俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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激しく解釈違いです ④

《マスター、気を付けてくださいよ!》

 

「ああ、悪いな! こっからは選手交代だ!」

 

「へぁっ!? 二人目は聞いてなぁい!!」

 

繰り出した右足はあえなく大ツメを模した手甲に防がれる。

が、問題はない。 おかげで相手の意識はトワイライトから俺へと移った。

 

「―――――ブルーム、スター……!?」

 

「良いから下がれ、そのケガじゃ無茶だろ!」

 

驚愕している様子のトワイライトに声を掛けると、以外にも大人しく距離を取ってくれる。

だが足を引きずる動きは鈍い、逃げるのには問題ないがあれでは攻撃をかわすのも一苦労だろう。

 

「な、なんで白いの! なんか、ちょっと、寒いしっ!」

 

「今はそういう仕様なんだ……よッ!!」

 

こちらの蹴りを防ぐため、腕を振り上げる動作の際に仕込んでいたのだろう。 ごく細い衝撃波を()()()()()()かき消す。

魔力を伴う攻撃ならば、こちらも魔力を纏えば干渉できるのが道理だ。 

踏みつぶされた衝撃波は生き場を無くし、風船が破裂するような甲高い音を鳴らして消滅する。

 

「な、な、にゃ……!?」

 

「も……一発(っぱつ)!!」

 

踏みつぶした足を起点に放つ後ろ回し蹴りは、盾となる手甲ごと相手を蹴り飛ばす。

もんどりうって尻餅をつく魔女狩り、そして地面に手をついた手甲は遅れて凍り付き、その腕を地面に縫い付けた。

 

「ひゃあああああ!? 腕が、凍……動かないですけどぉ!?」

 

「……魔法少女名、あるなら名乗っときな。 ずっと魔女狩りって呼び方じゃ互いに不便だろ」

 

小石から生成した箒を喉元に突きつけ、降参を促す。

氷の拘束力はそれほどでもないが、抜け出すための隙を逃す気はない。 相手が無理にでも脱する気なら気絶ぐらいは覚悟してもらおう。

 

「……ま、魔女……えっと、名前考えてなかったので……ヒョウカでお願いします……」

 

「そっか、まさか本名じゃないだろうな……確認だが、お前が例の魔女狩りか?」

 

「ええ、はい、そうですぅ。 そういうあなたはブルームスターですねぇ……」

 

先ほどまでの困惑はどこへやら、冷静になって状況を見渡した彼女はにたにたと奇妙な笑みを浮かべ始めた。

……なんだか既視感を覚える笑みだ、たしか緋乃ちゃんと初めて会った時にホビーショップ前で見せたものと似ている気がする。

 

「こうしてナマで合うのは初めてですねこんにちは噂通り透き通るような白髪が美しいですしかしその衣装はどういう事でしょうか上から下まで白・白・白と脱色なさったんですか!イメージチェンジというにはあまりにも地味すぎですがマイナーチェンジというのは私大好物でしてうへへ失礼ですがつむじの匂いを嗅がせていただいてもああああどうして距離を取るんですか待ってくださせめてマフラーの一かけらだけでも!」

 

《マスター、あまり距離を取ると逃げられますよ》

 

「あ、ああ悪い……ちょっと本能的に」

 

腕に立つ鳥肌はきっと自分の冷気だけじゃないだろう。

おかしいな、この子ヴィーラのファンじゃなかったっけ。

 

「私は! 推すべきと心で思った相手に! 区別はつけません!!」

 

《節操なしだぁ》

 

「言ってる事が良く分からない……」

 

まあ、野良である俺と魔女を応援する気持ちは対立しないのだろうか……。

 

「―――――ブルームスター、何をしている……そいつは、敵……!」

 

「……トワイライト、武装を解除しろ、変身もだ。 その足じゃ襲うことも逃げることも難しいだろ」

 

ツメの脅威から逃れるため、距離を取らせていたトワイライトが、ナイフを逆手に構えながら俺の背後に回り込んでいた。

だが、2mほどの距離は今のトワイライトにとって一息で詰められるものではない。 襲ってくる気なら迎撃は間に合う。

 

「―――――そいつは魔女に害を為す相手」

 

「そっちの都合は俺には関係ない」

 

「そうですよぉ、ヴィーラ様にふさわしくない方が悪ぎゃふんっ」

 

「ヒョウカー、お前は少し黙ってろー?」

 

「あばばばば、ブルームスター様にお名前を読んでもらえへぶちっ」

 

トワイライトから視線を動かさず、箒の穂でべしべしとヒョウカの頭を叩く。

彼女の言葉はどうあがいてもトワイライトの神経を逆なでするだけだ、まあ時すでに遅しのようだが。

 

「――――……魔法局にだって、不利益はあるはず」

 

「それはおかしな話だな、どうしてお前が魔法局の心配をする?」

 

「――――それ、は……」

 

「何言われても俺はヒョウカにトドメを刺す気はないよ、お前にも手は汚させない。 俺が分からないのは理由だ、どうしてお前は魔女になった? どうしてそこまで脅威を排斥しようとする」

 

俺を見る……いや、俺ではないどこか遠くを見つめるトワイライトの瞳には怯えがあった。

ナイフを握る腕が震えている、それは彼女を動かす理由について切に語っているかのようだ。

 

「……父親か?」

 

「っ――――――!」

 

驚いて跳ねた肩は肯定と受け取って良いのだろう、つまりはそういうことだ。

何故だかは知らないが、トワイライトは父親から命令を受けて魔女をやっている。

 

「……あ、あのぅ。 ブルームスター様……?」

 

「なんだ、あと様はいらないぞ」

 

「いいえぇ、そのぅ……私の魔法ってですねぇ、接触してれば少ぅしずつでもダメージは蓄積するんですよ」

 

「…………何だって?」

 

「はぁい、ですからこうして時間を掛けると……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

氷で縫い付けられている彼女の腕を起点に、ビルの屋上に亀裂が広がる。

それはあっという間の出来事だった、俺が止めるまでの時間もなく――――屋上の一角はジェンガのように崩れ去った。

 

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