俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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蛇蝎の如く ⑧

「3分だ! 私はたった今、あと3分で自爆する時限爆弾と化した!!」

 

「ど、どういうことなのだ!?」

 

全身が薄く発光し始めたバレッタが涙で自らに残された猶予時間を語る。

まさかこんな状況で冗談をいうはずがない、原因は先ほど使用した塔のタロットか。

 

「塔を使うとな、どうあがいても自爆するんだ……以前に試したことがあるから分かる」

 

「そ、それは大丈夫なのか!?」

 

「滅茶苦茶痛いし二度とやりたくないが腹は括った! これで次のカードが……おわぁー!?」

 

どうやら怪物も悠長にこちらのおしゃべりを待ってはくれないようだ、アスファルトを削りながら飛来する爪撃を互いに横へ飛んで躱す。

そしてもたもたやっている間にも熱線の収束はいよいよ臨界を迎えそうだ。

 

「あ、あのビームを打たれたらどこへ逃げようとお陀仏だろ! だったら私が止めてやる!」

 

「あ、ありがたいが……3分だぞ、倒せるのか?」

 

分かんない(わぎゃんない)!!」

 

「そうだともなぁ!」

 

時間はない、こうやって話す間にも時間は刻一刻と過ぎていく。

熱線と自爆、2つのタイムリミットがある以上は悠長な事はしていられない。 こちらから仕掛けて行かないと全てが終わる。

 

「バレッタよ、火球が飛んで来たら先ほどのように撃ち……っ」

 

背中の痛みに意識が霞む、気を抜いたらそのまま倒れてしまいそうだ。

いけない、血を流しすぎたかもしれない。 ペンを持つ手も震えていつものペースで文字が刻めない。

 

「シルヴァ、前は私が張る! さっきのなんかピカっとするやつとか煙出る奴とかで援護してほしい!」

 

「む、無茶だけはするな……!」

 

「私も本当はしたくない!」

 

歯がゆい、彼女に無理をさせてしまう自分の力のなさが。

だが悔いるのは今じゃない、いつもより執筆に時間がかかるならより早い段階で先を読んだ術式の構成が必要だ。

考えろ、読み解け、あの怪物を詰めるために必要な一手を――――

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「う、ぐぐぐぅ……!」

 

我ながら情けないうめき声が押し殺し、込み上げてくる恐怖を腹の底へ押しとどめる。

2mを超えるほどの巨体、巨大なヘビに狂暴な手足がくっついたようなその姿はシルエットだけ見ればおとぎ話に出てくるドラゴンのようにも見える。

だが実物はキメラめいた化け物だ、無理矢理縫い付けたような違和感のある手足に、大きく裂けた口からはエイリアンのような鋭い牙が乱雑に生えている。

滴る唾液が落ちる度にアスファルトが溶けていく、あれも毒か。

 

「……せ、選択間違えたかな……?」

 

あの怪物に今から突っ込もうとしている私は自殺志願者なのだろうか。 否、私が逃げ出せばシルヴァは間違いなく死ぬ。

臆病者の自覚はあるんだ、死にそうな人間を放りだして逃げ出すほどの度胸なんてない。

 

『グルオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

「うるさいバカ!! お前の叫び声は聞き飽きたんだよォ!!」

 

デッキから引き抜いたカードは「魔術師」のタロット、この土壇場でありがたいカードだ。

効果は私が扱う炎の強化、すぐさま銃にスキャンして火炎弾を乱射する。

 

「おらおらおらおらおらおららぁ!!」

 

節制で魔力の消費が抑えられている分、連射が効く。 そのうえ、魔術師の力によって私が使う炎は強化された状態だ。

この2枚は運が絡むがその中でも成立しやすいコンボでもある。 ……途中で塔さえ挟まなければ完璧だったが。

 

『グオオオオオオオオオオ!!!!』

 

「お、おお!? 効いてる、効いてるか!?」

 

見るからに相手の皮膚は分厚く、チャチな弾では効果が薄かったが魔術師で強化された火炎弾の乱射は流石に無視できないらしい。

今まで狂暴な色しか宿していなかった瞳が痛みに歪む、もしかしたらこのまま押し切れるのでは―――――

 

『―――ガアアアアアアアアアア!!!』

 

「まあ、そうだよなぁ!!」

 

お返しとばかりに飛んで来たのはもはや三度目となる飛ぶ爪撃、身を躍らせて避けるが背後の壁がバターのようにすっぱりと切れる。

……シルヴァが喰らった最初の一撃に比べると鋭さも速度も上がっているのでは?

 

「バレッタ、聞こえるかバレッタ! 今の攻撃が飛んでくる寸前、奴の爪が濃い魔力を帯びる、それを感じ取るのだ!」

 

「分かんないってぇ! 素人なんだぞこちとら!」

 

「ならこちらが指示を出す……と言ってる間に来るぞ!!」

 

「早い早い早い! もっと心の準備がアビャァ!?」

 

避けられたことを学習してか、今度は横一文字に薙ぎ払った形で飛んで来た。

しゃがんだ頭の上を掠めて行ったが、シルヴァの声がなければ回避が間に合わず輪切りにされていたことだろう。 

 

「や、やっぱりあいつ……段々賢くなってないか!?」

 

「向こうも馬鹿ではないという事だ、なにせ3体分の魔物が合体しているらしい。 放置すればどんどん手が付けられなくなるぞ!」

 

「急かすなってぇ、あと2分もないんだぞ!」

 

泣きそうになりながらもデッキから新たなカードを引き抜く、塔を引いた以上はしばらくく外れは出てこない……と思いたい。

新たに引いたカードを確認すると……そこには落雷で崩壊する塔の絵が書かれていた。

 

「な゛ん゛で゛!゛!゛!゛」

 

「バレッタ!? どうしたバレッタ!!?」

 

「な゛ん゛で゛も゛な゛い゛!゛!゛」

 

すぐさま銃にスキャンして次のカードを引く、こうなったら一枚も二枚も一緒だ。

……待てよ、試したことことはないけど2枚重ねたら倍痛いのだろうか。

 

『グオ―――――』

 

「うっさいお前は黙ってろ!!」

 

腕を振り下ろす前に火炎弾を集中砲火してかち上げる、その隙に新たに引き抜いたカードは……塔とは真逆に“当たり”の部類だ。

 

「よし、来た! やっと来た! シルヴァ!!」

 

「な、なんだ!?」

 

「……()()()()()!!」

 

文字通りの切り札を握り締め、怪物へと突貫する。 

カードは揃った、考えていたパターンの中で一番やりたくなかった組み合わせだが仕方ない。

さあてヒーローになるぞ魔法少女バレッタ、気合いを入れ直せ……ここから先は死ぬほど痛くなるぞ。

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