俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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激しく解釈違いです ⑥

「…………チッ」

 

思わず悪態が漏れる、みすみす逃がすとはとんだ失態だ。

ラピリスの速度相手に鬼ごっこは分が悪い、それに互いに今はお荷物が多い。 ここは一度引くべきか。

 

「ほら、起きろ2人とも。 いつまで民衆の目の前で醜態をさらす気だ」

 

「うぐぐ……あ、あれ、ドクター……? うぅ、頭いたぁ……」

 

「閃光弾……正確にはゴルドロスのかんしゃく玉か、直に喰らったんだろう? しばらくは休むといい」

 

「し、してやられたし……次は負けねえ……」

 

「そうだね、期待してるよ」

 

生返事を返しながら、さきほどブルームスターに捕まれた片足を確かめる。

冷気を当てられた足に異常はない……昨日とは異なり、無敵の力は確実に魔力の干渉を阻んでいた。

前回がイレギュラーだったのか、それとも今回のブルームスターに何か手落ちがあったのかは分からないが。

 

「……騒ぎも大きくなってきた、一度引こう。 走れるかい?」

 

「なんとか……おーいパニパニ、起きろー」

 

「zzz……」

 

遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる、この騒ぎで誰かが通報したのだろう。

追い払うのは簡単だが、騒ぎが大きくなるのは面倒だ。 万が一にでも邪魔が入ってはいけない。

 

「……そろそろ、ボクたちの目標も達成しそうなんだ」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「――――ハァ……ハァ……ハァ……! 2人とも、生きてますか……?」

 

「な、なんとかな……」

 

「キュウ……」

 

風景を置き去りにするほどの速度で駆けていたラピリスが膝をつき、俺たちを降ろす。

ドクターとの交戦から休む間もなく全力疾走、かなり消耗したのだろう。 球のような汗を滲ませて、ラピリスの変身が解除される。

線路が伸びる橋げたの下、辺りに人通りはいない。 変身が解除されるほどの限界とはいえ、場所を選ぶ余裕を残しているのは流石というべきか。

 

「悪い、助かった、少し休んでてくれ。 ヒョウカは……問題なさそうだな」

 

「キュウ……」

 

ヒョウカはというと、あまりの速度に目を回して気絶している。

ラピリスの正体が見られなかったのは幸いだ、ついでに暴れられる可能性も消えたのでこっちの方が都合がいいっちゃ良いか。

 

「待ってろ、ゴルドロスたちを呼ぶ。 今のうちに少しでも休んでろ」

 

「結構です、そのぐらい自分で出来ますよ……それより、あなたは自分のやるべきことがあるでしょう……」

 

「……だけど」

 

「情けは不要です、ヴィーラたちに不審を懐かれたら面倒になりますよ」

 

……ドクターとの戦闘中、ゴルドロスたちも別行動していたわけじゃないだろう。

俺たちの位置もおそらく補足している、少し待てばすぐに合流できるとは思うが、摩耗した状態のラピリスを放って行くのは少し躊躇われる。

 

「……私の事は気にしなくていいですよ、自衛できる程度の魔力は残しています」

 

「そう、か……信じるからな、ヒョウカの事は任せたぞ」

 

「ええ、彼女はあとでこってり絞っておきましょう」

 

頑固な奴だ、俺が何を言っても自分の意見を曲げない。

ゴルドロスたちがなるべく早く合流することを信じ、アジトへの道を引き返す。

 

「……ドクターの攻略について、あとで話し合いたい事があります。 明日また連絡を」

 

「ああ、分かった」

 

躱す言葉数もそこそこに、俺とラピリスはそこで別れた。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

《……マスター、葵ちゃんを放っておいてよかったんですか?》

 

「良くはないけどさ、あのまま居座ってたら斬られかねないからな。 それに巻き込めないだろ」

 

頭上の高架線を辿るように、雑草が意気揚々と伸びる砂利道を歩く。

一応通話を装って入るが、人通りがない分、ハクの会話も気を使わないで済む。

 

《巻き込めない? 何の事です?》

 

「少しヘマ打ったからな……ああ、ほら。 思ったより早めの登場だ」

 

点々と設置された街頭の頼りない光が、道の先で俺たちを待つ“誰か”の姿を映し出す。

片足を庇うように立ち、片手にナイフを構えて待ち舞えている彼女を、見覚えがないというのは難しい。

 

「―――――箒、いや……ブルームスター」

 

「……何の事だ?」

 

「――――あなたは、「父親か?」と私に聞いた」

 

「…………」

 

「――――ブルームスターは、そこまでの内情は知らない。 可能性があるとしたら――――ヴィーラたちが連れて来た、新入り」

 

危惧していたことがそのまま形になった。 下手な言い訳は聞き受けてもらえないだろう。

トワイライトは緩やかに構えていたナイフの刃を煌めかせ、戦闘態勢を取っている。

 

「……そのことをヴィーラたちには?」

 

「―――――まだ、確証は持っていない情報だった」

 

「けどこれで確証を得たな、その足で情報を持ち帰ってみるか?」

 

「っ―――――馬鹿に、しないで……!」

 

憤慨したトワイライトが一歩踏み出すが、足が痛むのか力なくその場で膝をついてしまう。

俺はその姿を見て、散歩でもするかのように歩きながら距離を詰める。

 

「確証は得ていなくても、相談することは出来たはずだ。 今ならドクターだっている、何故そうしなかった?」

 

「っ―――――……」

 

「ヴィーラたちを傷つけたくなかった? 違うね、信用していないんだ。 お前が指示を仰いだ人間は別だった」

 

一歩、二歩、三歩、喋りながら歩いていけばすぐにそこはトワイライトの射程内だ。

懐に仕舞ったスマホが何か騒いでいるが、気にしない。 

 

「お前は指示を仰いだ、自分の父親に。 そしてそいつはこう言ったんだろ、“だったら確認してこい”と」

 

「―――――…………」

 

「電話越しだったか? 相手はお前のコンディションを知らない、無茶な指示だ。 だけどお前は従った、逆らわずに」

 

蹲った状態でもナイフを振るえば容易に届く距離だ、しかしトワイライトは何もしない。

ただ怯えた目で、変身すらしていない俺を見上げるばかりだ。

 

「……トワイライト、話してくれよ。 お前が抱えてるもんについて」

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