頭の中に気が狂いそうなほどの情報量がなだれ込む、見るもの聞くもの全てが必要以上に“理解”してしまう。
まるで地球の
しかしなるほど、これは確かに……味覚や色覚を削ぎ落さなければ脳になだれ込む情報に圧殺される。
「……ハク」
返事はない、この姿に変わってからハクの意識を感じる事が出来ない。
「何故?」という問いもこの情報の濁流を探せばきっと見つかるのだろうが、今はその余裕がない。
俺が今探すべき情報は、
「はーあぁ……本当面倒だなぁお前さぁ、なんで僕の邪魔ばっかするの?」
「テメェが気に食わねえからだよ」
「ああそうかよ、僕ら心底気が合わねえなぁ……じゃ、死ねよ」
言葉に乗せた呪詛に反応し、周囲の大気がその在り様を変貌させる。
酸素が魔力に変換され、さらに魔力を元に“火種”を生成、大気中に残された水素を巻き込みながら着火。
残った魔力から形作られた鉄片をまき散らす、一呼吸分の大気から作られた即席グレネードが――――
「ハ……ハハハッ! なんだよ、結構使いこなしてんじゃん?」
「うるせえよ、使うしかないんだ。 反吐が出る」
「ひでぇ言い草じゃないか、魔力の魅力は十分理解してるだろ?」
「……こんなものが?」
後ろにいるラピリス達との距離は十分だ、スノーフレイクが安全な間合いを保ってくれている。
そうでなければ今の爆発に巻き込んでいただろう。 正確に言うなら、爆発とともに発生した高濃度の魔力に。
「こんなものが存在して良いはずないだろ、こんなものが……!」
魔力は有害だ、どれほど万能だろうと人を殺すエネルギーなどに未来はない。
そして、そんな劇物を漏出し続ける
「こんなものが溢れた世界で人は生きていけない、お前はこの世界を滅ぼすつもりか!!」
「そんなわけねえだろォ? たしかに
ンロギと名乗った怪物が笑う、歪な自信だけで構築された笑顔で。
「必要なのは検証と試行錯誤だ。 うん、たとえ不幸なことに世界がダメでも“次”ならいくらでもある! いつか至る成功の果てに、僕はきっと魔力による成功と称賛を得るのさ!」
こいつは怪物だ、人の形をしているだけにすぎない。
刺し違えてでも殺さなければ、この世界にどんな被害をもたらすが分かったものじゃない
「そのためにお前はどれだけの犠牲を出すつもりだ!?」
「犠牲? 必要な消耗だろ? だから僕のためにくたばれよ石ころ風情がさァ!!」
互いに魔力を固めて生成した武器が激突する。
何度か衝突を繰り返すたびに様相が変わる武器、その衝撃で路面にはいくつものクレーターが生成される。
「ははははは! いいねいいね、よく使いこなしているじゃないか! 魔力による質量の生成、それが基本にして究極だ!」
「黙れってんだよッ!!」
棍から剣へ、剣からボウガンへ、そして最後は拳を握ってンロギの腹部を殴り抜く。
肉にめり込む嫌な手ごたえ、吹き飛ぶ体、俺の拳は魔力による防御を超えて確かに相手の肉体へと届いたのだ。
「グッ―――ガフッ!? ハハハ……あぁー……イッテェなクソが」
内臓破裂、および血だまりが出来るほどの夥しい量の吐血、人類ならとっくに死んでいる。
しかしンロギは口元の血を拭い、心底不機嫌な舌打ちを鳴らすほど余裕綽々だ。
破裂した内臓や吐き出した血液を魔力で再度生成し直したのだ、たとえ首を斬り落としても瞬時に再生するだろう。
「ウザってぇな、石ころの癖に僕に逆らうんじゃあないよ。 クソクソクソ……!」
頭に血が上って見境が無くなって来たのか、ンロギの身体から膨大な魔力が溢れだす。
対処ならできる、俺たちの戦いは常に千日手の状態だ。 しかし何が来るかは分からないが撃たせるの拙い。
「お前さぁ……後ろのガキどもがずいぶん大事みたいだなぁ!?」
「ゲス野郎が――――!!」
何を撃たれようが俺は問題ない、ンロギと同じようにダメージを受けたそばから魔力による回復が行える。
だが背後のラピリス達は別だ、濃度の高い魔力の塊をぶつけられただけでも命にかかわる。
防御も避難も阻止も間に合わない、今まさに練り上げられた魔力が放たれようとしたその瞬間―――ーンロギの腕が崩壊する。
「―――――あ?」
ガラスのようにひび割れ、崩れ落ちるンロギの指先。 それと同時に練り上げられた魔力も霧散する。
俺やスノーフレイクは何もしていない、そもそもこちらの行動は間に合っていなかったのだから。
「クソッ、限界かよ……やっぱこっちの世界はまだまだ魔力が薄いか」
悪態をつき、次第に薄れゆくンロギの体。
その様子はこの世界から存在ごと消え行くようにも思える。
「しゃあねえ、じゃあな石ころ。 次に会うまでせいぜい頑張って魔力をバラまけよ」
「おい待て、どこに行く!!」
制止しようと伸ばした腕をすり抜け、ンロギの姿は完全に消失する。
残されたのは路面に刻まれた破壊痕、魔人が残した魔石、そして……
「…………魔力を、撒けだと……?」
俺が生み出した、高濃度の魔力だけだった。