俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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拝啓、彼方より ⑧

「…………ハク、残りは……?」

 

《残数0、殲滅完了です……お疲れ様でした》

 

暴風吹き荒れる旅客機のうえで片膝をつき、荒い呼吸を繰り返す。 なんとか魔物たちは倒せたが、こちらの消耗も激しい。

今の一瞬で殲滅できなければ危なかった、すでに魔力も底が見えている。

 

《ちょっとちょっと、まだ気抜かないでくださいよ。 ここ旅客機の上なんですからね》

 

「ああ、分かってるよ……う、ぎぃ……」

 

限界を超えた出力で酷使したレーザー箒を掌から引き剥がす、赤熱した柄が完全に皮膚に焼き付いていた。

ベリベリと嫌な音を立てて剥がれた箒は煙を吹いてその機能を停止している、残念ながら再利用は難しそうだ。

 

「ま、どの道魔物由来の品だし勝手に消えるか……ゴルドロスたちは?」

 

《まだ機内から出てきていません、もう時間もないです……》

 

「……大丈夫さ、ゴルドロスたちを信じよう」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

『客席を積み上げて作られたバリケード、見事な手際、何重か分けられて組み立てられている』

 

「けど今は邪魔カナ! 蹴破るヨ!!」

 

ビジネスクラスに繋がる扉の前に群がるグレムリンを撃ち払い、通路目一杯に積み込まれた客席に蹴りを入れる。

魔力も籠っていないただの座席だ、しかし蹴散らすどころかバリケードは全力の蹴りに対してビクともしない。

 

「いっ…………ったぁ~!!?」

 

『……今気づいたが、このバリケードには魔力のコーティングが施されている』

 

「先に言ってヨ!? でも誰が……」

 

「―――――ちょ、ちょいタンマ! 誰かそこにいる系!? マ!?」

 

思わぬ強度の痛む足を押さえて悶絶していると、バリケードの奥からくぐもった声が聞こえて来た。

声色からしてかなり若い女の子のもの、私達と同じ魔法少女だろうか?

 

『肯定する、救難信号を受けて救援に来た。 魔法少女名ツヴァイ、およびゴルドロスの2名』

 

了解(りょ)! 今開けるから待って!」

 

すると「カチッ」という音が鳴ったと思った瞬間、目の前に広がっていたはずのバリケードが一瞬で消えた。

何が起きたのか理解するよりも早く、扉を開いて現れたのは一人の魔法少女……

 

「……シュコー……シュコー……!」

 

「……う、宇宙飛行士?」

 

ではなく、銀色の宇宙服に身を包んだ誰かが現れた。

魔法少女と呼ぶにはあまりにも無骨なその人物は、ヘルメットを外して大きく息を吐く。

ブシューと音を立てて縮んだ衣服は形と素材を変え、銀色のパーカードレスのような衣装へと姿を変えた。

 

「ま、魔法少女ボイジャー……! マジ感謝っすわぁ、ゴルぴにツヴァっぴ!」

 

『感動を分かち合うのは後、状況の説明を求む。 時間がない』

 

「おけまる! いきなりあのプチ鬼に襲われて機長さんがぴえん超えてぺいんなんだわ! とりま乗客にはこの部屋には集まってもろて……」

 

「よく分かんないけどだいたい分かったヨ! 操縦席は!?」

 

「向こう、だけど魔物(あいつら)が占拠して……」

 

「任せろヨ! ボイジャーはそのまま一般人の護衛を、私たちが行く!」

 

一塊になっておびえた様子の乗客たち、その脇をすり抜けて真っ直ぐ操縦席を目指す。

扉は内側から溶接されているのかビクともしない、吹き飛ばそうにも内部にはデリケートな機械が並んでいるはずだ。

 

『火薬はお勧めできない、ただでさえ耐久力が削られた機体が致命的なダメージを受ける可能性がある』

 

「分かってるヨ! けどどうすれば……!?」

 

「ゴルぴっぴ、退いて! 扉だけならあーしが何とかするし!」

 

手をこまねいていると、横から飛び出したボイジャーが扉に手のひらサイズの四角い機械を押し付ける。

そして機械のスイッチを押下した瞬間、目の前の扉が霞のように消失してしまった。

あけっぴろげになった操縦席の中、驚愕の表情を浮かべるグレムリンたちと目が合った。

 

「ギギィ!?」 「グギィ!!」「ギィギャ……グギャッ!?」

 

「邪魔邪魔、そこを退きなヨ!!」

 

ぬいぐるみから取り回しのいい小型の斧(マスターキー)を取り出し、飛び掛かって来るグレムリンたちを叩き斬る。

奇襲もあってあっけなく片付いた操縦席内はそれでもグレムリンの手により半壊状態、窓から見える外の景色は地表が迫っていた。

 

『コンピュータに接続……未だ生きてる機器を使い、回復措置を試みるが時間稼ぎにしかならない。 墜落はほぼ確定事項』

 

「もっとオブラートに包んでほしいカナ、そこは!」

 

背後のビジネスクラスから悲鳴が聞こえてくる、聞き耳立てていた行儀の悪い乗客がいたらしい。

とにかくツヴァイが自分の宿る端末を装置につなげて時間稼ぎをしている間に、なにか他の手段を模索しないといけない。

 

「ゴルぴ、どう!? いけそう!?」

 

「駄目だヨ! 少しだけ時間は稼げるだけでそれ以上は……」

 

「うえぇ……外の魔物はどうなった!?」

 

『ブルームスターより連絡、“こちらは片付いた”とのこと』

 

「魔物はなし……時間はまだ少しだけ稼げる……なら……」

 

ビジネスクラスで客のパニックを押さえていたボイジャーが何か思案をはじめ、ブツブツと独り言を繰り返す。

その瞳はまだ諦観の感情はない、彼女はこの状況でまだ出来る手立てを探している。

 

「……ゴルぴ、ちょっち手伝って! もう少しだけ時間があるならイチかバチかで試してみるわ!」

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