俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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鬼さんこちら ④

なぜ、自分だけが魔女でありながらローレルの魔力徴収から逃れる事が出来たのか。

なぜ、非変身時から私は魔法の産物であるセキさんたちと会話できたのか。

なぜ、他の魔女に比べて自分には4人分もの魔法を持っているのか。

その答えはとっくの昔に察していた。 分かっていたはずなんだ。

 

「花子、お前は魔女なんかじゃねえ。 ()()()()()()()()()()()!」

 

自分がただ、その事実から目を背けていた。

 

「…………か」

 

「か? なんだ、蚊がどうした?」

 

「……解釈違いっすー!!!」

 

「あぁん!?」

 

私の肩をゆするセキさんを引き剥がし、距離を取る。

私が魔法少女なんて考えただけでも血の気が引く話だ。

 

「だめだめだめ、魔女でも精いっぱいなのに自分が魔法少女なんて……他の魔法少女やお姉ちゃんと同じ舞台になんて立てないっす!」

 

「花子、お前……」

 

「私は、()()()()()()()()()()()()()()()()……!」

 

「……そうか、やっぱりか。 それがお前がここから出られない原因だよ」

 

周囲の空間がより一層狭まったような感覚に息苦しさを覚える。

辺りに展開されていたセピア色の記憶は更に色褪せ、ボロボロと風化し、空っぽの空間に自分とセキさんだけを置き去りにした。

 

「花子、ここはお前の精神世界ってのは間違ってねえと思う。 今お前は「魔女」と「魔法少女」の境目で揺れてんだ」

 

「ま、魔女と魔法少女の間……?」

 

「魔法の源は心の中身って話だろ、お前は今魔女と魔法少女のどっちでもあるから心の中がバグってんだ」

 

「そ、そんな無茶苦茶な」

 

「おう、全部オレの勘だ。 信用できねえか?」

 

根拠も何もない、といっそすがすがしいほどまでにセキさんが言い切る。

だが信用できないわけじゃない、セキさんはいつもこうだ。 証拠も何もないのに自分の感覚だけを信じて進んで、間違ったって自分の選んだ道を後悔しない。

そんな彼女に、彼女達に憧れたんだ。 だから私が進む道のりの先導として頼り続けていた。

 

「花子、お前は姉貴への憧れを汚したくないと思ってる。 自分なんかが姉と同じ魔法少女になって良いのか、そこがずっと気がかりだったんだろ?」

 

「……そ、そうっす。 自分は……魔法少女になって、失敗して……お姉ちゃんの名前に泥を塗るのが怖い」

 

もし私が魔法少女になったなら、“あの始まりの10人の妹”という肩書がついて回る。

自分はその期待に応えられるだろうか? ムリだ、絶対に何処かで取り返しのつかない失敗を晒す。

私だけで済むなら良い、でもお姉ちゃんや周りの人たちにまで迷惑を掛けたくない。

 

こんな臆病者に、魔法少女になる資格なんてあるのだろうか。

 

「お前今、失敗して迷惑をかけるのが怖いとでも考えてんだろ?」

 

「うぐっ……流石っすね」

 

「お前よぉ、魔物と戦う事に比べてそんな怖いか?」

 

「めっちゃ怖いっすよ! 魔物なんかより百倍は怖いっす!!」

 

「うん、やっぱおまえ魔法少女向いてるわ」

 

「何言ってんすかぁセキさん?」

 

そうこう言い争いをしている間にも、周囲の空間は脱色が止まらない。

そろそろ現実世界の方でも限界が近いことが嫌でも察せられる。

 

「チッ、時間がねえな……花子、決断するのはお前だ」

 

「せ、セキさん……自分は、どうしたらいいすか?」

 

「駄目だ、これだけはお前が決めろ」

 

「そんな……」

 

取り付く島もなく、セキさんは固く腕を組んだまま自分の事を見下ろすばかりだ。

この期に及んで魔法少女になりたくない、なんて言うのは自分の我が儘なんて事は分かっている。

だけど自信が沸かないのだ。 自分が魔法少女になれるという明確なイメージが。

 

「できるわけがない」と自分を嗤う自分がいる。 そしてその嘲笑に納得してしまう自分もいる。

いくらこの精神世界が自分自身を追い込んでも、不可能という3文字が脳裏にこびりついて離れない。

ふと、助けを求めてセキさんの方を見上げる……が、彼女の姿がサラサラと砂のようにほどけていることに気付く。

 

「せ、セキさん!?」

 

「ん? ああ、流石にヤバいな。 どうやら先にお迎えが来ちまった」

 

「そんな、大問題じゃないっすか!?」

 

「へっ、こんぐらいどうって事ねえよ。 さっきよりはマシな顔になったじゃねえか」

 

「言ってる場合じゃないっす! セキさんたちがいなくなったら意味がない!!」

 

あわててセキさんの足元に零れる砂をかき集める。

しかし幾らかき集めても指の隙間から零れ堕ちて、セキさんだったものは一向に固まってくれない。

 

「……花子、一つだけ先に言っておく。 実はお前が魔法少女になったらオレたちがどうなるかは分からねえんだ、オレたちの元はあくまであの錠剤だ」

 

「だったら魔法少女になんてならないっす! 自分は魔女のままで……!」

 

「聞け、お前が魔女止まりで終わるならここでどのみちお別れなんだよ。 見ろ、砂になって崩れちまうまであと何分持つと思う?」

 

「それでも! でも……!」

 

「だがな、お前が魔法少女になれば()()()()()()()()()()()()()()()()()。 ほとんど賭けみたいなもんだがな」

 

セキさんの姿はすでに半分ほどが砂と化している。

燃えるような赤も色あせ、乳白色の砂に紛れて輪郭すらもぼやけている。

 

「花子、お前が自分自身に自信が持てねえってなら()()()()()()()()()()。 また一緒にバカやるためによ」

 

その言葉を最後に、セキさんの身体は完全に砂と化してしまった。

周りの空間にもひびが入り、セキさんだけではなく自分にも残された時間が少ないことをわざわざ教えてくれる。

 

「……そりゃ、ずるいっすよセキさん」

 

砂を一握、掬いあげる。 白く細かいだけの砂にセキさんの面影はない。

ただ、砂の中に埋もれた何か堅いものが指先に触れた。

 

「自分は、自分だけのためには動けないっすよ……けど」

 

砂の中からそれを掴み取る。 

何が埋もれているのかは分からないが、もはや迷う理由もない。

 

「セキさんたちが引っ張ってくれるなら……なんだってやってやるっすよ!!」

 

だから、どうか答えて―――――あの4人とつないで、私だけの杖。

 

「――――――へ、変身!!」

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