俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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魔法少女は許さない ③

「……なんか縁があるねえ、私達」

 

「うぐうぅ……」

 

突き出た岩肌に衣装が引っかかり、宙ぶらりんとなっていたシルヴァの体を降ろす。

日頃の行いが良かったつもりはないが、皆が分断された地下空洞ですぐに彼女と合流できたのはかなりの幸運だった。

ぱっと見る限り大した負傷も無い、落下の間際で彼女も彼女なりに自衛が出来たらしい。

 

「う、うぅ……オーキス、ここは……?」

 

「東京の地下、あっちこっち穴ボコだらけで酷い迷宮になってるよ。 下手に動き回ると間違いなく迷子だねぇ」

 

黒幕の突然な登場に驚き、不意打ちへの対処が遅れたのは一生の不覚だ。

ツタに絡まれ、引きずり込まれた時にはもう遅い。 ブルーム達も同じく地下に引きずり込まれたのだろうが……

 

「分断されたままは不味いねぇ、早い所合流しよう」

 

「で、でもここは迷宮になっていると……」

 

「ふへへぇ、東京は私たちの庭だからねぇ。 大体の地理は把握してるよ」

 

ローレルと出会った地点から真っ直ぐに落ちてきたわけではないが、それでも大体の現在地は分かる。

今はブルーム達が気がかりだ、出来るだけ早く合流した方がいい。

 

「シルヴァ、魔力の余裕は?」

 

「……正直、それほど残ってはおらぬ」

 

「私もなんだよねぇ、悔しいけどブルームと合流してあの魔石を……魔石?」

 

落ちる直前、ブルームに渡すつもりだった魔石の事を思い出す。

辺りを見渡してもそれらしいものは落ちていない、あれだけの大きさなら道中で見落とすこともないはずだ。

 

「……魔石、見てないよね?」

 

「……我は知らぬぞ?」

 

「あー…………まずいね、ブルーム達のほかに魔石も探さなきゃ」

 

ここに来るまでの戦闘で皆疲弊している、その中で魔力が回復できる見込みがあるのはブルームスターただ1人だ。

彼女は魔石を取り込むことで魔力と体力を回復することができる、あれだけ上質な魔石ならコンディションは万全まで戻るに違いない。

もしこのまま見失いでもしたら、ローレルと戦うだけの余力がそれだけ減るという事だ。

 

「急ごう、シルヴァ。 手遅れになる前に」

 

「う、うむ……しかしだな、オーキス」

 

「んぇ? どしたの」

 

「……あれは、元から()()()()()()なのか?」

 

シルヴァが指を差した先にあるのは草が生い茂る地面があるだけだ、それ以外におかしなものはない。

……草? そういえば、この地下に草木が生えるような光源はあっただろうか。

いや、それ以前に――――何やら動いているような。

 

『――――キイイイイイイイアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

「お、おびゃあああああああ!!?!?」

 

「ああ、本っ当性格悪いなぁローレルの奴……逃げるよぉ」

 

地面から這い出してきたのは根っこをねじり合わせて作った人型の異形だ、それも片手で数えられるような数ではない。

それが地下空洞のあちこちに生える雑草の下から這い出てくる。

個々の実力は分からないが、疲弊した今は斬り捨てる魔力すら惜しい。

 

「お、お、お、オーキス! わ、我ホラーは苦手なのだぁ!」

 

「魔物の戦いなんて全部ホラーだと思うけどなぁ!」

 

「そ、それとこれとはジャンルが違うのだぁー!!」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「………………うっ」

 

『おい、花子! 起きたか!? 大丈夫か!?』

 

「せ、セキさん……ここは……?」

 

全身がちぎれたのかってぐらい痛い、体育の授業で張り切った次の日の筋肉痛が100倍になって襲ってきたような痛みだ。

何が起こったのか、寝ぼけた脳みそで直前の出来事を思い出す。 あれはたしか……

 

「……そうだ、自分……落ちたんすね……」

 

『そうデスよ、まったく肝が冷えたんデスけど!』

 

「あはは、ごめんっす皆……あいっつつつ……」

 

起き上がろうと腕を立てると全身の骨が軋む。

魔法少女なら物理的なダメージは無視できるはずだが……土地に籠る魔力のせいか、地面にたたきつけられた衝撃がしっかりと体にしみこんでいる。

 

「やっぱり……不完全なせいっすかねぇ……」

 

『泣けるでほんまに、骨はイってへんか?』

 

「何とか、全身打撲だけで済んでるっす……そうだ、魔石!」

 

魔石、私が落ちてしまった原因の1つだ。

事情はよく分からないが、あれがブルーム師匠を回復させるカギになるらしい、もし砕けてしまったら大変な事になる。

 

「一緒に落ちてきたはず……こ、この辺りにないっすか!?」

 

『ん~、見てないけど……もしかしたら落ちた衝撃で砕けちゃったのかも?』

 

「そ、それは困るっす! ええい、暗い!」

 

『おう、任せろ』

 

セキさんに体の操作権を譲り、杖から放たれる雷光で当たりを照らす。

どうやらここは洞窟のような場所のようだ、私たちが落ちてきた頭上の穴以外はゴツゴツとした岩肌が周囲を覆っている。

 

『うっへぇ、空が見えねえっす……かなり高い所から墜ちて来たんすね』

 

「登れんのかこれ、まあ後で考えるか……っと、魔石ってあれか?」

 

セキさんが剣先で示した先に見えたのは、稲光を反射して煌めく紫色の魔石だ。

それは落下の衝撃で砕ける事もなく、岩肌に深々と突き刺さっている。

 

「よーし、まだ砕けてねえようだな。 じゃああれ回収して……」

 

「――――あら?」

 

……魔石の確保に向かう足を、誰かの声が止める。

それは、私が一番会いたい相手で――――今だけはもっとも会いたくない声だった。

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