俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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賢者の本質 ③

見知らぬはずの映像が、不明瞭な意識の中に蘇る。

水槽のようなものに阻まれた景色、その向こうではクシャクシャの白衣を纏った研究者が忙しなく動き回っている。

 

『計測―――――だか―――? 早く――――滅――――』

 

『この―――――報告――駄目――混乱の―――の――化物――――』

 

張り詰めた空気、白衣の人々が何やら討論を交わしているが、会話の内容は分厚いガラスの阻まれて何も聞こえない。

酷く息苦しい、身動きが取れない。 自分の形すらも曖昧で、言いようのない不快感と恐怖が込み上げてくる。

声を上げる事も出来ずに身を震わせていると、人々の中から一人の研究者が私の前まで歩み寄って来た。

 

「……助けて……ください……」

 

『こい――――言語を―――――危―――すぎ――すぐに、遮断――――』

 

彼が指示を出すと、暗いガラスの中に満ちる閉塞感がより一層強まったのを感じ取る。

“外”への繋がりをどこまでも容赦なく断ち切り、目の前の白衣たちは私をこのガラスの中へと閉じ込めたのだ。

 

『お前――――化け―――――この世界は――――させない――――』

 

映像にノイズが広がっていく、この先の見知らぬ記憶の想起を拒絶するように。

 

……ノイズに景色が飲み込まれる寸前、私が最後に見たものは、自らの視界ごと一切合切を飲み込む魔力と光の渦だった。

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

「んー……昨日見たイレギュラーに、そっちは剥き身? なんなのよこれ、どういう状況」

 

人差し指で交互に俺たちを差しながら、ネロと自称した少女はハクによく似た顔で首を傾げた。

彼女の格好は吹雪に見舞われて所々着衣や髪が乱れているが、それ以外の被害はないように見える。

三度確認するが、俺たちを取り巻く吹雪の壁はとてもじゃないが生身の人間に来られるものではないはずだ。

 

「お兄ちゃん……誰、あの女?」

 

「ま、どっちでもいいわ。 初めまして&あらためまして、私はネロ。 どっちでもいいから私のものになりなさい!」

 

「殺すね」

 

「待て待て待て待て!」

 

まるで私に従うのが当然と言わんばかりに無い胸を張るネロに対し、スノーフレイクが杖を構えて殺気を露わにする。

一触即発の状況に割り込もうにも両手足は拘束されたままだ、あのネロという少女はわざわざ死にに来たのか?

 

「止めないでお兄ちゃん、そいつ殺せない。 ()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「ワイズマン……あいつもハクと同じって事か?」

 

「ちょっと、あんなのと一緒にしないでよ。 あれが旧型機なら私は次世代機、完全な上位互換関係に……あいっだぁー!?」

 

どや顔で講釈を垂れるネロの額に、矢のような速度で飛んで行った巨大な氷柱が直撃する。

かなり危険な威力に見えたが、思いっきりのけ反ったネロの額からは小さな出血が見える程度で大したダメージには至っていない。

 

「ちょっと、死ぬかと思ったじゃない! これだから制御下に無い賢石は……!」

 

「殺す気で撃ったんだから死んでよね、変な事ばっかり言ってお兄ちゃんを誑かさないでくれる?」

 

「だから待て、そいつには聞きたい事があるんだから殺すなって!」

 

2人のやり取りを見るに、ネロの存在はスノーフレイクからしても完全に予想外のようだ。

だからこそさらにネロの存在に謎が深まる。 何故ハクと同じ顔をしているのか、どこから現れたのか、なぜハクの上位互換と宣うのか。

 

「ネロ、お前は何者なんだ! どうしてここにやって来た……何が目的なんだ!?」

 

「ええい、質問をワッと浴びせかけないでよ! ……ふん、けどいいわ。 ついでだからその質問にも答えてあげる」

 

「お兄ちゃん、騙されないで。 その女は敵だよ」

 

「ええ、敵よ。 あなたたちの世界全部の敵」

 

一瞬風が吹いたと思った瞬間、瞬きの間にネロの姿が消える。

 

「なにせ、この世界に魔力を与えたのは私達だもの。 そりゃ憎いでしょうね?」

 

「な、に……?」

 

再び聞こえたネロの声が聞こえて来た時には、彼女は俺の目の前まで距離を詰めていた。

 

「さっきも言ったけど、私達の目的は賢者の石の完成――――そして、完成品を()()()()()へ持ち帰ることよ」

 

ネロが伸ばしたその腕は、まるで水に触れるかのように俺の胸中へと沈んでいった。

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