俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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蒼炎燃ゆる ①

分かっていた、彼女なら必ず戻ってくることなんて。

それでも逃げてほしかったんだ、私の事など構わずに生き延びてほしかった。

 

「ぶ、ブルーム……」

 

「悪い、少し寝てた。 ここから先は引き継いだ」

 

血が足りないのかその足取りはふらついている、状態で言えば私より確実に悪い。

なにせブルームは先程まで大怪我をしていたはずだ、だって足が――――……?

 

……足が、なんだ。 頭にもやがかかったように思い出せない。

確かにブルームは大怪我をしていた、はずだ。 いや、していただろうか?

ケガを負っていたのは確かだ。 だから、きっと、たぶん……

 

「……オーキス、動けるか?」

 

「へっ……? あ、うん……?」

 

「その様子じゃ戦闘は無理だろ、安全な距離まで下がってくれ。 後ろにはシルヴァたちも待ってる」

 

「わ、分かったけど……ブルームは?」

 

「俺はあいつを止めるさ、今ならできる」

 

虚勢や慢心という訳でもない、ブルームの言葉には確かな自信があった。

心も体もすでにボロボロで、ローレルはすでに何度も煮え湯を飲まされてきた相手のはずだ。

 

「……本当に任せていいの?」

 

「ああ、信じろ。 速く離れないと巻き込んじまう」

 

ブルームには何か考えがあるらしい、シルヴァたちもこの場にいないのは被害を食わないためか。

この場の魔力にすら耐えられない私では足手まといになるだけ、歯がゆいがブルームの言う通り安全な場所まで逃げるしかない。

 

「ブルーム……死なないでね」

 

「ああ」

 

手を伸ばせば届きそうな距離なのに、ブルームの背中は酷く遠いものに見えてしまう。

ブルームスターという存在が、どこか手の届かない別の存在に変質してしまうような―――――拭いきれない焦燥感だけが、私の掌に残った。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

《Warning!! Warning!! Warning!! Warning―――――》

 

体中を気が狂いそうな熱量がほとばしる、視界の端を揺らめく黒いボロ布は俺が身に纏っている外套だ。

足を戻すだけでもだいぶ使ってしまったが、ローレルを倒すまで果たして俺という存在は燃え残るだろうか。

 

「はぁ……あなた、魔法少女じゃなくてゾンビじゃないかしら? 確かに大怪我させた覚えはあるんだけど、その姿の力かしらね」

 

「流石にだいたい当たりはつけてるか、間接的にならこの姿も記憶できるんだな」

 

「ああ、なるほど。 そのセリフでその黒い衣の能力も確信できたわ……それで、私にどうやって勝つつもり?」

 

巨大な腕から生えたまま、ローレルが嗤う。 見上げたこの距離からでも何となくわかる。

次に打って来る手はどうせまた死角からの不意打ちか、視認不可能な速度で射出される種子の弾丸くらいだろう。

ああそうだ、ローレルだって無敵じゃない。 この実戦経験の少なさは確かな弱点だ。

 

「悪いが、それはもう効かない」

 

地中から伸びた根が、空中から襲い掛かる種が―――――俺の身体に振れる寸前に灼熱の炎に巻かれ、灰と化す。

 

「なに……!?」

 

「こいつの熱波は魔力を伴ってる、お前の消滅の力じゃ消しきれねえよ」

 

とは言っても、それは俺の存在を燃料とする諸刃の剣だ。 あまり長いこと使っていられない。

できることなら1秒でも早くローレルを無力化したい、が……

 

「――――それがどうしたっていうの? その姿に時間制限がある事は分かっている、随分と無茶をしているんじゃないかしら!」

 

『ギイイイイイイイィイィイイィィィ!!!』

 

「チッ、やっぱそうくるよなぁ……!」

 

黒衣の弱点は既にばれている、向こうが逃げの一手に回るとジリ貧だ。

いくらリミッターを外したこの姿が規格外と言えど、誰のサポートも無しに一撃で繭とローレルを倒す手段はない。

おまけに繭からとんでくるのはラピリスの見えない斬撃だ。 とてもじゃないが接近してキツイ一撃をお見舞いしてやろうなんて真似は出来ない。

 

《マスター、遮蔽物に隠れ……られないか! 全部消し飛んでますねー!!》

 

「見えないけど喰らった感覚で分かる、勘で迎撃するぞ!!」

 

見えない斬撃は防御可能ということはオーキスが教えてくれた、魔法が発生するタイミングで射線上に異物を置けば攻撃は阻害できる。

問題は遮蔽物の強度だが、それも黒箒ならクリアできる。 攻撃を防ぐタイミングは完全に俺の勘だが。

 

《うひー! この弾幕じゃ近づきようがないですよ!?》

 

「にゃろう、燃費のいい技じゃないってのにバカスカ撃ってくれる……!」

 

『ギイイィィィン!!!』

 

金属質な金切り声は鳴りやまない、無尽蔵とも思える刃の雨を箒で防ぎ続けるのも限度はある。

だがチャンスはあるはず、必ずどこかで斬撃にも切れ目が生まれるはずだ。

 

「ローレル! ひとつ聞きたい、お前はあの地下で俺に何を聞こうとした!?」

 

「もはやどうでもいいことよ、戯言に付き合う暇はない! 賢者の石はあなた達を殺してじっくり作らせてもらう!」

 

「お前は良くてもこちらはよくねえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「…………!!」

 

ローレルの動揺が斬撃の嵐に僅かな隙を生み出した。

やはり仮説はあっていた、俺もローレルもやっていることは変わらない。 奴の魔法も“触れたものを別の何かに変換する魔法”なのだ。

ブルームスターの場合は「箒」という形で出力されるものが、ローレルと繭の場合は目に見えないだけ。 その正体は――――

 

「――――魔力だ、お前は触れたものすべてを魔力に変換している。 だからこそオーキスさえ耐えられない濃密な魔力が発生した」

 

その事実が何を意味するのかは分からない、だがローレルとブルームスターの魔法は同質だ。

つまり――――()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「その魔力、今度は俺が使わせてもらうぞ――――!」

 

胸元から取り出したのは……ラピリスから預けられた深紅に輝くペンダントだ。

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