俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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有害汚染少女 ④

「ラピリス、もうやめろ! それ以上攻撃を加えても魔力の無駄だ!」

 

「ですが……!!」

 

刀を握る掌はマメが潰れ、血が滲んでいる。

何度刃を振るっただろうか、もはや腕の感覚がない。 しかしそれでも目の前に立ちはだかる球状の壁はキズ一つない。

 

「こっちも駄目だヨ、地中もしっかりガードされてるみたいだネ……SHIT!」

 

やつあたり気味に削岩機を路面に突き刺し、ゴルドロスが悪態をつく。

非常識にもほどがある耐久性、何かしらの魔力的保護が働いているとみていいだろう。

ただそれが分かったところで破壊が出来なければどうにもならない、無駄に過ぎる時間に気ばかり焦る。

 

「ドクター、バグ技で壁抜けは出来ないのカナ!?」

 

「駄目だ、内部構造が解析できない。 情報がなければ節理の穴をつくことも難しいんだ」

 

「やはり、壁の耐久力を超える飽和火力をねじ込むしかないですね……!」

 

マメが潰れた痛みで甘くなっていた握りを正し、自分の中に残る魔力を刀の切っ先へと集中させる。

元はただの路面材、破壊不能などありえない。 ここにいる魔法少女全員の力を一点に集めれば……

 

「駄目だよ、ペース配分は考えないと。 壁を壊して終わりじゃないんだよ、退いて」

 

「……え?」

 

いつの間にか私の隣に立っていた少女が、美しい旋回を描いた回し蹴りをドームの壁面へ打ち込んだ。

音も衝撃もすべてが凍結したかのような無音の衝突。 

激突点からドームを覆うように広がる氷柱の波紋だけが、その幻想的な威力を物語っている。

 

「“お前は誰だ”とかそういう質問は後にしてね、私は魔法少女スノーフレイク。 遅れてごめんね、足止め喰らってた」

 

「スノーフレイク……? 誰かは分かりませんが、味方ですか?」

 

「いつでも私はお兄ちゃんの味方だよ、それより離れないと死ぬよ」

 

「えっ……うわっ!?」

 

言うや否や、彼女が私の襟首を引っ張ってドクターたちの方へ投げ飛ばす。

同時に、あれほど強固だったドームの壁面がガラスのように砕け、中から2人の人影が飛び出した。

 

「ぐっ……ハ……ハハハッ! クソ、やってくれる……!」

 

「…………うるせえな」

 

一人はブルームスター――――だと、思う。 黒でも赤でもないその姿は初めて見るものだった。

全身をすっぽりと覆う雪のように白いローブ、清貧な印象を邪魔しない程度にあしらわれたくすんだ金の装飾。

 

そして、そんなブルームスターに転がされるようにドームから飛び出したもう一つの影は対照的に“黒い”ものだった。

手入れなど考えていないと言わんばかりに伸びきった髪をひざ丈まで振り乱し、錆びついた装飾が張り付いたボロボロのマントとローブ。

あれがブルームスターと私達を隔離した元凶か?

 

「―――――遅かった」

 

混乱が広がる静寂の世界に、スノーフレイクの後悔だけがポツリと聞こえた。

 

「……し、師匠……っすか? その格好は一体……」

 

「ああ、ライナ……それと皆、無事で何よりだ」

 

「そ、それはこっちの台詞ですよ……何なんですかあなたのその格好、あの長髪の少女が敵ですか?」

 

「ははは、僕が敵だと? ひっでぇ言われよう――――パ゛ッ!!」

 

地面に転がったままケタケタと笑う少女の顔面が突如爆ぜ、さらに数mほどアスファルトの上を転がる。

明らかに魔法、しかし呼び動作も魔力の起こりも一切関知できなかった。

 

「悪い、離れててくれ。 巻き込まない自信がない」

 

「ぶ、ブルーム……」

 

「待て、ブルームスターの言う通りだ。 離れろラピリス……分かるだろ」

 

爆ぜた少女に歩み寄るブルームスターの背中を無意識に追おうとし、肩をドクターに掴まれた。

意識を向けなくても分かる、ブルームスターの歩いた軌跡には酷く濃い魔力が漂っているのだから。

魔法少女ですら害になる濃度の魔力、それが絶えることなくブルームスターの身体から溢れ出していた。

 

「スノーフレイクだったか、君は今のブルームスターについて何か知っているようだが」

 

「……あれはワイズマン、この世界に百害あって微塵の利益も存在しない絶対的な敵だよ」

 

「敵……ブルームスターが?」

 

そんなはずはない、と一笑に伏すことができない自分がいる。

ブルームスターの背中は何も答えてくれない、その沈黙はスノーフレイクの言葉を肯定するかのようだ。

 

「ハッハハハハハ! なんだよぉ、たった今変身したばかりだってのに使いこなすじゃあないか」

 

「うぇあっ!? あいつ、直撃したのにぴんぴんしてるヨ……!」

 

背後でゴルドロスとライナの息を呑む声が聞こえた、

たしかにあの謎の少女を襲った爆発は顔面に直撃したはずだ、しかし無傷……いや、一瞬だが焦げ跡が修復する過程が見えた。

攻撃を受けて無傷ではなく、とんでもない速度で傷が治っているだけだ。

 

「元々相性がよかったかぁ? さーて、この未完成な状態でどれだけ検証できるか」

 

謎の少女が指を鳴らすと、空間に亀裂が走り、その隙間から様々な武装が顔を覗かせる。

刀、槍、斧、槌、盾、銃、鋸、弓、数えきれないほど夥しい数の武器が、次の瞬間にも射出されそうだ。

 

「魔力の攻撃転用は及第点、だがこの物量に対する防御は……」

 

「いらねえよ」

 

ブルームスターが言葉を吐き捨てると、空間に空いた亀裂が瞬く間に凍結する。

亀裂の隙間から飛び出していた武装諸共、あれでは射出なんてできるはずがない。

 

「テメェにはこれ以上何もさせない……ワイズマンが何だろうが、俺がここで終わらせるよ」

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