俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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魔法少女は許さない ②

《――――マスター! 着地!!》

 

「分かってる!!」

 

ツタに引きずり込まれた先は地下の空洞、過去には地下鉄が走っていた名残だ。

地中を穿孔する魔物の手により、今となっては巨大な地下迷宮と化している。

なんて、のんきな事を考えている間にも地面は目前だ。 ツタはこのまま俺たちを叩きつけるつもりらしい。

 

「チィッ……!!」

 

≪――――BURNING STAKE!!≫

 

ギリギリのところでツタを焼き切り、無理矢理受け身を取りながら着地する。

着地の衝撃で手足がしびれるが、大事には至っていない。 なんとか五体満足の状態だ。

 

「皆、いるか!? 返事してくれ!」

 

《……駄目みたいです、どうやら我々バラバラになったみたいです》

 

周囲の暗闇に呼びかけるが、返事は一向に帰ってこない。 ツタに引きずり込まれた時に分断されたようだ。

全員自衛するだけの力はある、ツタの拘束も十分対処できるはずだが……不安だ。

 

「クソッ……!」

 

魔力由来の代物か、足元には薄っすらと発光する植物が自生しているお蔭で何とか視界は生きている。

俺たちが今立っているのは薄暗い洞窟のような場所だ、落下してきた頭上の穴は遠い。

 

「……ハク、どれだけ落ちたかわかるか?」

 

《分かりません、それに結構散り散りになってますよぉ。 周囲から魔法少女の反応が見つかりません》

 

魔力の探知についてはハク任せになってしまう、それもただでさえ魔力が濃い東京の中じゃ精度がガタ落ちだ。

すでにこの地下はローレルの手中にあると見て良い、出来るだけ早く3人と合流したいが気ばかり焦る。

 

「ハク、とりあえず現在位置だけ記録してくれ。 出来るか?」

 

《それぐらいでしたら可能です、探しに行くつもりですか?》

 

「ああ、各個撃破が一番怖い。 植物を生やすのがローレルの戦い方ならこの地下は奴の独壇場だ、後手に回ると取り返しがつかなくなる」

 

《そうですか、そうですよねぇ……ところでマスター、周りを改めてごらんください》

 

「うん?」

 

ハクに促され、周囲を見渡す。 しかし何も変化はない。

……いや、違う。 何かがおかしい。 俺たちは喋りながらもこの暗い地下を歩いていたはずだ。

だが景色が変わらない、()()()()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ハク、どういう事だと思う?」

 

《そうですねぇ、幻術かあるいは……》

 

もごもごと地面が蠢く。 正確には地面の下にある“なにか”だ。

 

《地面の中の何かが私達と一緒に動いてた、ってところですかね!》

 

ボコリ、とひと際大きくめくれ上がった下からは、木の根をねじり合わせて作った人型のような生き物がはい出してきた。

マンドラゴラ、というやつか。 頭にあたる位置には俺たちの足元を照らしてくれた雑草が生えている。

 

「……おい、これ何体いるんだ?」

 

《あはは、数えるのも嫌になるくらいですかね!》

 

『――――キイイイイエアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

喉が裂けんばかりの絶叫を絞りながら、マンドラゴラの軍勢が一斉に襲い掛かって来た。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「わあああああああああああ!!?!?」

 

地下へ、地下へと引きずり込まれる。

東京の直下にこんな空間が広がっていたのか、なんて驚いている余裕もない。

魔力を帯びた東京の地質は通常の者とは違う、このまま地面に直撃したら魔法少女でも死ぬのだろうか?

 

「こ、こんな所で死ねるかぁ!! セキさん!!」

 

『おう、任せらぁ!!』

 

意識を闇に手放し、身体の操作権を同居人へと託す。

瞬間、彼女は杖から電撃をほとばしらせ、身体を拘束するツタを焼き切った。

 

「―――チッ、落ちるぞ! 代われ!」

 

『はいは~い、私の出番よねぇ』

 

そしてすぐにソウさんと交代する、今度は釣り竿に姿を変えた杖が、遠くの壁面に向けて糸を伸ばす。

壁面に突き刺さった釣り針が、私達の体重を支えて何とか落下は食い止めた。 

 

「はぁ、危なかったぁ~。 皆大丈夫?」

 

『『『『なんとかぁ……』』』』

 

同じ体を共有しているから当たり前だが、それでも全員の無事を確かめてしまうのは人の性か。

恐る恐る下を見下ろすと、底のない闇が広がっている。 随分引きずり込まれた気がするがまだ底が見えないか。

 

『そ、ソウさーん……このまま降りられるっすか?』

 

「うーん、頑張って糸を伸ばして降下してみるけど……長さが足りるかしら~?」

 

『足りなかったら……どうするんデス?』

 

「決死のダイブ?」

 

一瞬、地下空洞に沈黙が響いた。 ぞっとしない話である。

 

「まあ手は尽くしてみるから~……あら?」

 

『なんや、どないした……うおっ!?』

 

ふと、ソウさんが見上げた頭上から何かが落下し、私達の脇を過ぎ去って行った。

一瞬だからはっきりと見えなかったが、あの大きさと煌めきは覚えがある。

 

「あれ……さっきの魔石かしら?」

 

『あーあー、一緒に堕ちて来たのか。 やべーな、落っこちたら割れるんじゃねえかアレ?』

 

『や、ヤバいじゃないっすか! あれをブルーム師匠に渡さないと駄目なんすよね!?』

 

『あ、こら待ちぃや花子! 揺らしちゃあか……あぁー!?』

 

「あらあら~?」

 

魔石の落下に動揺し、体が大きく揺れた瞬間、釣り針が岩肌から離れた。

私達は他の魔法少女と違い、空を飛ぶ手段がない。 つまり……

 

『ああああああああ!!? ごめんっすぅー!!!!』

 

――――私達の身体は底知れぬ闇の中へと落ちて行った。

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