俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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回診のヴァイオハザード ④

「なん……じゃそりゃあああああああああ!!!??」

 

大地が割れる、地割れに食われる、俺を閉じ込めた石壁が砕け散る!

鳴動する大地はまるで生きているかのように……いや実際生きているのだろう。

ハクの言う通りなら()()()()()()()()!!

 

「違うね、正体は根っこやツタだ。 山中に魔物の根が蔓延っているのだろう、ボクらの騒ぎに怒って暴れ出したって所かな」

 

「つまり不用意なお前の魔法のせいって事か!」

 

「うーむ、それについては反論できない」

 

とにかくこのまま荒れ狂う地表にとどまるのは不味い、取り出した羽箒に乗って上空へと逃れる。

 

「ヴァイオレット、掴まれ!」

 

「断る、君の手は借りない」

 

「お前まだそんな事……!」

 

ヴァイオレットはこちらを無視して新たなカセットをゲーム機にセットする。

足元のヘルメットをかぶった小人が消滅し、新たに格子状のマス目が地面を奔った。

 

≪コンバットバトラー・A(エース)!≫

 

ヘルメットの代わりに新たに現れたのは、丁度彼女の背丈ほどの大きさの戦闘機だ。

今までの小人に比べれば倍はデカい、頭上を飛び回る機体の腹に取り付けられた取っ手を掴むと、そのまま戦闘機に連れられて空へと飛んだ。

 

「ボクだってこの通り飛行手段はある、君の手を借りる必要はないよ」

 

「お前なんでそこまで……」

 

「君は信用できない、それだけだ」

 

……向こうの意思は頑ならしい、今は何を言っても聞いちゃくれないだろう。

だが百歩譲ってそれならこの真下の惨状はどうしたものか。

 

見下ろした地表では根っこだかツタだか分からないものが無数にうねうねと蠢いている。

ツタの表面には細かい穴が開いており、時おり呼吸をするかのように穴から花粉が飛び出す。

怒らせたせいか花粉の噴出が今までより多い、このままじゃあっという間に街が花粉に沈んでしまう。

 

「参ったね、あれだけの質量を一網打尽にできる火力はボクには無いぞ」

 

「こっちもだよ、前みたいにシルヴァが居れば……」

 

ここに来る前に何度か連絡を試みたが、反応がない事から考えるに、恐らくすでに花粉の毒牙に掛けられた後だろう。

こちらの戦力は魔法少女が2人、敵は強大、味方は協力する気がないと来た。

かなり絶望的な状況だ、だが勝機が無い訳じゃない。

 

「あれが全部植物の根だってんなら……」

 

「それを操作する“頭”がどこかにある」

 

喧嘩互いしている割には意見が合う、横を見れば不愉快そうなヴァイオレットの顔が見えた。

挑発するように笑ってみると、顔を背けて地表すれすれへと高度を下げる。

考えが同じなら向こうも頭となる本体を探しに行ったのだろう、こちらも早く見つけないと。

 

《マスター、我々は花粉に対する耐性が薄いです。 くれぐれも噴出する花粉には気を付けてください!》

 

「分かってるよ、頭は探せるか?」

 

《うーん……努力はしますけどあまり期待はしないでください》

 

花粉をもろに浴びる危険があるため、俺たちは高度を下げる事が出来ない。

付かず離れずの距離を保ちながら地表を舐める様に見渡すが、それらしいものは見当たらない。

 

「くそっ、相手がデカすぎる……ハク、そっちはどうだ?」

 

《うーんうーん、やっぱりどうも難し……マスター、真下!!》

 

「ん――――うおわッ!?」

 

真下の死角から凄まじい勢いで伸びあがって来たツタを間一髪で掠めて躱す。

ハクの喚起が無ければ危なかった、だが今の一撃はこちらに気づいた動きだ。

 

《気を付けてください、感づかれました! どんどん来ますよ!!》

 

頭の中の同居人が言う通り、今の一撃を皮切りに次々と地上のツタが俺たちへ迫る。

その先端にはハエトリソウを100倍凶悪にしたようなキバがくっ付いている、噛みつかれれば痛いじゃ済まないぞあれは。 だが……

 

《何してんですかマスター!? 早く避け……》

 

「……なあハク、あの根っこやツタってどこに繋がってると思う?」

 

《えっ? そりゃあ……あの、ちょっと嫌な予感するんですけどまさか》

 

迫りくるキバはおあつらえ向きに大口を開けている。

俺は羽箒を操り、その口の中へと飛び込んだ。

 

《ぎゃあああああああやっぱりィ!!》

 

「ハク、大技行くぞ!!」

 

≪IMPALING BREAK!!≫

 

急加速した箒は一瞬でツタの中へと飛び込み、内部を破壊しながら突き進む。

これがちゃんと生き物の形をしているなら、辿った先に頭があるはずだ。

それにギリギリの所まで近づけばわざわざ抱えてきた「これ」にも意味が出てくる。

 

『ゴギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

体の内側から削られる激痛にまだ見ぬ魔物が断末魔を上げる。

身悶えているのかツタはグネグネと蛇行し、内壁に何度も激しく体を打ち付けるがスピードは緩めない。

 

何故なら通り過ぎた道がペンチでねじ切ったかのように潰れて行くからだ、振り返ってちらりと見えたのはハエトリソウの大顎。

痛みに耐えかねて自分のツタごと俺を噛み潰すつもりか、一瞬でもスピードを緩めればお陀仏だな。

 

《マスター、前方注意です!!》

 

ハクの喚起とほぼ同時に、噛み合わさった大顎によって前方の道が断たれる。

捉えきれないなら先んじて潰せと、そこまで焦るとなればさては目的地は近いな?

 

「ハク、ぶち破るぞ!!」

 

《アイアイサー!!》

 

≪BURNING STAKE!!≫

 

高らかな電子音声とともに、羽箒ごと俺の体が炎に包まれる。

大盤振る舞いの合わせ技だ、炎を纏った箒は容易く大アゴごと壁を貫き、外へ飛び出した。

 

『―――ギシャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

壁を突き破ると、目の前には巨大な薔薇の花弁にびっしりと棘を植えつけたような怪物が現れた。

花が頭か、考えてみれば道理だ。 今までどこに隠れていたのやら。

 

すると怪物は花弁を閉じ、その隙間から大量の花粉を吹き出す。

突っ込めば直撃、避ければ周囲のツタの餌食……

 

「って訳にはいかねえよ!!」

 

吹き付けられた花粉目掛け、今まで後生大事に片手に持っていたものを構える。

それは箒に形を変えると、勢いよく噴き出した水が夥しい数の花粉を包み込んだ。

 

『ゴアアアアアアアアアアア!!!?』

 

「商店街に置いてあった水のタンク……クッションドラムっていうんだったか?」

 

《おそらくこの前マスターが壊した消火栓の代わりに仮置きしたものでしょうね、助かりました》

 

箒に変え、プラスチック製の穂先を砕くと圧縮された水が勢いよく噴き出す仕組みに変わる。

花粉対策に持ってきたものだが最後の最後に役立った。

 

「その図体じゃ逃げられないだろ――――決めたよ、お前は火炙りだ!」

 

『ゴアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

向こうも腹を括ったか、ありったけのツタを集めて俺を叩き潰す構えだ。

だがそれよりも早く、燃え尽きかけた箒ごと突っ込んだ蹴りが魔物の頭を蹴り抜いた。

 

『ゴ……ガ……ア、アアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!』

 

(おぞ)ましい断末魔を残し、薔薇の頭が炎に包まれる。

頭を失った事で周囲のツタも途端に勢いを無くし、急速に萎えて塵へと変わっていく。

 

「終わった、か……ケホッ」

 

《やりましたねマスター! ……マスター?》

 

……おかしい、原因の魔物は倒したはずだ。

ならこの息苦しさは何だ? 何でまだ花粉が……

 

「ゲホッ! ハク、まだ敵は……ガフッ!!」

 

《マスター!? 大丈夫ですかマスター!!》

 

喉が刺すように熱い、口から血が零れる。

なんで、まだ、毒、が……

 

『…………キヒッ!』

 

―――遠のく意識の中、倒したはずの魔物の声が聞こえた気がした。

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