俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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ヴィラン ②

―――ヴィーラの拳が俺の鳩尾を抉る。

身体能力の強化が乗った重い拳撃に胃の中のものがこみ上げるが、危ないところで踏みとどまった。

 

《マスター! こんな局面で口からリバースとかやめてくださいよ絵面的に!》

 

「ヴォエッ……軽口叩く余裕あるってことは余裕だなお前!」

 

「どこ見て喋ってんだよ、お前!!」

 

さきほどの仕返しと言わんばかりの一撃、わざわざ武器を使わず拳でやり返すあたり相当根に持っていると見た。

ただ、それ以前にヴィーラの動きがより一層苛烈になってきた気がする。

魔力はすでに底を尽きかけているはずだ、体力だって無限じゃない。 なのに、ここ一番になって彼女の動きは鋭く、一撃が重い。

 

「なーにやってんデス! 今援護を―――」

 

「させるかよ一人百面相が!!」

 

「ぎゃーすデス!?」

 

片手間で打ち出される土の塊がこちらの連携を阻む。

拒絶の力もどんどん強くなっている、間一髪で避けたようだが始めの時よりも打ち出される質量や速度が桁違いだ。

 

「ヴィーラ、退け! ローレルは俺たちがどうにかする!!」

 

「わっかんないかなぁ、ローレルに会いたきゃ私を倒さなきゃ無理って話してんだよ!!」

 

互いに振り抜いた箒と槌が衝突し――――こちらだけが一方的に弾き飛ばされる。

へし折れて元の石ころに戻る箒、もはやヴィーラが振り回す槌は接触するのも難しい反発力を放っている。

 

《大丈夫ですかマスター! あの子どんどん強くなってませんか!?》

 

「っ……やっぱり、俺の気のせいじゃないよなぁ……!」

 

その力は魔女の領分を大きく超え、魔法少女すら打倒しかねないものになっている。

だが、その力にどうしても胸がざわつく。 俺には消える蝋燭が見せる最期の輝きに見えて仕方ない。

 

「説得は無駄だってわかってんだろ、全力で来いっつってんだよ! ぶん殴って、最後まで立ってたやつがローレルをぶっ飛ばせるんだ!!」

 

「……お前じゃ、ローレルは倒せない」

 

「はっ、そんなボロボロの格好で言われても説得力なんてないし!」

 

ローレルは全ての魔女の命を握っている。 もし、ヴィーラが俺たちを倒してローレルの前に戻ったところで杖を砕かれて終わりだ。

本人だってそれは察しているはず、それでも心の中で譲れない一線があるのだ。

 

「お前のせいじゃない、お前が勧誘しなくても魔女は増えていた……元凶はローレルだよ」

 

「分かったような口を利くな!!」

 

ヴィーラが力任せに振りかぶった大槌を地面に振り下ろす。

拒絶の魔法でまくり上がる大地、そこまでは先程と一緒だ。 だが今度は先程の大波と違い、極一点に力が収束された大地の槍が俺目掛けて伸びてくる。

 

「こんのぉ……成長著しいなぁこんちくしょう!!」

 

「あら~、これはちょっとまずいわねぇ」

 

箒で受け止めるより先に、俺の胴体に巻き付いた釣り糸が俺を引っ張り上げ、槍の射線から外された。

 

「熱くなりすぎよ~? あんなの真っ向から受け止めてばかりじゃお腹に風穴開いちゃうわ」

 

「わ、悪い……喰らってたらまずかったな」

 

槌と箒の応酬で負けたのだ、一点に収束された拒絶の力ならそこら辺の石ころを固めて作った箒程度難なく貫ける。

横から助けが入らなければ今の攻防でやられていたかもしれない。

 

「――――それでや。 ますます手ぇ付けられなくなっとる気ぃするんやけどどうする、あれ?」

 

「……ヴィーラも無理してる、このままじゃ先にあいつの体と心がぶっ壊れちまうよ」

 

「短期決戦の方がお好みか?」

 

俺が無言で頷くと、花子ちゃんは八重歯を見せて笑った。

使う武器が斧に変わった時の彼女はパワー自慢らしい、射程距離は4人の中で一番短いが、唯一ヴィーラの拒絶に対抗できる可能性がある。

 

「確かにウチなら受け止めてみせるで、けど花子の体が持たん。 そう何発も黙って止めてられんわ」

 

「わかった、無理をさせるけど頼む」

 

「へっ、花子も同じ事言うてたわ。 ほんっとにどいつもこいつも自分たちのことなーんも考えてへんな!」

 

《全くですね、聞いてますかマスター?》

 

「ははは耳が痛い話だなぁははは」

 

……ハクは軽口こそ叩いているが、こちらの状況は結構まずい。

ヴィーラの猛攻によるダメージは確実に蓄積している、土砂の濁流から逃れるために使った片手は感覚がない。

今の出力で拒絶の力を十全に使われたら接近すら困難だ、そうなると俺は攻撃手段が限られる。

 

《……マスター、花子ちゃんの魔法って電気+磁力ですよね?》

 

ハクが何かを思いついたのか、口を開く。

今さら過ぎる確認だ、花子ちゃんの魔法については何度も目の前で見て来た。

電気を帯びた彼女の武器は攻撃した相手に磁力を……

 

「…………あ」

 

《あの、提案してしまった私が言うのもアレですけどぉ……止めません? 絶対ろくなことになりませんよ》

 

「なんや、何かいい考えでも浮かんだか?」

 

「良い考え……ではないと思うな、馬鹿のやる事だ」

 

だけど同時にヴィーラの意表を突き、この戦闘を終わらせることができるかもしれない。

ただし花子ちゃんに協力してもらわないといけないし、相当捨て身な作戦になる。

 

「まあ、つまりいつも通りって事だな」

 

《いやだー! 絶対嫌ですからね、まーたマスターがボロボロになるじゃないですか!》

 

背に腹は代えられないし時間もない、ハクには悪いが……この作戦、実行するしかなさそうだ。

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