俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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蒼炎燃ゆる ⑤

「……悪いな、ハク。 こんなことにつき合わせちまって」

 

《なーに言ってんですか、今さら過ぎますよ。 それに嫌ならとっくに逃げ出してます》

 

「そっか、ありがとな」

 

《んっ》

 

怒りに顔を歪ませるローレルの脇をすり抜け、繭の中に落ちるまでの数秒。

ハクと交わしたのは短い言葉だったが、それでも相棒の信頼を感じるには十分な言葉だ。

この選択に後悔はない、それはここまでついて来てくれたハクもおなじだったんだ。

 

「さーて、あとは中で暴れるだけの余力が残っているかな……」

 

《その前に私たち魔力にされて消滅しちゃうかもしれませんよ、その場合はどうします?》

 

「そうだな……まあ、その時はその時でまた何か考えるよ」

 

繭の中に身を落とし、俺たちが暗闇の中で触れたのは生暖かい液体。

羊水のような温もりが肌の輪郭をぼやかしていく、それはまるで水の中に溶けていくような感覚だった。

 

『―――――やっと会えたね、お兄ちゃん』

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

何かが着水したのか、重い水音と水中が揺れる感覚に鈍りかけていた感覚が起こされる。

まさか飛礫が飛び込んだわけでもあるまい、こんな危険地帯に飛び込んでくるような馬鹿は1人しか心当たりがない。

 

「……よう、生きてるようで何よりだ」

 

「お互い様ですよ、何の冗談ですかその格好は」

 

水の中で会話ができる違和感すら忘れ、スマートフォンのライトが照らす僅かな光の中で笑い合う。

ブルームスターの格好は酷い有様だ、白い肌には多種多様な傷が重なり、赤黒いシミが所々ににじんでいる。

よく分からない形状に変化した箒は掌を貫き、鉤のような先端が肉に食い込んで手放そうにも離れないのだろう。

 

ここまで来るまでの苦労は多大なものだったはずだ、それを全てのみ込み、踏み越えて来た彼女の頭上に……私は握りこぶしを振り下ろした。

 

「あいってぇ!? おま、何すんだよラピリス!?」

 

「あんた馬鹿ですか、こんな所までわざわざ飛び込んできて! もし私がすでに死んでいたら無駄な努力ですよ、それに脱出する術はあるんですか!?」

 

「ないよ、ここまでの道だってほとんど賭けだ! だけどお前なら無事だって信じてたんだよ!」

 

「余計なお世話です! あなたまで共倒れになってしまえばただでさえ貴重な戦力が余計に損なわれるだけですよ馬鹿!」

 

「馬鹿と言った奴が馬鹿だよ馬鹿! もとはと言えばお前が先走らなければこんな所まで来なくて済んだんだよ!」

 

「うぐ……しかしですねぇ……!」

 

いくら否定したところで同じ穴の狢、言い争いは平行線だ。

やがて水中での水掛け論にも疲れが見え、互いに肩で息をしながら一度停戦に入る。

 

「はぁ……はぁ……血が足りないってのに頭に昇らせやがって……」

 

「ぜぇ、ぜぇ……あなたこそ、無茶と無謀をはき違えないでくださいよ……あなたまで犠牲になる必要なんてどこにもなかった……」

 

睨みつける視線は鏡のように交錯する、私を睨み返すブルームスターの瞳に宿る光は今なお力強い。

 

「…………その箒、何を素材にしたんですか」

 

「お前のペンダントだよ、かなりのレアケースだが不完全な形で形成されたんだと思う」

 

箒を握るブルームスターの腕は思わず目をそむけたくなるほど痛々しい。

一度だけブルームスターと視界がリンクしたような瞬間があったが、あれは箒と化したペンダントを介したものだったのだろうか。

 

「触れるなよ、今は大人しいが出鱈目に辺りを斬り刻む。 おかげで何とかここまで来たが俺でも制御できない」

 

「なるほど、ならば手立ては一つあるかもしれませんよ」

 

「……詳しく頼む」

 

「魔法少女の杖は心の形、私のペンダントは外付けされたものですが原則は同じです」

 

私のペンダントはドクターの力を借り、貴重な魔石を素材を用いて試験作成された貴重品だ。

結局素材の希少性とピーキーな性能から量産には至らなかったが、仕組みで言えばチェンジャー式の変身媒体と変わらない。

 

「その滅茶苦茶な形状は互いの心象が干渉しているのかもしれません、確証はありませんけどね」

 

「そんなのばっかりだよ、だけど干渉っつってもなぁ」

 

「……ブルームスター、私はあなたを100%信頼できない。 だからその箒はあなたの身体を傷つけてしまうのでしょう」

 

思えば初めて出会った時から喧嘩の絶えない相手だ、表面上協力することはあっても心の底から彼女を信頼できたことが私にあっただろうか。

ブルームスターは悪人ではない、それは分かっている。 だがそれでも隠し事の多い彼女を私は心の底から信用することができていない。

 

こんな傷だらけになってまで、私を助けに来てくれる彼女の事を――――

 

「だから1つだけ約束してください、私にあなたを信頼させてください。 お願いです」

 

「……わかった、なんでも言え」

 

「――――改めて友達になってください、あなたの秘密はその後ゆっくり教えてくれればいい」

 

「…………ああ」

 

溜めの長い返事を得て、彼女の掌にそっと指を絡めて握りしめる。

大丈夫だ。 今は分かり合えなくても、きっとこの先の長い時間の中で私はブルームスターを理解できる。

だから大丈夫だ、私はこの浮気症で隠しごとが大好きな友達を……信頼しよう。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

 

 

 

≪――――第二臨界を突破、“ワイズマン”より承諾≫

 

≪魔法少女名:ラピリスとの接続を確認、固有魔法により接合を完了≫

 

 

≪限定解放―――――()()()()()()()()()()

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