、魔石を盗み取って行った。

 

「……は、はぁ!?」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

「右よし、左よし! なぁんもなし!!」

 

「……実に平和」

 

「まあ、アタシら魔女がいないわけだしね……」

 

夜に染まった街の路地裏でたむろしながら、ため息をつく。

時間はそろそろ20時ごろだろうか、今の所魔女狩りらしき姿は見つかっていない。

 

「あー……なんだかなぁ、面倒くさいなぁ、アタシがふらつけば勝手に飛び出してくれるんじゃね?」

 

「それは危険、リーダーは後ろでもしもに備えて」

 

「それが出来るならそうしたいけどさー、人員足りないじゃんアタシら!」

 

「……魔女狩りに狩られないよう、今回は皆待機中」

 

今この町で動けるのはアタシ、パニオット、トワイライトの3名だけだ。

いつもならパニオットの魔法で人員も増やせるが、今は消費したばかりでそれも難しい。

 

『――――真面目にやって』

 

「あいあーい……ん?」

 

スマホから聞こえるのは離れた地点で周囲を警戒しているトワイライトの声だ。

窘めるその声に肩をすくめると、ちょうど頭上を通り過ぎた何かの影に気付いた。

 

『――――どうしたの?』

 

「いや……魔物、コウモリっぽい」

 

「こちらも確認、かなり大型だが隙が大きい」

 

目測で自動車ほどの大きさのコウモリがバタバタと忙しなく羽ばたきながら空を飛んでいる。

下から見ると腹がでっぷり肥えている、あの腹じゃ真下の視界は死角まみれだろう。

 

「途中で茶々入れられても面倒だしな、ここでスパッと憂いを断っておくか」

 

「了解、オーライ」

 

パニオットが放り投げたナイフを振りかぶったハンマーで撃ち抜く。

“拒絶”の魔法が付与されたナイフは矢のような速度で、コウモリのどてっぱら目掛けて跳んで行った。

 

「よーし良い角度……あっ」

 

しかし、ナイフがその腹を貫く前に、コウモリの身体がビクリと跳ね、落下していった。

 

『――――狙撃、気を付けて』

 

「……私のナイフ」

 

「あ、あはは! どんまい、なんとかなるし! おそらく魔法局だなありゃぁ……」

 

狙撃と言えばゴルドロスか、おそらくあいつらも魔女狩りを探しにやって来たのだろう。

鉢合わせのリスクがあるが、このまま黙って帰るのも癪に障る。

 

「うっし、魔石横取りしていこーか! こっちから喧嘩フッかけてやるし」

 

『――――お勧めはしない』

 

「私のナイフ……」

 

幸いコウモリとの距離はこちらが近い、落下する前に回収できれば魔法局に一泡吹かせられるだろう。

 

……だがしかし、そんな目論見すらも闇から現れた“誰か”が魔石ごと掻っ攫っていった。

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