俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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Hack on STAGE ⑥

言わねばならぬ。 私は奴に言わねばならないことがある。

その為にわざわざこんなボロボロの魔法局にまでやって来たのだ、だというのに……

 

「……ブルームスターの奴はどこにいるんだし!!」

 

「いませんよ、彼女は魔法局に所属していませんから」

 

拘束された状態で連行されたのは取り調べ室のような場所だった、使用目的のせいか特別頑丈に作られているようで損害は少ない。

とはいえなぜ自分がこんな所に連れてこられなければならないのか、自分はただあのいけ好かない魔法少女に文句を言いたいだけなのに。

 

「あなたが重要参考人ですからですよ、魔女ヴィーラ。 魔女事件においても、ドクター消失についてもです」

 

「なんであたしが考えてる事分かんだよ……」

 

「顔に出ているんですよ、失礼な態度が透けて見えます」

 

机を挟んだ向かいに座るのは本物の魔法少女……名をラピリス。

こんな状況でも変身を解かないのは身バレ防止のためか、はたまた少しでも妙な動きをした瞬間に斬り捨てるぞという暗黙の脅しか。

 

「そもそもなんで魔法局なんかに協力しなきゃなんないのさ、これでも()魔女のリーダーだし」

 

「そうですか、あなたの部下であるギャラクシオンが破壊した魔法局の被害総額を請求するとなるとこのくらいに……」

 

「ふん、そんな事に屈するとでも……何でも聞いてください」

 

「お早い掌返し感謝します」

 

私は国家権力に屈したわけではない、一瞬見えた電卓に並ぶ0の数に背筋が凍ったが決して屈してはいない。

ただもはや魔女は解体状態にあるのに変な意地を張るのもみっともないと思っただけだ、今日はこれくらいにしておいてやる。

 

「それではまず1つ、例の凍結事件についてはご存じですか?」

 

「あーね、病院(独房)でもニュース流れてたわ。 けどあれはうちら関係ないよ」

 

隔離軟禁中の個室ではTVだけは見放題だ、今朝はどのチャンネルでもニュースキャスターが似たような画面を映して大騒ぎだったのを覚えている。

そのニュースについてわざわざ魔法局まで呼び出して聞くという事は、魔力がらみの事件なのだろう。

 

「そもそもローレルがやられて魔女の錠剤も全部枯れちまったし、魔女はもう二度と生まれないっしょ」

 

「そこまでご存じでしたか、誰かに聞きました?」

 

「いいや、なんとなく。 残ってた繋がりがすっぱり切れたような感覚がさ」

 

ローレルから魔力を徴収され続けていたあの時、魔女とローレルの間には確かに何らかの“繋がり”があった。

多かれ少なかれ魔女は同じような感覚を持っていただろう、それがローレルが倒されると同時にプツリと寸断された。

 

「それで、うちらはいつ解放されんの? 何日も寝てばかりじゃ太るんだけど」

 

「経過観察中です、家に帰されても厳重な監視体制は続くでしょうね」

 

「うっへ、まあ覚悟はしてたけどさ……そんで、親には?」

 

「もちろんあなたたちが起こした事件については伝えてあります。 泣きながら心配していましたよ、ちゃんとご飯は食べているのかとか」

 

「そっか。 ふーん……あたしも随分ワルになったなぁ」

 

この年で親を泣かすとは相当な悪党に違いない。

ああ、それにしても……そうか、あの母親は私の事を泣いて心配してくれたのか。

 

「……魔法少女さんさぁ、今さら両親と仲直りってできると思う?」

 

「可能ですよ、心から申し訳ないと思っているのなら」

 

「そっか……そっかぁ」

 

随分と簡単な事を面倒くさく拗らせ、魔女にまでなってバカみたいなことをした。

監視だろうが処罰だろうが何だって受ける、自分はそれだけのまねをしでかしたのだから。

それでも……今はただ、あれだけ嫌いだったはずの母親にあってちゃんと向かいたいと思う自分がいる。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「……なんかこの姿になるのも久々な気がするな」

 

《日数で言えばそこまで日が空いたわけではないんですけどねー、調子はどうですか?》

 

「ん、悪くない」

 

街から離れた採石場にて、ブルームスターに変身して身体の調子を確かめる。

魔法少女事変で負った怪我は殆ど残っていない、準備運動がてら体を動かしてみるがむしろ調子がいいくらいだ。

 

「で、相変わらずこっちはうんともすんとも言わないわけか」

 

《……本当謎ですよねー、これ》

 

おもむろにスマホの中に移る赤いアイコンをタップしてみるが、相変わらず反応はない。

赤い衣の力、ラピリスの力を織り込んだローレル戦での功労者だが、あれ以来変身に成功することはなかった。

 

「条件があるんだろうな、たぶん大量の魔力と……」

 

《第三者からの協力、ですか》

 

一度目は黒騎士、そして二度目はラピリス。 二度の変身において必ず協力してくれる誰かの影があった。

おそらく赤い衣は強力な分、条件を満たさないと変身できない“枷”がある。 

できるならまた大きな事件が起きる前に確認しておきたいが……

 

《……っと、待ってくださいマスター。 魔力反応があります、上ですね》

 

「ん、了解」

 

雲一つない空を見上げると、忙しなく羽ばたく黒い影が見える。

それは黒と黄色のツートンカラーで構成されたトンボのような魔物だ、目測で2mはある。

 

《でっか! しかも気づかれたようです、真っ直ぐこっちに向かって急降下してきますよ!》

 

「丁度いい、街に向かわせるわけにはいかねえんだ。 ここで食い止める!」

 

《はいはい、油断しちゃ駄目ですからね!》

 

丁度激戦が続いて魔石が枯渇していたところだ、倒して回収させてもらう。

新たに生成した羽箒に飛び乗り、魔法少女ブルームスターは再び空へと飛びあがった。

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