俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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拝啓、彼方より ⑤

「リロード入るヨ、距離とって!」

 

「はいよ、面舵一杯!」

 

ゴルドロスがリロードする時間を稼ぐため、一度グレムリンたちを引き付けながら距離を取る。

最初に比べて敵の数は大きく減った、あと2回ほど撃ち切れば全滅も見えてくるかもしれない。

 

「ツヴァイ、猶予時間はあとどれぐらいだ!?」

 

『計算上は……あと5分』

 

「5分……5分!?」

 

『現在高度はおよそ2~3000m、揚力を完全に失えば鉄の塊が地上に落ちるのは実に速い』

 

「だったら速攻で片付けないとネ、リロード完了!! あとブルーム、これ!」

 

ゴルドロスに後ろから俺の頭に嵌められたのは防音性のイヤーマフだ、ありがたい。

二度目にして騒音問題の解決された一斉掃射、機体に被害を出さないトリモチ弾が再び多くの小鬼を絡めとる。

 

「ワッハッハ! 入れ食いだヨ、このまま存分に稼ぎ……」

 

《……! マスター、機首下げて!!》

 

「っ! ゴルドロス、口閉じろ!!」

 

反射的にハクの叫びに合わせ、箒の機首を下げて高度を落とす。

そして間髪入れずに俺たちの頭上を掠めた何かが、箒の穂に着弾した。

 

「ぐえっ! ちょっと、どうしたのカナ急に!?」

 

「っ……トリモチだ」

 

「ふぇっ?」

 

重い衝撃を感じた穂には白い粘着物がべったりと張り付いている。

それは今までゴルドロスが撃ち込んでいたトリモチ弾だ、真逆の咆哮に打ち出されたはずの弾が何故か穂に付着している。

 

「暴発……のわけねえよな、ゴルドロス!」

 

「あったり前だヨ、あのグレムリンがなにかしたのサ……!」

 

睨みつけた煙の先、よく見れば旅客機から吹き上がる黒煙の向こうに光る何かが見える。

小鬼たちが抱えているそれは銀色に輝くレフ板のような板切れだった、あれだけの弾幕を撃ち込まれた後だというのに表面には傷一つない。

レフ板の裏に隠れた小鬼たちにもトリモチの欠片すら付着していない……原因はあれか。

 

「「「ゲッゲッゲッ!!」」」

 

「ゴルドロス、確認したいから一発だけ撃ってくれ」

 

「アイアイサー!」

 

ゴルドロスが新たに取り出したライフルに弾丸を1発だけ装填し、トリガーを引く。

腹に響く音を立てて放たれた弾丸は―――――瞬きの間に俺たちの手元に着弾した。

 

「……魔力込めなくてよかったヨ、直撃してたら危なかったネ」

 

『不明なプロセスによる反射装甲、これ以上の弾幕展開は危険』

 

「だけどあんなもんどこから……」

 

あんな便利なものがあるなら初めから使ってくるはずだ。 奴らはこちらの攻撃に順応し、対抗策を用意したはず。

ならば素材はどこから調達してきたのか……考えてみればすぐにわかる。

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『――――理解。 敵の能力は機器の分解(スクラップ)()再構築(ビルド)

 

「それってサー……かなりまずくないカナ?」

 

奴らが旅客機に張り付いていた理由がようやくわかった気がする。

別に旅客機の墜落が奴らの目的じゃない、本当に欲しいのは機体を構成する部品そのものだ。

俺たちの目の前でみるみる機体の表面が引っぺがされ、次々と同じようなレフ板が増産されていく。

 

「……どうなってるのカナ? トリモチがたかが鉄板に跳ね返されるとは思えないんだけどサ」

 

『魔物による正体不明のコーティング処理が施されていると推測、自分達が再構成した品に魔力的異常性を付与できるものと考える』

 

「つまり放置は出来ねえって事だ、距離を詰めるぞ! 時間もない、近距離戦に切り替える!」

 

「OK、こっちも得物を変えるヨ!」

 

トリモチで動きが鈍くなった箒を羽に戻し、新たな羽箒へ乗り換える。

装甲している間にも旅客機は徐々に高度を落とし、小鬼たちはさらなる武器の構築を始めている。

工具もなしにどうやって物を造っているのかは不明だが、長期戦は危険だ。

 

「旅客機に張り付く、振り落とされるなよ!」

 

「No problem! 遠慮はいらないヨ!!」

 

出せる限りの出力で箒を加速させ、飛び掛かって来る小鬼たちを躱しながら旅客機との距離を一気に詰める。

その間にもゴルドロスがどさくさに放り投げた手榴弾が小鬼たちを巻き込みつつ炸裂する、頼みのレフ板も爆発の前では無力だ。

 

『ブルームスター、距離を詰めるのはいいがその先のプランは?』

 

「機体に飛び移って片っ端から蹴散らして後はどうにかする」

 

『……馬鹿げている、墜落に巻き込まれる気?』

 

「俺たちなら何千mから落ちようと死にはしないさ、ギリギリまで出来る限りのことはする!」

 

有言実行、箒を乗り捨てて飛び移った旅客機の有様は散々だった。

既に尾翼は跡形もなく、エンジンも片側が崩壊している。 たとえここからすべての小鬼を駆逐したとしても自力の復帰は不可能だ。

残る手段は空港への軟着陸、しかしその為にはどの道魔物を連れたままではいられない。

 

「足場がまだ崩壊しきってなくて助かったよ、迎撃に集中したいからな」

 

《出力は可能な限り絞りますよ、ハクちゃんタイマーONです!》

 

「ハハン、こっちも誤射の心配がなければ手口も増えるってもんだヨ!」

 

変身のために纏わりついた黒煙が晴れると、旅客機の周囲にはどこを見ても一面に小鬼たちが群れを成している。

黒衣の出力を押さえていられるのは3分間、しかし今回はその制限もあまり気にしなくていいだろう。

 

『―――――墜落まで残り3分』

 

……なにせ制限時間の超過はこちらの敗北を意味しているのだから。

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