俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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100億ドルの花束を ⑦

「ふん!! 赤銅の小娘か、随分と偉くなったものじゃのう!!」

 

「お久しぶりですねマエストロ……しかし、私ももはや小娘という歳ではないのですが……!」

 

「ワシから言わせれば貴様らの年の差など誤差じゃ誤差、まったくどいつもこいつも魔法少女魔法少女と……」

 

「はー……あの2人って知り合いだったんだネ」

 

ブルームとの密談を終え、サムライガールたちの所に戻るとキバテビのプロデューサーが頑固おやじに頭を下げている現場に出くわしてしまった。

かつては始まりの10人だったというのに、過去の威厳は微塵もない。

 

「短い間ではあったようですが、師弟関係だったらしいです。 そのせいで頭が上がらなかったようで」

 

「はぁー、プロデューサーのあんな姿めずらし……くもないか、よくスタッフとか私達に頭下げてるし」

 

「ヤッバ、インスタに上げればいいかなこれ?」

 

「絶対やめておいた方がいいヨ……」

 

スマホを構えるボイジャーをたしなめる、半分は冗談だろうがもう半分は本気で投稿しそうで怖い。

 

「ふん、そっちの2人がお前の秘蔵っ子か。 何が引ける?」

 

「はい!! 得意なのはドラムですが一通りの楽器は演奏できるよう叩き込まれました!!」

 

「私も同じく、ギターが一番だけど弦楽器なら一通りって感じ? あとピアノもいけるかな」

 

「個人の実力は結構、調和が取れんなら論外じゃ。 まずは実力を聴こう、もう魔力とやらも抜けたじゃろ」

 

「おけまる水産あをによしー、おじじ入っても大丈夫っしょ!」

 

先導するボイジャーの後に続き、頑固おやじとキバテビの2人がドームへ入って行った。 

……プロデューサーを残して。

 

「よろしいのですか、2人について行かずに」

 

「なに、2人の腕ならマエストロのお眼鏡にかなうさ。 ……私としては今回のイベントは反対なんだけどね」

 

まつ毛の長い瞳がじろりとこちらに向けられる。

その顔つきはプロデューサー・赤銅音羽ではなく、歴戦の魔法少女としての風格を漂わせている。

 

「マエストロの噂は私も聞いているよ、信じたくないが3度の前例があることは事実だ。 こんな街中で彼に指揮を振らせるのは危険が過ぎる」

 

「周辺住民は事前に偽装情報で避難を促します、魔物出現にはこちらで対処を……」

 

「理由はそれだけじゃないだろう、お金の問題か?」

 

「……流石に鋭いネ、その通りだヨ」

 

魔法少女事変でのローレルによって魔法局は大きな被害を受け、私達の支部は物理的にも半壊している。

魔法局にのしかかった負債は小さいものじゃない、そこであの頑固おやじが出した条件が金銭的な援助だ。

その額は手痛い打撃を受けた魔法局にとってまさに救いの手であり、周りの支部からの声もあって断る事が出来なかった。

 

「その上で後押した周りの支部はその後だんまりか……君達、随分な貧乏くじを引かされてないか?」

 

「まあこっちで監視してないと危なっかしいからネ、知らない相手じゃないし見捨てられないカナ。 急な思い付きって訳でもないだろうしサ」

 

孫娘の三回忌、確かに区切りは良いが、ならば「なぜ今になって突然」という違和感がぬぐえない。

今回の来日にはなにか目的が―――

 

「――――――……」

 

「……? ゴルドロス、どうかs」

 

「―――全員回避だヨ!!」

 

私が叫ぶよりも早く、凄まじい衝撃音と共に上空からへし折れた羽箒とブルームスターが落下してきた。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

《マスター、そろそろみんなと合流しませんかー? いつまでも空飛んでるだけじゃつまんないですよー》

 

「んー、もうちょっとなー」

 

空からの見張りを続けて数時間、あれから小さな魔物の出現すらピタリと止んでしまった。

偶然と考えるには作為的に思える、まるで斥候が無駄と分かったから止めたように。

 

「……ハク、どう思う。 3度目の事件について」

 

《あのおじいちゃんの事ですよね? うーん、魔物に襲われるまでラグがあったのが気になります》

 

「だよな、3度目はまるで効果的なタイミングを誰かが窺っていたみたいだ」

 

ゴルドロスから聞いた話とネットで得られる情報を照らし合わせると、初めの2回に比べて3回目が異質だ。

当時の考察記事もいくらか見つかるが、どれもこれも冗長な解説と広告だけの量産記事で中身がない。

 

「そして()()()……旅客機の襲撃だ。 確証はないがあれも爺さん狙いだと考えている」

 

《では先ほどまでの小型魔物たちは5度目ですか? うーん、毎回襲撃のバリエーションが変わってますね》

 

「それなんだよな、やっぱり原因は爺さんじゃなく―――」

 

―――背中の神経が一気に泡立つような感覚に襲われる。

弾かれたように振り返るがそこには何もない、見渡す限りの空だけだ。

 

《マスター? 何か異常ですか?》

 

「ハク、索敵頼む。 何かがおかしい」

 

《了解です、けど私の目が届く範囲には何も……? なにこれ、魔力反応……速……っ!? マスター避けて!!》

 

「こいつは――――()()()っ!?」

 

「何かが近づいて来る」と知覚する暇もない、そもそも何が飛んで来たのかも分からない。

凄まじい衝撃波を伴って飛んで来た“何か”は、俺たちが乗っていた箒を一撃で粉砕したままはるかかなたの空まで一直線に消えていった。

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