俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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蛇蝎の如く ⑥

『オオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

巨体というのはそれだけで脅威だ。

こちらの攻撃は生半可なものでは聞かず、相手の攻撃はただ腕を振るうだけでも壊滅的な破壊力を備える。

もちろん、こちらも魔物を相手取る以上は対巨大戦の経験がないわけではない。

 

「だがそれで慣れるということは決してないわけなのだぁ!」

 

「来てる来てる来てる! 来てるってほらぁ!!」

 

なにせ一歩間違えれば即死もあり得る攻撃を紙一重で躱し続けなければならないのだ。

怪物が地を踏むたびに発生する地響きがこちらの足元を崩し、瓦礫が舞い、気を抜けば鋭利な爪や踏みつけが襲って来る。

咄嗟に挟むような術式では防御が間に合わない、ある程度相手の攻撃を予測して動かねば死は目前だ。

 

「魔法少女! まだか、まだあいつのチャージは終わらないのか!?」

 

「まだだ! 攻撃に意識を割いている分、熱線の準備が遅れている!」

 

「チックショー! だったら距離を取って思う存分チャージさせてやったらいいんじゃないか!?」

 

「駄目だ、ここでこの魔物を野放しにすればオーキスへの負担になる!」

 

たとえオーキスであろうとミズチとこの怪物が肩を並べれば苦戦は必至、敗北すら十分ありうる。

それに分断しておけば、万が一熱線の妨害に失敗してもオーキスは生存できる。

……まあ、私はその時は死んでしまうだろうが。

 

「バレッタよ、今引いたそのカードは何だ?」

 

「節制だ、使えばしばらく魔力の消費が抑えられる……」

 

「当たりだな、使い所は任せるぞ」

 

自らの杖が銃の形をとる魔法少女は珍しくない、スピネとてその一人であった。

そして銃型の杖を扱ううえで共通の問題が1つある、攻撃手段に魔力の消費が伴う事だ。

近接武器なら殴る切る叩くといった用途があり、比較的魔力効率は良いが遠距離武器はそうはいかない。

弾の生成、射出、そしてそれに付随する個々の魔法による消耗の連続だ。 長期戦による燃費の問題を軽減できる手段はありがたい。

 

「……単刀直入に聞くが、あとどれだけ魔力の余裕がある?」

 

「わ、分かんない……けど、結構使ったと思うぞぉ……」

 

バレッタの額から大粒の汗が滴る、こうして怪物と相対する前にも私との追走戦でかなりの弾数を無駄打ちしていた。

戦闘経験が低いため、本人も残量は把握していないようだがおそらく半分は残っていないはずだ。

 

「バレッタ、魔力が尽きる前に無理だと判断したらすぐに逃げよ。 元からその約束だ」

 

「わ、わかっ……いや、おおおお前はどうする!?」

 

「最初の目論見通りだ、奴の熱線を暴発させる」

 

正直、バレッタが消えるのは痛い。 私一人ではどうやってもペンを走らせる際に隙が生まれる。

だがそれでも私は魔法少女だ、それにオーキスだってミズチと死闘を繰り広げているのだ。

 

「だが出来ればもう少しだけ時間稼ぎに付き合ってくれ、彼奴をミズチと合流させずにここで倒す」

 

「う、うん……」

 

バレッタが自らの銃に節制のカードを通し、新たに一枚のカードを引く。

横目で確認したが、そこに描かれていたのは落雷で崩壊する塔のイラストだった。

 

「うげっ! 塔……!」

 

「わ、悪いカードなのか?」

 

「まずい、これだけはまずい……! 絶対に使いたくない!」

 

バレッタの顔は蒼白に染まっている。 タロットになぞるなら塔のカードは正逆問わずに悪い意味を指し示すものだったか。

 

「引き直すことは出来ないのか!?」

 

「駄目なんだよぉ! 一回引いたカードはちゃんと使わないと……おわぁー!?」

 

バレッタの絶叫を合図に、2人でその場を跳び退く。 一呼吸置かずに飛んで来たのは私達の身の丈ほどもある火球だ。

アスファルトに直撃すると直径そのままのクレーターを作り、はじけ飛んだ。

 

「………………ヒエッ」

 

「た、貯めた熱線のエネルギーを……小出しにしてきたのか……」

 

怪物の口からはチロチロと赤い炎が顔を覗かせていた。

奴の口内に収束していた魔力の高まりが僅かに減衰している、こちらへぶつける火球の分だけリソースを切り離して撃ってきたのか。

 

「……なあ、なんて言うかアレ……()()()()()()()()()()()()?」

 

「う、うむ……」

 

爪や足を振り回すだけでは攻撃が当たらない事を学習し、飛び道具に切り替えて来た。

しかも溜めつつある熱線から一部を切り離し、撃ち放つという高度な技術まで使って、だ。

 

「これはもしや、長期戦は不味いかもしれぬ……」

 

「だ、だったらどうする!? こっちから仕掛けるか!?」

 

「いや、互いに魔力が心もとない! こちらから仕掛けても倒しきれるか――――」

 

私の言葉を遮るように怪物が両手の爪を振り上げる。

だが距離が遠い、あのまま振り下ろしたところで我々は届かない。 また瓦礫による攻撃か?

 

――――その時、大気の濃い魔力に隠れ、奴の爪に集まる魔力の起こりを感じ取った。

 

「――――いかん!!」

 

事前に何枚か用意していた簡易的な防御術を全て破り取る。

幾ら重ねても簡易的な術だ、敵の攻撃は読めるが防ぎきれるか怪しい!

 

「バレッタ、もっとこっちに! ()()()()()()()()()!!」

 

「え……えぇ!?」

 

予想通り、怪物が爪を振るうと魔力を乗せた鋭い爪撃が形を成して飛んできた。

魔物の膂力で振るわれれ爪を防ぐには、重ねた防壁はあまりに脆い。 まるで紙細工のようにズタズタに切り裂かれていく。

 

「くっ、駄目だ――――!」

 

「わ、ちょっと……!?」

 

防ぎきれないと察し、バレッタを抱き寄せてその身を庇う。

――――その直後に感じたのは熱い痛みと、視界の端を飛ぶ鮮血のぬくもりだった。

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