俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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再現される達人芸 ⑩

身体が埋もれるほどの丈があっていない分厚いローブ、蓋をするようなつばの広い三角帽を目深にかぶる純白の魔法少女。

盟友だ。 間違えるはずもない、いくら衣装が変わろうとその顔は何度も戦場を共にした盟友だ。

……だが、あの姿は何だ? 今までの形態とは異なる異質な雰囲気を纏っている。

 

「……盟友、なのか?」

 

ただ見ているだけで怖気が止まらない、肌で感じる魔力の質は筆舌に尽くしがたい禍禍しさを纏っている。

見た目は変わらないと分かっていても、確信が欲しかった。 いつものように笑って「そうだよ」と言って欲しかった。

しかし盟友は私の言葉に一瞥もする事もなく、目の前の魔人へ対峙を続ける。

 

「………………」

 

『p@;0+{‘=”%―――――z_____!!!!!』

 

盟友が手をかざす、それだけで魔人の身体が燃えて、爆ぜ、四肢が飛び散る。

一連の流れを観察しても何が起きているのか分からない、そもそも魔法と呼べるだけの魔力の起こりを感じ取れないのだ。

魔人の体が自然に発火しているようにしか思えない、本当にあれは魔法なのか?

 

「め、盟友……我も加勢――――」

 

「………………」

 

二人の戦場に一歩踏み込む、しかしそれ以上足が動かない。

どんよりとした空気が足に絡みついているようで、一歩の歩みが酷く重い。

まるで盟友の周りだけ時間が遅くなっているかのようだ。

 

『{=「@;ー09)#……!!』

 

しかし魔人は自身の魔力で中和しているのか、このどんよりとした空気を跳ね除けて盟友へと迫る。

怒り狂った特攻は我が身も顧みない、むしろ細長い口吻から射出した体液に炎を引火させて射出する。

野球ボール大の火球が数え切れぬほど迫る中、佇む盟友は回避するそぶりも見せていない。

 

「盟友!? 危な……」

 

「解析、脅威に(あた)わず」

 

ぞっとするほどの冷たい声で囁かれた言葉の通り、飛来する火球は盟友に届くことなく失速し、灰と化して霧散する。

氷点下の大気に晒されて舞う灰塵は、ダイヤモンドダストとなって白銀の戦場を彩る。

巨大な複眼と燃え盛る炎に隠れてはいるが、魔人の表情は「絶望」に染まっているように見えた。

 

「解析、再現(リプレイ)

 

盟友の目前に広がる空間が歪んだと思った瞬間、たった今霧散したはずの火球が今度は魔人に向けて放たれる。

それは先程と線対称の軌道を描いて敵を狙う。 魔人もまた体液の弾丸で迎撃するが、反応が遅れただけうち漏らした火球が翅を貫いた。

 

『――――――……!!』

 

「……敵能力の限界を確認、これ以上の学習は無意味。 処理移行」

 

盟友の手元の空間がジッパーのように裂け、その中から水晶で作られた斧のような武器が取り出される。

翅をもがれた魔人を前に悠々と得物を振り回す盟友……いや、ただ振り回しているだけではない。

一回、二回、三回と振り回すうちにみるみると斧が巨大化していく。

 

『―――……――…………―――――z___!!!』

 

無慈悲に叩きつけられた轟音が銀世界を砕く。

鈴の音のような断末魔を最期に、蛾の魔人は振り下ろされた斧の一撃で木っ端みじんに砕け散った。

 

「っ……」

 

魔石すら残さない、その場に残されたのは圧倒的な破壊の痕跡だけ。

砕け散り、風化する肉片と斧のギラギラとした輝きだけが目に焼き付く。

圧倒的だ、桁違いの実力を前に終始魔人は何もできなかった。 盟友が何もさせなかったのだ。

 

「め、盟友……終わったのだろう……もう、魔人は倒された! 街が、凍る……!」

 

敵は既にいない、だが盟友は依然として変身を解除しない。

降りしきる雪はとどまる所を知らず、震えるほどの冷気もまたその勢いを強めている。

このままでは街が魔力で汚染された雪に沈む、そうなればこの一帯は人が生きられない死の土地となってしまう。

 

「……目標を発見。 学習に移る」

 

「盟……友……?」

 

感情を感じられない瞳が私を見つめる、それは次の獲物を見つけた肉食獣の瞳だ。

その瞬間、片足を絡め取っていた空気が私の全身に圧し掛かった。

 

「盟友……盟友! 我が分からぬか!? 我は……私は、盟友の……!」

 

……違う、あれは盟友だが盟友ではない。

あれはなんだ? ()()()()()()()()()

この禍禍しい魔力の核には、一体何が潜んでいる?

 

「……お前は、誰だ?」

 

「……“ワイズマン”」

 

盟友らしき者が手をかざすと同時に、沸騰するような熱が体の内から込み上げ――――

 

「あーあ、やっぱりお兄ちゃんにはまだ制御が難しいか」

 

「――――えっ?」

 

この場にそぐわない気の抜けた声の主が私の肩を叩いた途端、込み上げてくる熱が鳴りを潜める。

私の隣にはいつの間にか、白いワンピースを着た少女が立っていた。

 

「だ、誰……?」

 

「初めまして、でもどうせ忘れるから自己紹介ははぶくね。 約束通り会いに来たよ、お兄ちゃん」

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