俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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魔法少女は許さない ④

「――――テメェ!!」

 

誰よりも早く駆けだしたのはセキさんだった。

雷電を放出しながら、魔石との間に立ちふさがる黒づくめの女性に肉薄する。

そのままあわやその首筋に突きたてられようとした剣先は――――地中から伸びる無数のツルに絡みとられ、寸での所で制止された。

 

「……あらあら、物騒な子。 魔法少女……にしては見覚えがないわね?」

 

『セキさん! ちょっと、先走り過ぎっす!』

 

「しゃらくせえ、こいつが全部の元凶だ! 魔女なんてもんを作って、花子の姉ちゃんを……!」

 

『いきなり突っ込んで勝てる相手じゃないっす! なんでそんな焦ってるんすか!?』

 

「……うるせえ!」

 

電圧で無理やりツルを引きちぎり、セキさんが剣を振り抜く。

ローレルの喉元に届いたその切っ先は――――あまりにもあっけなく、彼女の首を撥ね飛ばした。

 

『…………デェス!?』

 

『おま、花子になんて前科背負わせる気や!?』

 

「い、いやちが……躱されるもんかと!」

 

『……まった、何か様子がおかしいんじゃないかしら~?』

 

「はぁ、まったく……随分な挨拶ね」

 

綺麗な弧を描き、洞窟の壁面にぶつかって落ちた生首が口を開く。

この断面からは夥しいほどの鮮血が溢れ……て、いない。 恐る恐る観察した首の断面に人間らしい肉質はなく、樹木の年輪のようなものが見えるだけだ。

 

「―――――テメェ、人間か? それとも魔物か?」

 

「いきなり斬りかかって化け物扱い? 酷いわね……ああ、なるほど。 何か様子がおかしいと思ったら、あなた魔女だったのね?」

 

頭を失ったローレルの胴体は、自らの死に気付いていないかの如く依然としてそこに立っている。

いや、気づいていないのではなく本当に死んでいないのだ。 剣を構えたまま動けないでいる私達の横を通り抜け、地面に転がった自らの頭を拾い上げる。

あまりにも非現実的なその光景を前に、隙だらけな彼女のふるまいをただ見ていることしかできなかった。

 

「驚いた、まだこの地に動けるだけの魔女がいたなんて。 あらかた吸い尽くしたと思ったのに」

 

「あぁ? テメェそりゃどういう……っと、わっ! おまっ、花子待っ……!」

 

「――――ごめんっす、セキさん。 それとローレル、あんたには色々聞きたい事があるっす」

 

一度セキさんから体の操縦権を取り返し、ローレルと対峙する。

拾い上げた頭部を断面に押し付けた彼女は、ぴったりと首が繋がっている。

私達を地下に引きずり込んだツルといい……今の彼女は人間の領域を超えている。

 

「……? ああ、多重人格? 魔法の形成に合わせて人格が……心象衣装も変わるなんてかなり稀有……」

 

「そんな事はどうでもいいっす、あんたが全ての元凶だというのなら今すぐこの騒ぎを終わらせろ!」

 

「ああ、ごめんなさい。 研究者気質なもので、ついつい興味深いものを見るとね……それで、魔法少女事変を終わらせる? もちろん良いわよ」

 

「嫌だってなら力づくで……はえ?」

 

予想していたものと真逆な答えに変な声が出てしまった。

サングラスの奥に隠れて表情は読めないが、ローレルは敵意を微塵も見せずににっこりと笑いながらこちらを見つめ返すだけだ。

 

『――――花子、騙されたら駄目よ~? あの女、私と同じ匂いを感じる』

 

『つまり最低のろくでなしやな、絶対耳傾けたらあかんで。 ろくなことにならん』

 

『射殺も止むなしデス』

 

『花子、代われ。 オレが斬る!』

 

『皆は私に対する思いやりはないのかしら~……』

 

「…………今の話は本当っすか?」

 

携帯電話()を握る腕に力が籠る。 私の人格では杖に電気を纏わせ、変形させるだけの強い闘争心を燃やすことは出来ない。

中途半端なのだ、だからこそ4人の人格(ともだち)を作って逃げ出した。 

だけど、今ローレルと対峙するのは自分でなければいけないと何かが背中を押す。

 

「ええ、私だって趣味でこんなことをやっている訳ではないもの。 ()()()()()()()()このトンチキ騒ぎもお終いにするわ」

 

「……あんた、何なんすか。 ここまでして、いろんな人を傷つけてまで成し遂げたいあんたの望みってなんなんすか!! あんたは一体何様なんだ!?」

 

「理由を話せば同情して許してくれるとでも? そんなわけないわよね、何を語ろうとも決別は変わりないでしょう?」

 

「確かにお姉ちゃんをあんな目に合わせたあんたは許せないっす! けど自分は納得がしたい、あんたにもそれなりの理由があったなら……」

 

「嘘ね、視線が揺れた。 時間稼ぎのつもりかしら? ふふ、こんな状況でも強かなのね」

 

「…………っ」

 

ローレルの言葉は的を射ている。 戦力的に劣る自分が気を引き、魔法少女達と合流できるなら御の字だ。

それに何より、今は私に注意を引いてもらった方がやりやすい。 ローレルの背後にはあの巨大な魔石が聳え立っているのだ。

あの魔石がローレルの手に渡った場合、ブルーム師匠たちに不利益が生じる。 私が、私が何とかしなければ。

 

「……けど、いいのかしら? あなたはこの騒動が終わると困るんじゃない?」

 

『花子、耳を貸す必要はねえぞ』

 

「……どういう意味っすか」

 

『おい、花子』

 

「どういう意味も何も……ああ、まだ分かっていないのかしら? 居るのでしょう、他の人格が」 

 

『―――――花子!!』

 

「もし魔女でなくなってしまえば――――その人格も丸ごと全部消えてなくなるわけだけど、本当にいいのかしら?」

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