俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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たとえ私の全てを賭けてでも ①

互いの得物が衝突し、暗闇を照らす火花を散らす。

迷いなく心臓に向けて穿たれたナイフは、箒の柄を削りながらどうにか軌道が反れる。

躊躇う気持ちはどこにもない、全力の一撃だ

 

「まあそうでないと困るな、あとで負けた言いわけされても困るからよ!」

 

「―――――減らず口ッ!」

 

初撃で固定された箒を手放し、距離を取る。 やはり彼女の魔法は厄介だ。

杖の形状からして間合いの有利はこちらにあるが、一度ナイフを当てられて固定されると同じ箒は使えない。

いつも通り打ち合っていたらジリ貧だ、得物を躱して飛び込む必要がある。

 

「それなら……」

 

「―――――!」

 

こちらの魔力のうねりを察してた、今度はトワイライトが距離を取る。

しかし魔力は急には止まらない、片足に収束させた魔力が霧散する前に一足飛びでその姿を追う―――が。

 

「逃がす……っ゛!?」

 

腕に熱い痛みが走る。 見れば箒を握る右腕からジワリと赤い血液が滲みだしていた。

攻撃……いや、そんな素振りはなかったはず。

 

《マスター、飛び込んじゃ駄目です! ()()()()()()()()()()()()()!》

 

「な……るほどッ!!」

 

危うく仕掛けられた罠に飛び込みそうな片足を無理矢理静止し、立ち止まる。

夜闇に紛れてかなり見にくいが、確かに俺とトワイライトをつなぐ線上には、砂粒が空中で停止した状態で待ち構えていた。

あのまま突っ込んでいたら全身を貫かれていたか、恐ろしい使い方をする。

 

「あっぶねえ……悪いなハク、助かった」

 

《いや、無事で何よりです。 しっかしつくづく厄介な魔法ですね……》

 

「ああ、だが1つ気になるな」

 

トワイライトは現在、俺の魔法を停止しているはずだ。

恐るべき継続性能だが、その上で俺の箒や砂粒までに魔法を使っている。

いくら魔法が常識外れとはいえ、流石に1人で処理しきれるものなのだろうか。

 

《……聞いたら素直に教えてくれますかね》

 

「そこまで素直なら話はここまで拗れちゃいない、推測するが……固定するのには魔力を使っているはずだ」

 

そしてより強大なものを止めるためにはより多くの魔力を消費する。

だから必ず使える魔力に底はあるはずだが……その底が見えない。 俺の変身能力を止め続けるだけでも消費はあるはずなのに。

一体トワイライトは――――いや、魔女はどこから魔力を持ってきている?

 

「――――考えごとは終わった?」

 

「まだまだ、夜明けまで待ってくれ」

 

「――――断る」

 

トン、トン、とその場でリズミカルに跳ぶトワイライトが、踏んだ3歩目を皮切りに距離を詰める。

相手の魔法の仕組みはまだ分からないが、こちらが取る手段は2つだ。

 

《相手のガス欠を待つか――――》

 

「こちらが押し負けるより先に速攻で畳むか、だなァ!」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「―――――サムライガール!!」

 

「問題……ありません!!」

 

「ふむ……流石に三人がかりだと少し手間取るな」

 

相対するドクターが片手を開くと、掴み取っていた銃弾がバラバラと砂利の上に転がる。

涼しい顔をしながらゴルドロスの射撃は片手で防がれた、本人にはかすり傷一つない。 だというのにこちらは既に疲労困憊だ。

ドクターの攻撃は一発一発が必殺級、受けるも逸らすも体力と精神が削られていく。

 

「ふ、二人とも……!」

 

「来るなヨ、シルヴァーガール! そこから先はかばい切れないカナ!」

 

「ええ、私達に何があっても絶対に先走った真似はしないでください」

 

私たちの身を案じ、前線に加わろうとするシルヴァの動きを手で遮る。

一番怖いのは、肉弾戦の苦手なシルヴァが加わる事で共倒れしてしまう事だ。 

彼女には酷だが、後ろからサポートしてもらえるのが一番ありがたい。

 

「……確かに、こちらとしてもシルヴァが一番何をしてくるか分からないからね。 間合いに入ってきたらいの一番に彼女を仕留める」

 

「やけに饒舌じゃないですか、ドクター。 そんなに前回してやられたのは屈辱でしたか?」

 

やはり、ドクターはシルヴァをかなり警戒している。 相手の無敵に穴がないわけではない。

前回シルヴァがやって見せたような、単純なダメージを伴わない拘束なら効いてしまうのだろう。

 

「……どうする、向こうも警戒しているなら同じ手はそうそう食わないヨ」

 

「分かってます、だから()()()()使()()()()()()()()()

 

「やっぱりアレする気かヨ、気が乗らないナー」

 

無敵の力には弱点が無いわけではない、その前提でこの日のために考えた作戦がある。

失敗は出来ない、チャンスは一度きりだ。

 

「話し合いは終わったかな、そろそろこちらも動こうか」

 

「ドクターこそ、覚悟は出来ましたか? 私達に負ける覚悟が」

 

「……笑える冗談だね」

 

台詞に反してドクターの顔はピクリとも笑っていない。

まあそうだろう、今まで黒星しかない相手がここまで余裕しゃくしゃくなら頭がおかしくなったんじゃないと思う。

 

「今に笑えなくしてあげますよ、それに……ドクターにはまだ話も聞けていないですからね」

 

「―――――今さら、何の話を」

 

「魔法局を抜けた理由を話してもらいます」

 

「……ははは。 冗談が上手くなったな、ラピリス。 そんな話を今さら聞いて何になる?」

 

「それは私が決める事にします」

 

「そうか――――ああ、本当に……」

 

緩急も、呼吸の乱れも無く、瞬きの間にドクターが目の前まで距離を詰めてくる。

やはり、速い――――

 

「……笑えない冗談だ」

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