俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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ヴィラン ⑤

「…………む?」

 

「お?」

 

東京を覆う壁の前、先に街の中へと入って行ったはずの魔法少女2人(銀髪と赤髪)と合流した。

確か名前はシルヴァとオーキス、銀髪の方はその昔、花子の奴がブロマイドやなにやら並べて早口に語っていたことを思い出す。

東北を守る魔法少女の一角らしいが、すでにかなりボロボロな状態だ。

 

「あれぇ、花子ちゃんだっけ……なんでここにいるのかな?」

 

「今はセキだ。 ヘリの底面に張り付いてついて来たんだよ、それよりそっちはどうなってんだ?」

 

オーキスの方は怪我こそ少ないが、シルヴァ以上に血塗れだ。 血液が足りないのだろう、顔からも心なしか血の気を感じない。

それに、2人は薄いカプセルのようなものに覆われた少女を3人担いでいる。

魔女でも魔法少女でもなく、変身を解除したまま気絶してるただの少女達だ。

 

「……街の中で我々を待ち構えていた魔女が居た、その戦闘中に杖が砕けた者たちだ。 今は我の魔術で保護しているが、変身をせねば東京の魔力に蝕まれる」

 

「なるほどな、じゃあ先に行ってるぜ。 そいつらの避難終わったら追いかけて……」

 

2人の間をすり抜け、東京を覆う壁に開けられた入り口を潜ろうとする……が、行く手を巨大なカミソリに遮られた。

 

「待ちなよ、“魔女”一人で突撃とかさせるわけにはいかないからさ」

 

「そのザマでよく言うよなぁ“魔法少女”、まだ大ボスが残ってんだろ?」

 

2人はまさに満身創痍といった有様だ、余力なら自分たちの方が残っている。

たとえ変身が解けた少女3人を避難させたとして、戦えるだけの体力が残っているかは怪しい。

 

「……魔女は魔法少女に劣るよ、君一人で行かせる方が危険だ」

 

「アァン? そいつはケンカ売って……あばばばば、やめろ花子やめ……チクショー!」

 

脳みそがシェイクされるような不快感、遠のく意識。

“入れ替わり”の感覚だが他の3人よりも強い、これは主人格である花子……の……

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「すみませんでしたー! うちのセキさんがご迷惑をおかけしましたー!!」

 

「ああうん、大変だねぇ……」

 

さきほどと打って変わって、眼に眩しい赤から色あせた灰色が地面に頭をこすりつけて土下座する。

変身するとスイッチが入って性格が変わる魔法少女は少なからずいるが、彼女のようなパターンは相当珍しいのではないだろうか。

 

「おい花子! なんでこいつに謝る必要が――――セキさんは黙ってるっす! もー、喧嘩っ早いのはダメって言ったじゃないっすか!」

 

「はたから見てると面白いねぇ、コロコロ変わる」

 

「同意しかねる……花子よ、分かってくれたのなら十分だ。 この先は危険が多い、我らと共に一度引いてはくれぬか」

 

「……そ、それは出来ないっす」

 

「んー?」

 

「ま、待てオーキスよ! カミソリを構えるな、穏便に行こう!」

 

相変わらず土下座の姿勢を見せてはいるが、彼女の主張は意外にもセキと呼ばれた人格と変わっていない。

てっきり気弱な主人格が無理矢理引っ張ってこられたのかと思ったが、人格同士の行き違いではないようだ。

 

「じ、自分は自らの意思でここに来たっす……あ、足手まといにはならないので……!」

 

「……私はあなたの実力を知らないけど、それでも無理だと思うな」

 

「お、オーキス。 言い過ぎでは……」

 

「不確定要素が大きい、実力を確認する時間も惜しい。 だから聞きたい、なんでそこまで執着するの?」

 

ただの魔女なら多少暴力的な手段でも良いから大人しくさせてしまえばいい、だけど目の前の土下座している少女から感じるのは並大抵のものじゃない覚悟だ。

それ相応の理由があるのは分かる、だけど納得するかどうかは別問題だ。

 

「自分の姉が、“錠剤”を飲んで意識不明になったっす」

 

「……花子の姉は始まりの10人だった、経緯は分からぬが自宅で錠剤を使用した形跡があったらしい」

 

「な、なるほどねぇ……そっかぁ」

 

姉、と言われて心臓が跳ねた。

恐る恐る顔を上げた少女の顔つきが、一瞬だけ朱音ちゃんとダブって見える。

ああダメだ、よりにもよってその理由か。 弱った、なんと言われても断る気だったのに。

 

「……そっかぁ、お姉ちゃんを助けに来たのかぁ」

 

「う、うっす……! 駄目っすか……」

 

「駄目、単独行動は認められない」

 

しょぼくれる彼女をしり目に、肩に担いだ要救助者たちをシルヴァに渡す。

3人分となればそれなりにかさばるが、魔法少女の膂力ならば苦にはならない。

 

「ごめんね、シルヴァ。 3人の事をお願い、私はこっちの魔女について行くから」

 

「お、オーキス!? 待て、そのケガでは……」

 

「魔力量ならシルヴァよりも残ってる、何より中の地理は私の方が詳しいから。 この子だけだとまた先行しそうだし」

 

「うぬぬ……これ以上の分断は困る、我もブルームスターと合流するので出入り口で待っていて欲しい」

 

「分かった、それでいいかな?」

 

彼女は無言のまま、千切れんばかりの勢いで首を縦に振る。

たぶんブルームと合流したら怒られるだろうけど、許してほしい。 私には彼女を止める権利がないのだ。

姉妹を思う気持ちは痛いほどに分かってしまう、そしてその思いを糧に暴走させるわけにはいかない。

 

「独断専行は禁止、言うこと聞かないなら首根っこ掴んで引っ張り戻す。 いいね?」

 

「は、はいっす! よろしくっすオーキスさん!」

 

「うん、じゃあよろしくねシルヴァ」

 

「すぐ戻る、勝手にいなくなってくれるなよ!」

 

3人分の身体を抱え、駆けだすシルヴァの背中を見送る。

戦闘音は聞こえない、この子だけが壁まで辿り着いたのは気がかりだが、ブルームスターたちの戦闘も終わっているはずだ。

 

……終わっているはずなのだが、何だか胸騒ぎがする。 何故だろう。

ブルームスターは、本当に無事なのだろうか。

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