俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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Re:東京事変 ①

「……おはよう、ブルーム。 引き続き状況は最悪だヨ」

 

「ああ、そうみたいだな」

 

朝7時、幽鬼のような表情でコルトが目覚めてくる。

俺と同じく疲れが取れていない顔つきだが、地上の騒ぎに気付いて寝ていられなくなったのだろう。

 

「マスコミが騒ぎだしてるな、病院の前にも被害者の声を聞きたくてうろついてる。 今出て行くと面倒な事になるぞ」

 

「そっちもそうだけどそれだけじゃないヨ、ラピリスがいない」

 

「……知ってる」

 

コルトに向けて魔法少女用のSNSアプリが表示されたスマホを見せる。

そこには今日の6時ごろに送信された「東京に行ってきます」というメッセージが乗っている、送り主は当然ラピリスだ。

 

「と、トーキョー? なんでいまさらそんなとこに行くんだヨ!?」

 

「大方呼び出しがあったんだろ、ローレルからな」

 

ラピリスがこんな時に冗談を言うとは思えない、東京に行くというのは本当に事だろう。

そしてこんな状況で人を呼び、かつラピリスも応じるような相手は1人しか心当たりがない。

 

「……す、すぐに追うヨ!」

 

「無理だ、ラピリスの機動力は知ってるだろ。 今から追いかけても追いつけるわけがない」

 

「だったら黙って放っておけっていうのかヨ!」

 

「そんなわけあるか、ただ突っ込むだけじゃ無謀すぎる。 相手だって何も用意せずラピリスを呼ぶはずがない」

 

メッセージだけ残したのは一人だけで来いという指定があったはずだ。

おっとり刀で俺たちが追いかけたところで、虎の口の中に飛び込むようなものだ。

 

「……あ、あのぅ」

 

すると、俺たちの様子を窺っていたのか、シルヴァとオーキスが扉の隙間からおずおずと顔を覗かせる。

二人とも薄っすらと目の下にクマを作っている所を見ると、やはりよく眠れていないらしい。

 

「け、喧嘩してるところ悪いけどぉ……外、大変だよ?」

 

「魔女の急患なら分かってるヨ、ただ今はそれより……」

 

「そ、そうではない! ()()()()()()()()()()()()!」

 

「「――――はっ?」」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「うわああああああ!!! 出てこい、出てこい魔法少女!!」

 

ハクが表示してくれた動画にはシンプルな直剣を振り回し、辺り一帯を破壊する魔女の姿が映っていた。

投稿者のコメントによると撮影場所は九州、だが問題はこの1件の動画だけではない。

 

SNSのタイムラインには同じような惨状を写した動画が何十件と投稿されている。

 

「こいつは……どういう事だ?」

 

「き、恐慌だねぇ……魔女は遅かれ早かれ同じような状態になるって分かったから、自棄になって暴れ始めたんだ」

 

「ニュースにも取り立たされたせいで情報の電波が早い、それに“魔法少女を倒せば治る”などという虚偽も流れているではないか!」

 

魔女が倒れる原因と、魔法少女には何の因果関係もない。 

魔法少女を倒したところでいずれ魔力切れを起こすだけ、むしろ消耗してしまう分タイムリミットが早くなる。

しかしそんな正しい情報すら伝わらないくらいに各地で混乱が巻き起こっている。

 

「ろ、ロウゼキさんに連絡は取れないのかなぁ……」

 

「駄目だヨ、回線がパンクしてる。 直通の特殊回線は魔法局ごと潰されたからネ」

 

「クソ、あっちもこっちも! ……待て、東北はどうなってる?」

 

検索バーをタップし、近辺地域の情報に絞って調べてみる。 当然ながらこちらの地域でも同じように被害は出ているらしい。

そして、その中でも今俺たちがいる病院に近い場所で暴れている魔女の動画も発見できた。

 

「チッ……私が出るヨ、魔女ぐらいなら残った魔石でもなんとかなるからネ」

 

「待て、油断は禁物だ。 俺も……」

 

「ステイ、ブルームたちも万全じゃないでショ。 魔力は温存しておきなヨ、力を振るう場所はここじゃないからネ」

 

制止を振り切り、コルトはぬいぐるみを片手に病室を飛び出す。

追おうかと迷ったが、走りかけた俺の肩をシルヴァが掴んで止める。

 

「……ゴルドロスの言う事も一理ある、我々が全員鎮圧に向かったところで根本的な解決にはならぬのだ」

 

「そりゃそうだけど……」

 

「そ、そうだよぉ。 それに、ローレルの居場所は分かってるんだよねぇ」

 

オーキスが俺のスマホを指さしながら不器用な笑顔を作る。

ラピリスが遺したメッセージを差しているのだろう、確かに向こうが指定してきた場所に向かえば接点えを得られる可能性は高い。

 

「く、車の魔法少女居たよねぇ……あの子に連絡は?」

 

「駄目だ、向こうも魔女の対処に追われているだろう。 そもそも今の状況では連絡が付かぬ」

 

「そういえば、以前はオーキスたちはどうやって行き来していたんだ?」

 

「スピネちゃんが用意した魔物使って、だねぇ。 流石に長距離は私の魔法だけじゃしんどいかなぁ」

 

「そうか……」

 

そうなるとやはり東京までの脚がない。 

俺だけならば羽箒で移動だけなら何とかなるが、その後の魔力まで持つかどうかが怪しくなる。

 

「……ねえ、ちょっといいカナ」

 

「ん? 戻って来たのかコルト、何か問題が?」

 

三人して黙考していると、気まずそうな顔をして戻って来たコルトが扉の隙間から顔を覗かせる。

 

「いやー、それがネ……屋上の“アレ”、呼んだの誰カナ?」

 

「「「…………アレ?」」」

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