俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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朽ちた弾丸 ③

「―――――ローレル!!」

 

怒りを込めて投擲した羽箒はローレルに当たる事も無く霧散した。

思わず拳で殴りかかりたくなる衝動を抑えつけ、余裕ぶった表情でうすら笑いを浮かべるローレルを睨みつける。

 

「ごめんなさいね、今となってはあなたは脅威じゃないの。 だってあなた、私達に通用する技がないでしょう?」

 

「だからシルヴァを狙ったってのかよ……!」

 

「ええ、あなた達もそれを期待してあの子を後ろに引かせていたのよね?」

 

お見通しという訳か、心底腹立たしい。

地中を伝う巨大な根は東京全域を射程に収めているはずだ、偶然シルヴァたちが無事だと考えるのは難しい。

 

《マスター、気をしっかり! 大丈夫ですよ、シルヴァちゃん達もあんなのでやられるはずがないです!》

 

「……ああ、根は脅威だが操ってるのはお前ひとりだろ!!」

 

「そうね、けどあなたに手出しができるかしら」

 

「なめんなよ、シルヴァを脅威に思ってるならお前は無敵って訳じゃない……」

 

炎も箒も通用しない、全てが触れる前に消滅してしまうだけだ。 実態の有無は関係ない。

しかしそれでもローレルは俺を無視し、シルヴァを真っ先に潰そうとしたんだ、何か理由があるはずだ。

ブルームスターになく、シルヴァにあるもの。 別の属性か、特殊な攻撃方法か、いや、それよりもっと単純な……

 

「…………魔力か?」

 

「――――――っ」

一瞬だけ、ローレルの薄ら笑いが崩れた。

疑問が確認に変わった瞬間、羽箒を操って距離を離す。 風を切り裂き、逃げ遅れたマフラーの先端を掠めたのはワイヤーのように細い植物のツルだ。

 

「大当たりってか……! そうか、お前の弱点は純粋な魔力って訳だ!」

 

シルヴァの攻撃は俺の技と違い、物理的(じょうしきてき)なダメージを与える事は殆どない。 攻勢に回った時には、込めた魔力をそのまま放出してぶつけることが殆どだ。

ローレルがこちらの攻撃を消滅させる原理はよく分からないが、おそらく魔力そのものに近い攻撃なら通ると向こうも知っているうえでシルヴァを潰しに来た。

 

「それが分かったところでどうにかなるとでも――――!?」

 

突如ローレルの身体ががくりと崩れる。 いや、正確にはローレルの身体が映えた土台ごとだ。

繭そのものが大きく体制を崩し、巻き込まれたローレルが大きく狙いを外した種子の弾丸を明後日の方向にすっ飛ばした。

 

「オーキス、やってくれたか!」

 

繭を支えるスカイツリーの足元には、上空からでも目視できるほどの巨大な裂け目が作られている。

物理的にはあり得ない、CGのような切り口はオーキスの魔法によるものだ。 俺たちが気を引いている間に作り上げてくれたのか。

何はどうあれこの好機を逃す手はない。

 

「ハク、いけるか!?」

 

《イチかバチか手打ちで修正しながら起動しますよ! 無理だと思ったら片足消える前に引っ込めてくださいね!》

 

≪BBBBBBURNING STAKE!!≫

 

不安の残る起動音を鳴らし、いつもとは違う感覚が左足に灯る。

籠る熱がいつもより()()、ハクが熱量よりも魔力の密度を意識して調整してくれたのだ。

それが果たして通用するかどうかは―――――こちらを憎々しげに睨みつけるローレルの表情が答えだろう。

 

「いい加減にぃ……喰らいやがれッ!!」

 

「本当に生意気ね……あなた達はっ!!」

 

羽箒で一気に距離を詰め、魔力を込めた左足を全力で振り抜く。

あまりにも躊躇いがない攻撃にローレルも面食らったのか、茨を巻き付けた腕で防御するのが精一杯だったようだ。

そう、防御だ。 こちらの攻撃をローレルは防御した―――――左足は消滅することも無く拮抗している。

 

《マスター、なんかおかしいです! 触れる寸前に見えない壁みたいなものに止められてます!》

 

「次から次へとなんだってんだ……!」

 

ハクの言う通り、こちらの攻撃とローレルの間には数cmほどの隙間があり、幾ら力を込めても埋める事が出来ない。

当たっていないわけではない、拮抗している手ごたえはある。 だとすればこの見えない何かが消滅の鍵を握っているのか?

 

「邪魔を、するな……! あなた達がいなければ、私はまたあの子に会える……!!」

 

「いいや、止める! あんたの願いには犠牲が多すぎる!!」

 

『――――アギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

《うびゃっ、うるさっ!?》

 

今まで大人しかった繭が、再びの絶叫と共にその巨大な腕を振るう。

何でもないただの一振りだがとても抗える膂力じゃない、ローレルと拮抗していた俺たちはあっけなく振り払われてしまった。

 

「クソ、もう一回……!」

 

《駄目ですマスター、今のでだいぶ魔力が……!》

 

足元の羽箒がふらつき、高度が下がる。 残された魔力は残り少ない。

それでもまだだ、まだ戦える魔力が残っている。 絞り尽くしてでもローレルに叩きこまなければならない。

最悪、黒衣を使ってでも……!

 

「……ええ、正直今のは肝が冷えたわ。 けどやっぱり私たちの勝ちよ、ブルームスター」

 

『ギイイイイイィイイイイイィィイイイイイィイイイィィィィィ―――――――』

 

絶叫の中でも不思議とローレルの声は耳に届く、こちらの魔力量を察しての言葉か。

耳をつんざくほどの繭の絶叫は、その勝利宣言に合わせたように次第に甲高い、金属音のようなものへと変わっていく。

 

「だってもう、()()()()()()()()

 

「――――――あ?」

 

不意に、左足に燃えるような痛みが走り、箒から足を踏み外す。

慌てて踏ん張ろうと舵を切ろうとしたところで気づく――――()()()()()

壊れた蛇口のように血を吹き出す膝から下にあるはずの足は、はるか下方の地上へと落ちていく最中だった。

 

『――――イイイィィィィイィィン……』

 

金属音の様な絶叫が遠く耳に響く。 

金属音と、斬撃――――それはまるで、()()()()()()()()()()()―――――

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