俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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嫉妬の対価 ②

「今戻りましたわー、全員揃っていまして?」

 

「魔法少女各位、着座済みです。 どうぞこちらの席にお座りください」

 

こちらの作戦会議が終わってから数時間、会議室に集まったところで解析作業が終わったツヴァイたちが合流した。

既に席についているのは私、ゴルドロス、ブルームスター、そして局長と音羽さんの5人だ。

 

「まずはそちらの解析結果を教えてください、ブルームスターが受けた攻撃の正体は分かりましたか?」

 

「無論……と言いたいが、現場のデータだけでは確証は得られない。 我々が着弾の瞬間を目視していればもう少し語りようもあった」

 

「うむ、盟友の足を抉った弾丸の形状程度しか導き出せなかった」

 

シルヴァが肩を落としながら、手に持っていた資料をテーブルに広げる。

モノクロで印刷された紙面には、先が鋭く尖った円錐状のオブジェクトと、推測される質量やサイズが記されていた。

 

「ただの弾丸ではなかったと……しかしよく分かりましたね」

 

「傷口が滑らかだったことから逆算は難しくなかった。 幸いな事に傷は綺麗に治ると予測」

 

「そりゃあ良い知らせだな、ありがとよ」

 

親指を立てて見せるツヴァイ(妹)にブルームスターが掌を振って応える。

魔石を利用した本人の治癒特性もあるが、後遺症も残らず綺麗に治るというのは胸をなでおろす情報だ。

 

……こんな心配も、ドクターがいれば要らぬ懸念だったのだが。

 

「それで、この集合についてそろそろ教えてほしいですわね。 何か進展があったのは分かりますけども」

 

「察しが良くて助かるヨ、それじゃこれからの作戦について話し合おうカナ」

 

『モッキュー……』

 

ゴルドロスの号令に合わせて、彼女が抱えたぬいぐるみから眠そうな鳴き声が漏れ出した。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

「……なるほど、目的は分かりましたわ」

 

「個人を狙う魔物……これまでの情報を加味すればあり得ない話ではない」

 

「しかしなぁ、我は気乗りせぬぞ。 ()()()()()()()()使()()()()()()

 

『モッキュイ』

 

全員の視線がゴルドロスが抱えているぬいぐるみ……の腹から飛び出したもきゅ太郎(バンク)へと集まる。

彼女の力の一端である、現在確認されている数少ない「無害な魔物」。 それがこの小さな生き物の正体だ。

いや、正確には完全に無害とは言えまい。 使いようによってはこの子の魔法はいくらでも悪用が叶う。

 

「人との縁を結び付ける魔法、バンクの力を借りれば爺さんを狙う黒幕だっておびき出せるヨ」

 

「逆に言えば、磁石のように引きあう都合上……狙われる本人はどうしても前線に絡んでしまう」

 

もきゅ太郎(バンク)の実力についてはこれまで何度も確認している、今さら疑う余地はない。

懸念はやはり今語られたような危険性と、あとは……

 

「それぇ……私が許可出さないと駄目じゃないかね?」

 

「そうですね。 というわけで局長、この書類にサインをお願いします」

 

バンクの魔法は運命や因果律といった人知を超えたところに及ぶ。

そのため、何度かの実証(私的利用)の末、今回のような作戦運用の際には局長の認可が必要となってしまったのだ。

 

「まあまあまあ。 許可って言ってもサ、このままじゃあの雷親父も一生国に帰れないヨ? そうなると国際問題になる可能性もあるんだよネー」

 

「つまり前門の虎に後門の狼というわけだね……どっちも避けられるルート探してみない?」

 

「局長、時間がありません。 私達は敵の攻撃に対して正体を掴めていない、いつ来るかも分からない第二射に対抗策が持てないんです」

 

胃薬を何粒か飲み下した局長がとても渋い顔を見せる、責任のある立場からすればこの選択は容易く下せるものではない。

もし作戦が失敗して当人が命を落とすことでもあれば、その時こそ魔法局がおしまいになるかもしれない。

 

「……正直な話をしよう、魔法局が取る手段としては愚策が過ぎるのだよ」

 

「本人にも話は通してあります、許可も得ている。 ……最悪の場合、死ぬ覚悟もあると」

 

「それはあってはならない事だね、そして世間は“危険が及ぶ可能性がある”時点で今回の作戦を認めないだろう」

 

「…………」

 

「私の首が飛ぶだけならまだいい、だが君達をかばいきれなくなる。 ……それでもこの手段しかないのかね?」

 

ある、かもしれない。 しかしその手段を模索する時間がどれほど残されているだろう。

次の瞬間にだってこの魔法局に巨大な風穴が空いてしまえば、そうでなくともまた魔物の大群が襲ってきたら?

見えない導火線がいつ爆弾に到達するか、私達には分からない。

 

「……解決策じゃないが、次善の策ならある」

 

そこで、今まで口を開かなかったブルームスターが手を上げて発言した。

 

「ブルームスタークン、何か考えがあるのかね?」

 

「ああ。 爺さんに比べたら縁は弱いが、俺だって件の魔物には因縁擦られたんだ」

 

ブルームスターが抉られた自分の片足を指で指す。

……彼女との付き合いも長いせいか、その先に何を言い出すのかだいたい分かってしまった。

 

「―――爺さんのついでに俺も縁を結べばいい、おびき出した後のヘイトは俺が引き受けるさ」

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