俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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魔法少女は許さない ①

「…………あら? 負けたのね、随分と時間を稼いでくれたみたいだけど」

 

胸中に感じる感覚から、ヴィーラたちとの接続が完全に途絶えた事を察する。

完全に砕けてしまったか。 街の中に残る戦力も少ない、魔法少女達の進行を止める事はもはや難しい。

それでも、十分な時間は稼いでもらったか。

 

「ねえ、ラピリス? もうあきらめた方がいいんじゃないかしら」

 

「――――――っ……!」

 

私の目の前にはラピリスがいる。 どこか清廉さを感じさせる彼女の佇まいは、まるでボロ雑巾のように見違えてしまった。

その両手はツタで縛られ、宙に吊り下げられている。 頼みの刀も足元に転がっている。

圧倒的、と自負するわけではない。 ヒヤリとさせられた場面は多々あった、この結果は彼女の優しさが生んだものだ。

 

「酷いわね、ラピリス。 長い付き合いなのに一切容赦がないじゃない」

 

「どの口が、言いますか……!」

 

人を殺せるような視線でラピリスは未だ私を睨みつける。

この状況でもまるで戦意を失っていない、怖い子だ。 一瞬でも拘束を緩めればその瞬間に喉笛に噛みついてくるだろう。

 

「ふふふ、私の首を躊躇いも無く切り落とす気だったけど……できないわよね? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「あ、ブルーム……ぶ、無事だったんだぁ」

 

「なんとかな、そっちも大変だったようだな」

 

「うん、何とかなったけどねぇ……」

 

シルヴァと一緒に東京内部に侵入すると、入り口前でオーキスたちが待機していた。

その姿はシルヴァ同様にボロボロだ、死闘の残滓を思わせる。

そしてもう一人懸念材料だったが、花子ちゃんも大人しく待っていたらしい。

 

「盟友、彼女については……良いのか?」

 

「……色々言いたいことはあるが、ここまで来たら戻れとも言えないな。 ヴィーラとの戦いは花子ちゃんの助けがなかったら厳しかった」

 

助けられたのは事実、危険な目にも合わせたくないが文句が言える立場じゃない。

貴重な戦力になるのはありがたいが……

 

「……だけど、ローレルとは戦わせられない。 君が魔女である以上は杖がいつ砕かれてもおかしくはないんだ」

 

「そ、それは……気合いで耐えるっす!」

 

「気合い根性で何とかなるなら魔物は全滅してるよぉ……私達の補助に回ってくれた方が助かるかなぁ」

 

「む、むぅ……」

 

姉の仇を取りたい、という気持ちは分からないわけではない。 俺だって家族を失った気持ちは知っている。

だけどそれで自分まで倒れてしまっては本末転倒だ、誰も救われない。

 

《マスター、特大のブーメラン頭に刺さってますけど気づいてますか》

 

ええい五月蠅い、心を読むなスットコドッコイ。

 

「……それと、シルヴァがさっき話していた見せたいものって何だ?」

 

「おお、そうであった! オーキス、例のものを」

 

「あぁい、それじゃちょっと離れてねぇ」

 

オーキスがおもむろにカミソリを―振りかぶり、足元を一文字に切り裂く。

彼女の魔法によって切り開かれた異空間、そこから勢い良く飛び出したのは俺たちの身の丈はある巨大な魔石だった。

 

《うわー、すっごい! これ純度もかなり高いですよ、私の人生で1,2を争う品質です!》

 

「そりゃすごいな……こんな代物どこで手に入れたんだ?」

 

「ミズチという魔女がいてな……従えた魔物を合成する力を持っていた」

 

「で、その魔物を倒したらこれが出て来たんだぁ。 実質3体分の魔石だからかな、すごいよねぇ」

 

3体分の魔石、それならこの大きさも納得だ。 詳細は俺には分からないが、ハクがこれだけ唸るなら相当な価値があるに違いない。

この魔石と1,2を争うというのは……黒騎士が抱えていた魔石だろう。

 

「……盟友?」

 

「ん? ああ、悪い。 圧倒されてた……ゴルドロスがいたら飛んで喜んでいただろうな」

 

「まあねぇ、けどブルームならもっとうまく使えるよね?」

 

「俺なら、って――――」

 

《ああ、そう言う事ですか。 確かにこの魔石を吸収出来れば魔力リソースはお釣りが来ます!》

 

ハクが膝を叩いた音が頭の中に響く。

そういえば最近は魔石不足でまるで使ってなかったが、ハクに魔石を与えたら魔力の回復剤になる。

最近は魔女との戦闘が多く、魔石が手に入ってもクズ石以外はゴルドロスに渡していたからすっかり忘れていた。

 

「でもお前、これ……いけるか?」

 

魔石のサイズはどう見てもスマホのサイズを超えている、いつものように画面に放り込むわけにもいくまい。

そもそもハクはこの量を消化できるのか心配だ、腹下すんじゃなかろうか。

 

《黒騎士の時はいけたので今度も大丈夫ですよ! ……あの時は無我夢中でどうやって消化したか覚えていませんけど》

 

「つってもどうやって……」

 

「―――――あら、こんな所でのんびりしてていいのかしら?」

 

「っ――――!?」

 

警戒はしていた、俺だけじゃなくオーキスたちにも油断はなかったはずだ。

しかし俺たちの警戒網を抜け、確かに奴はそこへ立っていたのだ。

 

「久しぶりね、魔法少女たち。 あんまり遅いものだから挨拶に来ちゃった」

 

「ローレル!!」

 

箒を構え、肉薄する寸前。 地中から伸びた無数のツタが俺たちの身体を拘束する。

数が多く、一本一本がゴムのようにしなやかだ。 振り解くことができない。

 

「わ、わ、なんすかこれー!?」

 

 

「3人とも無事か!? ハク、焼き切るぞ!」

 

「悪いけど余計な事はさせないわ、あなたたちはこれ以上先に進ませない」

 

ツタは俺たちを拘束したまま、地中に引きずり込もうと伸縮する。

生き埋めか――――? いや、違う。 ツタが伸びる穴を中心に、アスファルトの上にはみるみる亀裂が広がって行く。

 

「まずい……! オーキス、シルヴァ――――!!」

 

「団結されると面倒だから、各個撃破させてもらうわ。 誰もいない地下迷宮を彷徨いなさい」

 

広がり続ける亀裂に大地が悲鳴を上げ―――――その下に隠された巨大な空洞がぽっかりと口を開けて俺たちを飲み込んだ。

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