俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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100億ドルの花束を ⑥

「―――あの頑固おやじの孫が亡くなったのは3回目の実験だヨ」

 

羽箒が結構な高度まで上昇したところで、ゴルドロスが語りはじめた。

 

「3回目……魔法局が実験したってやつか」

 

「ソダネ、前の2回で偶然の事故じゃないって噂立ってサ。 じゃあ検証しようかってアメリカの魔法局がネ」

 

魔物を呼ぶ演奏、確かにそれが真実ならば確認も必要だろう。

ただ、その最中に人死にが出たというのは穏やかではない。

 

「もちろん最初は街から離れた場所で演奏を始めたヨ、周りに被害が出ないようにネ……ただ」

 

「……何が起きたんだ?」

 

「何も起きなかったんだヨ、()()()()()()

 

街から離れた場所での検証、一般人に被害を広げないため当然の措置だ。

しかし、“その場では”何も起きなかったという事は……

 

「演奏が終わって数時間後、街に戻ってから事件は起きたヨ。 魔物が現れたんだ、いつのも比じゃない数でネ」

 

「それこそ旅客機の時みたいにか?」

 

「HAHAHA、どちらが酷かったかは想像にお任せするヨ。 あの時はネ、数は今回ほどじゃなかったけど種類がバラバラだったうえに街中に散らばって出現したんだ。 その時に私も駆り出されたヨ」

 

……数こそ多かったが、局地的に群れていたため一掃できたグレムリンに対し、街という広いフィールドに分散して現れた特性の異なる魔物たち。

確かにどちらも別のベクトルで面倒だ、考えるだけでゲンナリする。

 

「街への被害は0ではなかったヨ、建物や公共機関はもちろん……人だってネ」

 

「爺さんの孫娘はその時に、か」

 

「……狙いすましたかのようにタイミングが悪かったヨ。 魔法局があの爺さんを家まで送ったところだったカナ、丁度そこに魔物が飛んで来たらしいネ」

 

らしい、というのは当事者ではないからか。 

ゴルドロスは別の場所で戦っていたのだろう、その顔は当時を悔やむように眉を歪めている。

 

「乱戦だった。 特に爺さんを襲った魔物の魔法が厄介だったんだヨ、煙を介して相手に幻覚を見せる魔法だったカナ」

 

「それは……キツいな」

 

ただでさえ民間人を守りながらの乱戦だというのに、さらに煙幕と幻覚で敵味方の区別すら曖昧になれば同士討ちも発生しかねない。

……いや、同士討ちが発生してしまったのか。

 

「まだ経験の浅い魔法少女だったヨ、長い緊張状態と幻覚に騙されて……爺さんの孫娘ごと――――」

 

「それが直接の死因に繋がったわけか」

 

当時の状況を考えれば魔法少女を責める事は出来ない、だがそれは第三者だからこその意見だろう。

もしも自分が爺さんの立場だとして、目の前で魔法少女が身内を殺す場面を見てしまったとしたら……到底、許す気にはなれない。

 

「その子は事件の後にすぐ魔法少女を辞めたヨ、今でもトラウマが酷くて薬とメンタルケアが欠かせない。 そして爺さんは今に至るまで指揮棒を振るってないって訳サ」

 

「なるほどな、今回の演奏はその子のための鎮魂歌ってわけか……だけど、なんで日本で行うんだ?」

 

「母親が日本人らしくてサ、その孫も日本生まれなんだよネ。 お墓もこの周辺にあるヨ」

 

そう言ってゴルドロスが真下の景色を指で指し示す。

俺たちの直下にあるのは今回の舞台となるドーム会場だ、そう言えばこの会場も曰くがある場所ではないか。

 

「確かここ、キバテビがライブやってた会場だろ。 ドクターたちとドンパチやった時の破損は直ったのか?」

 

「いいや、舞台だけ補修してあとは応急処置だけだヨ。 また壊れる事になりそうだしサ、お墓も近いし他に候補がなかったんだよネー」

 

「横着だなぁ……」

 

曰くつきの演奏会をするなら曰く付きの舞台って訳か。 

それに客も集める気がないなら補修も最低限で済むから安上がりか、爺さんが知ったらまた怒るだろうな。

 

「そういや、演奏っつっても人員はどうするんだ? 指揮者だけじゃなにもできないだろ」

 

「いやー、“あの伝説のマエストロとキバテビがコラボユニット!”って銘打てばすぐに命知らずな音楽狂が集まってくると思うヨ?」

 

「あぁーなるほど……って待て、今なんて言った?」

 

「えっ? だからキバテビが演奏してくれるって……」

 

「……あの2人またここでライブするのか!?」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「こんにちは!! お久しぶりですね、魔法少女の皆さん!!!」

 

「やっほー、プロデューサーから聞いたよ。 命がけのヤバいライブ開くんだって? 困るよーそんなアガるライブすぐに呼んでくれないとさー!」

 

「お、お久しぶりですね……鬼ケ原さん、赤銅さん」

 

スモーク加工された車から意気揚々と登場し、プロデューサーを引きずって来たのはキバテビの2人だった。

ゴルドロスから助っ人の演奏者がやって来ると聞いていたが……まさかこの2人だったとは。

 

「やあ……魔法少女事変以来かな、お久しぶりだねラピリス君」

 

「ああ、プロデューサーさんもお疲れ様です……その件では大変お世話になりました」

 

キバテビに揃って襟首をつかまれ、引きずられているのは元始まりの10人の一人である赤銅音羽さんだ。

今は引退しているとはいえ、魔法少女事変では東京ギリギリまでブルームたちを連れて来てくれるなど陰の功労者と言って差し支えない。

魔法少女の先輩として頭の上がらない相手だ……そんな彼女が何故2人に引きずられているのだろうか。 

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