俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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白雪が降るころに ①

「もー! どこ行ったんだヨ、あのドラゴンフライ!」

 

「す、すまぬぅ……我が転ばなければぁ……」

 

「シルヴァーガールはもう少し体力つけようカナ! ……って、あれ? ブルーム?」

 

「お、ゴルドロスにシルヴァ。 お勤めご苦労さん」

 

ちょうどトンボ型の魔物を倒したタイミングで、街の方へ続く茂みの中からゴルドロスたちが現れた。

先にこの魔物を発見してここまで追いかけて来たのだろうか、だが標的は生憎と俺の足元で魔石に還ろうとしている所だ。

 

「悪い、横取りしちまったか?」

 

「いや、手を焼いていたところだから助かったヨ。 怪我は?」

 

「ない、かなりあっさり倒せたからな」

 

真正面から相対して空中戦が始まるかと思いきや、すれ違いざまの蹴り一発で決着がついてしまった。

魔法少女事変を経たせいか、それとも既にゴルドロスたちが大分弱らせてくれたからか、ともかく戦闘時間にしておよそ3秒ほどのあっけない結末だ。

 

「はー、いいネ。 飛べる魔法少女は色々便利だヨ」

 

「使い魔の力を借りればゴルドロスも飛べるではないか」

 

「バンクは運任せだし何より燃費が悪いんだヨ、ブルームたちが羨ましいネ」

 

「こっちだって素材集めが大変なんだぞ」

 

「我もマンネリだと効果が落ちるから毎回新たな詩を考えておるぞ」

 

羽箒の素材となる鳥の羽だって無限に湧いてくるわけじゃない、毎朝毎晩人のいない頃を見計らってコツコツ集めているんだ。

脆いからすぐ砕ける割には消費も激しい、ローレル戦ではとうとうストックも底を尽いたせいで1から集め直しだ。

 

「っと、魔石いるか? それとラピリスは……」

 

「自分の回復用にとっておきなヨ、あとサムライガールは例の事件について調査中だネ」

 

「例の……あの東京近くで起きた奴か、何か分かったのか?」

 

「今のところは何も……我々も魔法少女事変からあまり表立って動けぬのだ」

 

シルヴァがしょんぼりと肩を落とす。

あの事件以来、魔法少女の肩身は狭い。 以前のように街を巡回するだけでもどこからか奇異の視線が寄せられる。

復興途中の魔法局にも常にマスコミの影がちらついている、下手をすれば魔法少女の正体すらバレる危険もある。

 

「ここだけの話、海外からのコンタクトも増えているんだよネ。 こっちも手いっぱいだってのにそっちの対応に神経使っててんやわんやだヨ」

 

「海外から? そりゃなんで……」

 

「魔女のせいだヨ、あれを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……!」

 

「錠剤1つ飲むだけで魔法少女の廉価版が量産できる、現代兵器じゃ傷一つつかない連中がね」

 

魔法少女にその手の()()があることは分かっていた、魔法少女の身元を隠蔽するのもそういった魔の手から守るためだ。

それでも魔女すら利用するとは、考えたくはなかった。

 

「……あー、こんな所で立ち話もあれだしサ。 魔法局来る? まだまだボロいけどお茶ぐらいなら出せるヨ」

 

「いや、俺が魔法局に行ったら余計に騒ぎが増えるだろ……」

 

「いや、むしろブルームスターはノーマークだヨ。 不自然なくらいにサ」

 

「―――――…………」

 

俺とゴルドロスの間に気まずい沈黙が流れる。

東京であれだけ暴れた俺がノーマーク……それは当たり前だ、皆ブルームスターの記憶を忘れているだろうから。

 

「……まあ何があったかは詳しく聞かないヨ、どうせ話してくれないだろうしネ。 ちょっとショックだけどサ」

 

「悪いな……それでもそのうち話すよ」

 

「何年先になるんだろうネ、連絡だけはいつでも通じるようにしてヨ。 ほら、シルヴァーガールももう行くヨ!」

 

「う、うむ……それではな、盟友!」

 

魔物の完全な消滅を見届けてから、ゴルドロスたちが街の方へ帰って行く。

殺風景な採掘場に残されたのはこぶし大の魔石と俺たちだけだ。

 

《気使われちゃいましたね、マスター。 借り一つですよ》

 

「ああ、随分とデカい借りになったなぁ」

 

いつか、あの黒衣の代償について話す時が来るだろうか。

コルトだけではなく、アオたちに俺の正体を含めて……そんな時が来るとしたら。

 

「……全部終わった時、だな」

 

玉虫色の魔石を拾い上げ、懐にしまう。 心なしかいつもより大きい。

少し時間を空けてから街に戻ろう……肌寒い秋風が頬を撫でた。

 

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「オロロロロロrrrrrrr……!!」

 

「お姉、だからあまり近づきすぎると危ないと言った」

 

「な、何のこれしき……クール担当、ツヴァイシスターズの片割れが……へこたれろろrrrr!!!」

 

「大丈夫、お姉はフール担当だから」

 

「言い間違いですわよねぇ、園……? ……それにしても、出鱈目な景色ですわね」

 

目をこすり、改めて目の前の景色を再確認するが、夢幻のように消えてはくれない。

我々の身の丈をはるかに超える巨大な氷柱と、その内部に点々と封じ込められた魔石たち。

東京から広がった凍結現象、その現場の1つに我々ツヴァイシスターズはやってきたわけだが……。

 

「ロウゼキさんから調査を頼まれましたけども……想像以上の魔力密度ですわね」

 

「この距離でもお姉がグロッキー、近づきすぎるのは危険と判断」

 

「園、あなたまさかこの私を警報機(カナリア)に使いました?」

 

数m後方に立つ妹が目を逸らした、私の妹ったら姉妹愛にひびを入れるのが大変お上手で困る。

だが園の言う通り、これ以上の接近は魔法少女でも危険と身体が悲鳴を上げているのは確かだ。

 

「あなたの魔法で接近できません? 私だけではエチケット袋がいくつあっても足りませんわよ」

 

「短時間ならおそらく可能……だけど、私としては原因の追跡を提案」

 

「あー、そちらの方が確実ですわよねぇ」

 

ちらりと後方を振り返る。 東京近辺特有の見渡しがいい更地、その先にはこの地点と同様の巨大な氷柱束が見える。

頭の中にいる近辺の地理情報を元に氷柱の痕跡を辿ると、それらはある一定の方向に延びていることが分かった。

 

「……ロウゼキさんに連絡が必要ですわね、出張許可も含め」

 

「同意する、このご時世で手続きも面倒になる。 早めの申告が必要」

 

「まあ、おそらく許可は下りますわね。 この謎は我々ツヴァイシスターズが解き明かして見せますわ――――さあ、いざ東北へ!!」

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