俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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藪医者の攻略戦 ①

「―――――そろそろ万策は尽きたかな」

 

「だってヨ、サムライガール……何か言い返してやったら……」

 

「そうですね……ゴルドロス、そろそろ隠し玉があるなら出した方が良いですよ……」

 

肩で息をするのさえ疲れて来た、弾のようににじむ汗で視界が霞む。

何とか紙一重で戦っているが、先にスタミナの方が底をついて来た。

体力ならドクターの方が少ないだろうが、運動量が違う。

 

「これで君達と戦うのも何度目だろうね、もう嫌というほどわかっただろう? この力に弱点は――――」

 

「――――ある、必ずあります」

 

無敵を断ずる言葉を否定され、ドクターの舌が止まる。

 

「攻撃を食らえばダメージは通らずとも、衝撃(ノックバック)は受ける。 そして本人のスタミナにも限りがある……私達ほどではないですが汗が滲んでますよ、ドクター」

 

「……ご指摘どうも、だがそれが分かったところでどうする? その身体で僕の体力切れでも待つつもりかい?」

 

ドクターは首筋を伝う汗を拭う。 確かに相手の言う通り、スタミナ切れを待つのは得策ではない。

3人がかりでこのざまなのだ、先にこっちが持たない。

 

「こんな茹だるほどに暑い日にはシャワーでも浴びたいね、君達を倒してから――――……」

 

ドクターの言葉が再び止まり、河川敷の方へ視線を向ける。

彼女の瞳には明らかな動揺があった。 確か向こうではブルームスターが戦っているはずだが……

 

「ハッ、どうしたヨ。 トワイライトがやられちゃったカナ?」

 

「……ああ、どうやらその通りだ。 時間を稼がれ過ぎたね、大事な人材を失った」

 

ゴルドロスの挑発にも乗らず、落胆するドクター。

隙だらけな姿だが下手に踏み込めない。 それに何より、彼女の体からは今までよりも強い魔力を感じる。

 

「ああ……まさか彼女が負けるとはね。 いや、トドメはあの男か……まったくもって度し難い」

 

そして――――これまでのゆったりとした動きから一転し、ドクターが足元の砂利を蹴り飛ばしながらこちらに突っ込んでくる。

狙いは私だ、なんとか交差させた刀で振り抜かれた拳を受け止めるが、一撃が重い。 

 

「ぐっ――――――!?」

 

「足元にシルヴァの紙片を撒いているんだろう? 拘束されるのは面倒だ、場所を変えさせてもらおう」

 

「ラピリ……!」

 

「シルヴァ、来ては駄目です!!」

 

戦闘中の隙を見て、少しずつ仕込んでいた種を見抜かれて動揺したのか、シルヴァが交戦する私たちに駆け寄ろうとする。

だが間に合わない、拳の衝撃は受け止めた私の体を容易くふきとばし、シルヴァとの距離を離される。

その隙に一足で跳んだドクターが、シルヴァの首を掴み、片手で持ち上げる。

 

「ぐ、がは……!?」

 

「シルヴァ―ガール!?」

 

「やっと釣れたか、正直君が一番何をしてくるか分からないんだ。 先に片付けさせてもらうぞ」

 

「―――――ドクタアアアアアアアアアア!!!!」

 

刀に魔力を込め、風圧で無理やり体を地上に押し付け、大地を蹴り付ける。

そして勢いそのまま今にもシルヴァの首をへし折りそうな腕に刀を叩きつけた。

“ダメージはなくとも衝撃はある” 横から加えられた不意の衝撃に耐えかね、ドクターの腕がシルヴァの首から剥がれた。

 

「ゴルドロス、シルヴァを抱えて下がって!!」

 

「わかったヨ!!」

 

ドクターから引き剥がしたシルヴァの体を投げ、それとゴルドロスが受け止める。

間一髪で間に合ったようだが、シルヴァは気を失っている。 ドクターから狙われることを考えると一旦安全な所まで撤退してもらった方が良い。

 

「ドクター、あなたはそこまで堕ちたか!!」

 

「とっくの昔にだ、今さらが過ぎる話だろう。 僕は裏切り者で、君達は魔法局の人間だ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「…………なに?」

 

私の刀を抑えていたドクターの腕から僅かに力が抜ける。

このまま力で押し切ったところで彼女の服すら切り裂けないわけだが、ドクターの瞳は確かに動揺に揺れていた。

 

「私に狙いを定めておきながら、何故シルヴァに標的を変えた!? そうでなくとも今までの中で仕留める機会はいくらでもあっただろう!!」

 

「……買いかぶり過ぎだ、君達が生き汚く足掻いた結果だろう」

 

否、断じて否。 彼女との命のやり取りをする中で、致命的な隙はいくらでもあった。

ドクターほどのプレイヤーがそんな凡ミスを見逃すはずもない、こちらを侮っているか手を抜いているとしか思えない。

 

「あなたのその思い上がりが腹立たしい、敵対すると決めたのならその覚悟は芯として通すもの! 中途半端に迷ったまま戦うなどこちらとて迷惑だ!!」

 

「っ……君らしいな、死にたいのか死にたくないのかどっちなんだ?」

 

「どちらでもありませんよ、私はあなたの口から覚悟が聞きたい」

 

そのためには、こちらも相応の覚悟を見せなければならない。

意を決し、足元の砂利を強く踏みつける。 

この戦いの間、シルヴァが仕掛けてくれたものの位置は把握している。

 

「なにを……!?」

 

「ステージチェンジなんて許しませんよ――――地べた転がり回してあげますよ、ドクター」

 

砂利の下に埋もれた紙片が一瞬強く輝き、私達を巻き込みながら強烈な爆発音を巻き上げた。

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