俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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永遠にさようなら ②

「サインください」

 

「目を覚ましたと思ったらいきなりなんだヨこいつ……」

 

「説教は後です、包帯巻くの手伝ってください」

 

サムライガール太刀を担いで魔法局まで戻ると、丁度目を覚ました魔女狩りがベッドの上で見事な土下座を見せる。

動機については道すがらサムライガールからかいつまんで聞いていたが、なんとまあこれは筋金入りだ。

 

「ち、治療なら我に任せよ!」

 

「ありがとうございます、シルヴァ。 しかしあなたの治癒術でも完治は難しいでしょう」

 

「そ、そんなぁ……」

 

「ああ、いや。 ごめんなさい、あなたの技量が拙いと言っている訳ではないです」

 

「ま、もともと専門分野じゃないからネ」

 

シルヴァーガールはどちらかというと、威力はともかく見た目が派手な術を書き上げる時の方が筆が走りやすい。

東京の一件から回復する術について練習を重ねているようだが、それでも見かけ上の傷を塞いだり痛みを和らげる程度が精一杯だ。

 

「で、そっちはいつまで土下座してるんだヨ、色々聞きたい事もあるから顔上げてくれないカナ」

 

「ふへっ!? わ、私なんぞがゴルドロス様にお話できることなどとてもとても……」

 

「そういうのは良いですから話してください、まずあなたはどうやってこの錠剤を手に入れたのですか?」

 

サムライガールが錠剤が詰まった小瓶を振って見せる、目を覚ます前の魔女狩りから取り上げたものだ。

中身はもう数粒しか残っていない、随分な回数変身したのだろう。

 

「え、えっとぉ……それはですねぇ、黒い恰好のおばさんから貰いました」

 

「十中八九ローレルですね、珍しいパターンです」

 

「うむ、殆どは友人から譲り受けたケースが多いからな」

 

「そ、そうなの……?」

 

「ソダヨ、つまりお前から聞ける話は貴重ってことだネ」

 

魔女から貰った、友達から分けてもらった、そして謎の女性(ローレル)から瓶ごと貰った。

これまで捕縛した魔女たちから聞き出せる流通ルートは大まかに分けてこの3つだ。

その中でもローレルから直接魔女化の錠剤を受け取った、というケースは指折り数える程度しかない。

 

「シルヴァーガール、筆記頼むヨ。 こんな時に限って局長も縁もいないしサー」

 

「よし、我に任されよ!」

 

「というわけで、今までの調査からその黒づくめの女性が事件の糸を引いている可能性が高いのです、話している最中に何か気になったことなどはありませんか?」

 

「え、えっとぉ……魔法少女に興味ないかって聞かれて……小一時間ぐらい魔法少女について語り続けて……」

 

「よく相手も付き合ってくれたネ……」

 

うんうん唸りながら、魔女狩りが過去の記憶を掘り返し始める。

なんというかまあ、本当に魔法少女好きなんだろうけど色々危なっかしい魔女だ。

 

「……あ、そうだ。 そういえば」

 

「何か思い出したことがありますか?」

 

「は、はい! えっとですねぇ……真っ黒いおばさんが立ち去る時に何かボソッと呟いてたんですよぉ、あれは確か……」

 

 

「“―――――もうすぐ完成する”って」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

絶好のチャンスのはずだった、ブルームスターは生身で、いつでも切り裂けるような距離。

だというのに私は武器を投げ捨て、情けを掛けられてブルームスターは去って行った。

あれからどれだけの時間が経ったのだろう、どうやって帰って来たのか覚えていない。 気が付けば私は家の前に立っていた。

 

「―――――――……」

 

ただ玄関で立ち呆けている訳にもいかず、ブルームスターに掛けられた言葉を反芻しながら扉を開ける。

鍵は掛かっていない、恐る恐る中に入ると、脱ぎ散らかされた靴がお父さんの在住を教えてくれた。

暗い廊下の先で、唯一明かりがついているリビングから漂って来る怒気は気のせいではないだろう。

 

「……おい、来い」

 

「―――――……はい」

 

扉のきしむ音で向こうも私の帰宅に気付いたか、リビングから低い声が響く。

無視するわけにもいかず、重い足取りを進めるしかない。 ……それに報告も必要だ。

……正直に全部話したら、お父さんは何て言ってくれるのだろうか。

 

「――――――……ただいま、戻りました」

 

「いや遅ぇよ、一匹仕留めんのに何時間かかってんの、お前?」

 

「――――――ごめん、なさい」

 

「ああ、金の受け渡しの時間かかったわけ? でないとここまで遅くなるわけないもんなぁ、ほら」

 

お父さんが片手を出して、お金を催促するが……当然ながらそんなものは貰っていない、ただ私はしくじって戻って来ただけだ。

そして私がローレルからお金を受け取っていないと悟ると、お父さんは片手に持っていたビール缶を投げつけて来た。

 

「お前さァ、僕を怒らせるなよ……お前が出来る事は何だ、何も出来ねえ癖に金ばかりかかってんだよ」

 

「―――――ごめんなさい」

 

「魔法少女にもなれなかったお前を家においてやってんのは僕の恩情なんだよ、せめて()()()()()にはなれたんだ。 それなりの仕事はして来いよ、なぁ!」

 

……そうだ。 私は出来損ないで、彼女達とは違う。

この家にすら居場所がなくなってしまうと私という価値は誰も認めてくれない。

 

「――――私は、役目を果たせませんでした……その上で話があります」

 

「あぁ? んだよ、言いわけする気なら殺すぞ」

 

「――――ブルームスターを倒す、好機があります」

 

一言一言を確かめるように吐き出す、自分の言葉に絶対の自信が持てない。

私はいま、怒られないために言いわけを述べているだけじゃないだろうか。 

私はまた、あの目と相対して本当に戦う事が出来るのだろうか。

 

「―――…………私が、ブルームスターを殺します」

 

いや、違う。 私はやらないといけない。 

お父さんに認められないと、この家の中ですら居場所がないと、私の価値はどこにもない。

私が私であるために、この手でブルームスターを殺さないといけないのだ。

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