俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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蛇蝎の如く ④

「……と、言う訳で。 やるなら我か其方だ」

 

「か、かかかか帰っていいかぁ!?」

 

「駄目、逃げるならこちらも杖を砕くよぉ?」

 

「すまぬ……すまぬ……」

 

まさか危険を冒してまで我々を助けてくれた恩人を脅すことになるとは思わなんだ。

しかし彼女の反応から分かるとおり、話した内容はかなり危険な作戦だ。 正直巻き込みたくはない。

 

「や、やはり我が……」

 

「シルヴァだけが前に出ると怪しまれるかなぁって、数人がかりでやぶれかぶれな感じを演出した方が成功率は高いと思う……よ?」

 

「わ、わわわ私の魔法は見ての通りかなり不安定だぞ!? これも“戦車”と“女帝”が偶然引けたから……」

 

「だからサブプラン、本命はこっちが務めるから囮をお願い」

 

「き、恐怖心……こいつに対して恐怖心……!」

 

「申し訳ないけど泣き言は聞いていられないなぁ」

 

「そ、そん……おわぁー!?」

 

突然、真下から跳んで来た石礫が赤い魔女の翼を貫いた。

何とかまだ飛行状態は保ってはいるが、浮力を損なったせいでガクンと高度が下がる。

 

「だ、大丈夫か!? 痛くはないのか!?」

 

「そ、外付けパーツだから感覚はないよ! なにさぁ今の!?」

 

「見つかったねぇ、下から睨まれてるよ」

 

扇状に広がった翼に開けられたた風穴からは、シュウシュウと音を立てて煙が噴き出ている。

これはあの怪物使いの毒だ、石礫に塗布していたのだろ。

 

「うっそだろぉ! どんな視力してるんだぁ!?」

 

「お、落ち着くのだ! お主が揺れると我々も振り落とされる!」

 

「まずは気絶してるこの子を屋上に安置してから降りよっかぁ……ところで、君の魔女名は?」

 

「ま、魔女名……?」

 

「名前がないと呼びにくいから……ねぇ?」

 

「え、えーと……名前、名前かぁ」

 

魔法局から与えられる魔法少女名とは異なり、魔女の名乗りは自由だ。

中には名前を持たずに活動しているものもいるが、共闘する以上は呼べる名がある方が助かる。

 

「……バレッタ、魔女バレッタ。 本当は()だけど以後よろしくぅ……」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

――――腹立たしい、水を差した奴がいる。

塵も残さず片付けようとしたものが吹き飛ばしきれなかった、歯に物が詰まった様な不快感が募る。

改めて周囲を確認するが、熱線を放った方向はともかく、いつの間にか化け物の背後に倒れていた魔女すら1人残らず消えている。

 

「……それとも、今度はお前が遊んでくれるのか?」

 

足元に転がっていた礫片を拾い上げ、杖から垂らした毒液を塗布してからはるか頭上の気配に向けて投げつける。

こちらから目視は難しいが、豆粒ほどの点がふらついて高度を落としてくるところから見るに手ごたえはあったようだ。

 

「……ほう?」

 

しかしそれでも完全に飛行能力を奪うには至らなかった、そのまま無様に滑空しながら撤退するのかと思いきや……違う。

あいつらは、真っ直ぐにこちらへ向かって落ちてきている。

二度の熱線を掻い潜り、命の危険を冒しながらもなお―――――まだ戦意が削がれていない。

 

「……そういえば、名前は何だったか」

 

自然と口元には笑みが浮かんでいた。

まだ戦うのか、殺し合うのか、それならば―――――また、このムシャクシャを晴らしてくれ。

 

「―――――魔法少女オーキス、そちらは?」

 

「ミズチ、今考えた」

 

火花と毒液を散らし、互いの得物が鍔競り合う。

ウェディングドレスをたなびかせるこの魔法少女は優雅に飛んで降りてきたわけじゃない、地上で待つ自分目掛けて一足先に()()()来たのだ。

狂っている。 いくら魔法少女とは言え、この濃密な魔力が満ちる地で地表に激突すれば無傷では済まない。

 

「ハハッ……もし的を外していたらどうするつもりだ?」

 

「地中に潜るかなぁ、後ろの魔物はまたチャージ中?」

 

「教える道理はない……なっ!」

 

真上からの斬撃を無理矢理逸らし、相手の体勢を崩す。

隙を見せた相手の横腹に向けて刃を振るうが、切っ先が到達するよりも早く相手の身体が地中へともぐりこんだ。

 

――――その軌跡に一枚の紙きれを残しながら。

 

「…………!」

 

振るう刃を止める手は間に合わず、毒液が紙切れに触れる。

その瞬間、硬質なものが割れるような音を立てて紙面から強烈な冷気が放出された。

 

「っ……はっ、これで止めたつもりか?」

 

冷気を浴びた杖は滴る毒液、および握る腕ごと厚い氷に固められてしまった。

だがこんなもの、時間稼ぎにしかならない。 溢れる毒液は解ける際の水で希釈されるが、それでも確実に内部から氷を溶かし続ける。

 

「逃げ惑うだけが魔法少女ではないだろう、それとも……先にこの氷の主に礼を述べた方がいいか?」

 

オーキスとの戦闘中にちらつく銀髪の魔法少女、あれはかなり面倒な相手だ。

爆破や煙ばかりではなく、こうして隙を見ては猪口才な魔法を飛ばしてくる。 その上で自らは手を下さないのだから腹立たしい。

 

「隠れるばかりなら、今度はこの辺り一帯を更地に……」

 

「――――ままままま待て! 待て、そこの毒女! おおおおお前の相手はこの私だ私ィ!!」

 

「…………あァ?」

 

腹立たしい、恐怖に震え切った声に足を止めさせられる。

振り返るとそこにいたのは赤い魔法少女、なのだろうか。 目じりに涙を貯めながら、青い顔つきでこちらに銃口を向けている。

 

「……何だ、お前?」

 

「ば、バレッタ……お前を倒す魔女の名前だぁ!!」

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