俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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嫉妬の対価 ⑩

 

≪――――第二臨界を突破、“ワイズマン”より略式承諾≫

 

≪魔法少女名:ゴルドロスとの接続を確認、固有魔法により接合を完了≫

 

≪限定解放―――――灼火体へと相乗します≫

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

全身を撃ちつける弾丸の雨に一歩も身動きが取れない。

一発一発にワタシの表皮を貫ける威力はない、しかし圧倒的なのはその物量だ。

逃れる隙間もない、文字通りの「弾幕」がその場にワタシを縫い留める。

 

「う……っ゛……! こ、の……クソガキがァ!!」

 

殺してやる、このガキはワタシから自由を奪いやがった。 

数は多いが所詮はただの銃器に過ぎない、魔力はまとっているがこいつに私は殺せないんだ。

怒りを込めて構えた手首から針を穿つ。 弾幕を貫いてなお勢いの衰えない一撃は、揃い立つ銃器の壁を吹き飛ばしてみせた。

 

「―――どうした、息が上がってんぞ蜂女?」

 

「なァんでお前が生きてんのよ、箒のガキッ!!」

 

ようやく止まった弾幕の向こうから現れたのは、さっきまで黒コゲで虫の息だったはずのガキだ。

先ほどまで血反吐を吐いてのたうち回っていたはずなのに、今は何事もなかったかのように生意気にもワタシを睨みつけている。

ワタシの毒は絶対だ。 仕留めそこなう訳が、ましてや回復するなんて……

 

「ありえない、と思ってる間抜け面だな?」

 

「……クソガキ、一体どういう手品を使ったのかしら……!!」

 

あれほどの機銃を蹴散らされたというのに、焦りの色一つ見せやしない。

ボロボロの黒い外套は綻び一つない軍服へと変わり、灰を被ったような髪の毛は眩しいほどの金に染まっている。

腰に下げているのはサーベルとベルトポーチ、ポーチの中にはジャラジャラと石のようなものが詰まっている。

 

そして、奴の手の中には、私の視界を奪った外国被りの魔法少女が安らかな寝息を立てている。

詳しくは分からないが……()()()()()()

 

「そいつに毒を押し付けたってところかしらァ? 随分と非情な真似をするのね、魔法少女ォ!!」

 

「お前たちほどじゃねえよ」

 

「なに――――ガッ!?」

 

口を開いた途端、後頭部に強い衝撃を受けて視界が揺らぐ。

背後に現れたのは、蹴散らしたはずの銃器だ。 銃口から煙を燻ぶらせているそれは役目を終えたとばかりに重力にしたがい地に落ちる。

私が落とし損ねた? そんなはずはない、ならこの銃は一体どこから現れた?

 

「一度目は無害、だったか? こうなった以上は俺とゴルドロスは一蓮托生だ、お前に二の矢は撃たせない」

 

「っ……調子にィ、乗るなッ!!」

 

私の合図と共に、脆い天井を突き破って外で暴れていた魔物たちが一斉に降り注ぐ。

外の魔法少女たちに随分と減らされたが、それでもまだまだ数の利は圧倒的にこちらが上だ。

多少調子を取り戻したところでこの数に敵うはずが――――

 

「―――なら、これだ」

 

「…………は?」

 

箒女が片手を上げた。 ただそれだけの動作だ、魔力のおこりもなにも感じなかった。

ただそれだけで、空から降ってくる魔物たちの頭部に狂いなくサーベルの刃が突き刺された。

 

――――――――…………

――――……

――…

 

コウモリ、スズメ、トンボ、アブ、ヘビ、オオカミ。 多種多様な魔物の悉くが絶命し、天井の瓦礫と共に降り注ぐ。

死因はすべて頭部に突き刺さったサーベルの刃、死角に忽然と現れたその狂剣を躱す術はなかったはずだ。

数が多くて“出費”は嵩んだが、この数の魔物を討ち取ったならお釣りがくる。

 

「ハク、残りは?」

 

《……残存0、全滅です。 目の前の相手を除いて》

 

「うん、間違いなさそうだ。 俺も何だか鼻が利く、お前を守る護衛は全部消えたぞ」

 

「っ―――!!」

 

一人だけ死角からの奇襲から免れた蜂女が、降り注ぐ瓦礫と魔石の隙間から俺を睨む。

やはりサーベル程度じゃやはりあいつの外皮は貫けない、ローレルの時に使った長刀ならまた別だろうが……

鉛弾も出鱈目に撃ち込んだところで無駄な出費になるだけか。

 

「悪態もガン付けももう飽きたよ、手駒すら失ったらもうネタ切れか?」

 

「お前……まだ分かってないのかしら……! お前はまだ、ワタシの毒からは逃れられないのよッ!!」

 

蜂女が片腕を構える、手首から覗くのは既に装填された針弾の切っ先。

確かに1回分の毒はゴルドロスが肩代わりしてくれたが、完全にやつの影響から逃れた訳じゃない。

俺もゴルドロスもあの針に掠ってしまえば、今度こそ助かるすべはない。

 

「もういちど壁でも張ってみるゥ!? アッハ、今度は纏めてぶち抜いてあげるわ!!」

 

狂ったように蜂女がケタケタと笑いだす、確かに壁は無意味だろう。

音速を超える質量の塊、しかも今度は奴も全力だ。 真っ向から物量の壁を敷いても防げる気がしない。

 

「そうだな、銃じゃ相殺も難しそうだ……なら、これだ」

 

腰に下げたポーチから魔石を無造作に掴み取り、握力で握りつぶす。

粉砕された魔石は宙に溶け、中から溢れるのは純粋な魔力リソースだ。

ゴルドロスと同じく、今の俺が魔法を振るうにはこの魔力が必要となる。

 

そして、別のポーチから取り出したクマのぬいぐるみをその魔力の渦中へと放り投げると―――まるで水を吸ったスポンジのように、()()()()()()()()()()()

 

「はっ? なに、そ……れ……は?」

 

『…………ク゛マ゛ァ゛』

 

瞬く間に見上げるほどの巨体となったクマが、ゆっくりと動き出して蜂女の前へと立ちふさがった。

 

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