俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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たとえ私の全てを賭けてでも ②

《――――マスター、右!!》

 

「あい……よォ!!」

 

闇に紛れて襲って来る刃を紙一重で受けて、躱し、捕らえ続ける。

ハクがいなければとっくに死んでいる、状況を俯瞰しながら指示を出してくれる目が増えるだけでもだいぶ楽だ。

口に出しては言わないが、本当に頼れる相棒だ。

 

《ああもう、これだけ粘ってるのにまだヘバらないんですかあの子!? いい加減凌ぐのも限界ですよ!》

 

「こっちから攻められりゃいいんだけどな……!」

 

身に纏う魔法少女の衣装は所々切り裂かれ、その下から白い肌と赤い切り傷が覗く。

ナイフだけならまだやりようもあるが、隙あらばまき散らされる砂の結界が厄介極まりない。

薄暗い中に仕掛けられると目視は難しい、ただでさえ目の前の刃物を避けるために意識が割かれているってのに。

 

「――――万策尽きた?」

 

「まさか、見てろここから逆転するからよ……」

 

「――――その割には息が上がっている」

 

罠を警戒すればトワイライトに近づけない、近づかなければ攻撃も出来ない。

唯一の好機は相手が攻めてくる時だが、その際にはすでにナイフの間合いに踏み込んでいる。 

今こそ何とか紙一重で生き延びてはいるが、一瞬でも気を抜けばスッパリと断ち切られておしまいだ。

 

「――――1人で待っていたのは、無謀」

 

「なんだよ、そういうならお前もヴィーラたちを連れてくりゃ良かっただろ」

 

「――――……仲間ではない、目的が同じだっただけ。 私は――――」

 

「お父様に命令されたから、ってか?」

 

「―――――……」

 

「俺が聞きたいのはお前の言葉だよ、トワイライト。 くだらねえテメェの親父の話なんかじゃない」

 

砂の結界を抜けて振り抜かれた刃が胸を掠めてマフラーを切り裂く。

皮膚を切り裂かれる痛みにたたらを踏んで二歩後退……すると、切り裂かれた痛みとは別に、針を刺したような痛みが背中に走る。

 

《……マスター、気づいているとは思いますがヤバいですよ! 囲われてます!》

 

「ああ、誘いこまれたって訳か」

 

背中に感じるのは肉に食い込む砂粒の痛み、あのまま数センチ後退すれば心臓に届いたかもしれない。

かといって周りを見れば、既に目に見える量の砂が俺の周囲を取り囲んでいた。

 

「……これだけの量、操るのにどこから魔力出してんだよ。 お父様が支払ってくれてんのか?」

 

「――――黙って、お父さんをバカにしないで」

 

背後からトワイライトの声が聞こえてくる、距離は近い。

周囲の砂のせいで振り向くこともままならないが、万事休すなのは間違いないだろう。

 

「違うな、お父さんじゃねえだろ。 お前が怖いのは自分の価値を認めてくれる人間が貶められる事だ」

 

「――――黙って!!」

 

《ちょっと、今刺激するのは不味いですよ!》

 

「違わねえよ、親の価値が認められなきゃ子供であるお前だって認められないもんな」

 

「――――黙れ!!」

 

トワイライトがトドメとばかりに刃を振り上げる――――が、俺が待っていたのはこの瞬間だ。

激昂すれば太刀筋だって荒くなるものだ、分かりやすいその軌道は後ろを見ずとも()()()()()()()

 

「――――な……!?」

 

「動けないとでも思ったか? 片腕ぐらいくれてやる覚悟はあるんだよ!」

 

砂で守られているから反撃は来ない、とトワイライトも高をくくっていたのだろう。

だがこちらとしても無傷で勝てる相手なんて思ってもいない。

黒衣に比べればこれくらいなんてこともない、傷みさえ無視すれば片腕ぐらい砂を突き抜けて振るうことは出来る。 

 

「っ――――! 狂ってるの……!?」

 

「命と片腕なら腕の方が安い……だろッ!!」

 

腕を掴んだまま、力任せにトワイライトを振り回す。

トワイライトも砂に触れればダメージは受けるはずだ、こうして振り回せば自分で仕掛けた罠を喰らってしまうのだから。

そして予想通り、辺り一面の砂は重力を思い出したかのように落下を再開する。 術者が発動を解除したことで。

 

「これで厄介な邪魔は消えた……なッ!」

 

「カハッ――――!」

 

振り回したトワイライトにマフラーを巻き付け、地面にたたきつける。

魔力を帯びたマフラー越しに叩きつけられたので応えるだろう、トワイライトは苦痛に顔をゆがめた。

 

《マスター! 腕!!》

 

「なんってことねえよこれくらい……!」

 

そして、ここまでの一連の動作を終えてようやく振り回した腕に激痛の感覚が追いついて来た。

滴る鮮血は留まる事を知らず、握るマフラーを赤く染めていく。

無数の針が貫通したようなもんだ、やせ我慢はしているが腕へのダメージは尋常ではない。

 

「ッ――――あなた、馬鹿なの……!?」

 

「なんだよ、どいつもこいつも人の事馬鹿馬鹿馬鹿ってよ!」

 

《マスターの事を端的に表す形容詞ですから仕方ないんじゃないですかねぇ、バーカ!》

 

針千本を喰らって握力が殆どない腕から逃れ、トワイライトが距離を取る。

これだけ負傷してようやく通ったダメージが背中の強打一回か、泣けてくる。

だが、これで厄介な罠は取り除けた。

 

「それじゃ体も温まってきたことだしな、第二ラウンドと行こうぜ……!」

 

右腕はもう使えない、脱力した腕からは血の気と体温が抜けていく。

額ににじむ脂汗を拭うのすら面倒だ、出来れば止血したいが今のトワイライトに猶予を与えてしまえばまた同じように砂を撒いて来る。

 

「ハク……仕組みは分からないが、あいつの魔力はほぼ無尽蔵と思っていい」

 

《あれだけ魔法を行使して疲労の色が見えませんからね……だったらどうします?》

 

「待ちの姿勢はやめだ、やっぱり攻めるしかない」

 

《ああ、やっぱり馬鹿ですよあなたは……》

 

ハクは呆れかえっているが、どの道このままじゃ出血が多すぎる。

持久戦はできない――――残されたわずかな時間でトワイライトを倒せなければ、死ぬだけだ。

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