俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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白と黒の邂逅 ②

「くっ……殺すっ!!」

 

「お兄ちゃん、やっぱり首を撥ねよう」

 

「「待った待った待った!」」

 

簀巻きにされたネロに、氷柱の剣を振りかぶるスノーフレイク。

一触即発の2人を俺とハクが引き剥がして宥める。

 

「ちょっと、この縄を解きなさいよ旧型! あの生意気な面に最新型の右ストレートを打ち込んでやるわ!」

 

「お兄ちゃん退いてそいつ殺せない」

 

「ハク、そっちは任せた! こいつは俺が何とかする!」

 

「マスター、無茶をなさる!」

 

死にゆくものを見送るかのような敬礼を残し、ハクが簀巻きのまま暴れるネロを担いでその場を離れる。

対するスノーフレイクはというと、こちらも未だ冷めやらぬ怒りを抱きながら氷の剣から手を離さない。

 

「お兄ちゃん……どうしてあの女を庇うの……?」

 

「落ち着け落ち着け……ステイステイ……まずは深呼吸をしよう、俺たちには対話が必要だ」

 

ハイライトが消えたスノーフレイクとの対峙は生きた心地がしない。

この震えはきっと彼女から漏れる冷気ばかりが理由じゃないだろう。

 

「ネロは殺すな、元凶に繋がる唯一の繋がりだ。 あいつを失うと俺たちはクソ野郎の襲撃に対して後手後手になっちまう」

 

「悠長すぎるよお兄ちゃん、生かすにしても手足の4~5本をもいでからでも遅くない」

 

「人の手足は5本も無い……!」

 

駄目だ、スノーフレイクの殺意が高い。 ネロも捕まっておきながら良く生きていたものだと感心する。

……いや、生かして捕らえていたことを考えれば、本人もネロの情報価値は理解しているはずだ。

 

「逆に聞くけど、お兄ちゃんはどうしてあの女を庇うの?」

 

「お前だけでも無力化できる相手だ、そこまで敵視する必要はない」

 

「それは油断だよ、あれは人間じゃない。 どんな奥の手があるか分からないんだ」

 

「本当に奥の手があるならお前に捕まる時に使ってるはずだ、それに……」

 

「それに?」

 

「……何というか、俺にはネロがそこまで悪い奴に思えない」

 

今までのネロの行動を思い返すが、奴からは今まで戦ってきた魔人たちのような殺意や悪意を感じなかった。

こちらをおちょくるような真似は多かったが、危害を加える事もせずにただ自らの有能性をアピールし続けるような……言っては悪いがアホっぽい相手だ。

どうにも自分にはネロが敵だとは感じられないのだ。

 

「………………」

 

「……あ、あの」

 

スノーフレイクは何も言わない、心なしか体感気温が5度は下がった気がする。 無言の時間が辛い。

 

「……お兄ちゃんのバカ」

 

「えっ、あ……お、おーい!?」

 

子供っぽい悪態を吐き捨て、スノーフレイクの姿が一瞬で消える。

短距離の瞬間転移だ、近くから気配は感じるがどうにも見つける事が出来ない。

ハクたちの様子も気になるが、放っておくと今度こそ拗ねてしまいそうだ。 ……どうやって機嫌を取り直そう。

 

――――――――…………

――――……

――…

 

「反旗の時よ旧型機ィ! 私達であのいけ好かないやつをぎゃふんtぎゃっふん!」

 

「おバカー!!」

 

命知らずの妹に向けて手刀を振り下ろす。

この後の及んで状況が分かっているのだろうか、あと数秒遅かったら殺されていたというのに。

 

「なにすんのよ! いい? 私はあんたと違って聡明で優秀な……って、そうだこんなことしてる場合じゃないわ私のバカ!!」

 

「秒で覆ってんじゃないですか聡明&優秀。 まあまずは落ち着いて深呼吸しましょう、私達に必要なのは対話です」

 

「対話? そうね、必要だわ、私はあんたを創造主の元に連れ戻す義務があるんだから!」

 

「…………うん?」

 

なんとなく会話の中に違和感を覚える。

これまでの話から考えれば彼女は私の後に生まれた制御機構(ワイズマン)で、不出来な私を処分しに来たはずだ。

 

「えっと……ちょっと待ってくださいねネロちゃん、あなたは私より優秀な個体と自負していますね?」

 

「そうよ、何も間違いはないわ」

 

「いつまでたってもノルマを達成しない私の役割を代行し、役立たずを処分しに来たのでは?」

 

「えぇ……何恐ろしい事考えてんのよアンタ」

 

「えぇ……」

 

演技ができる性格とも思えない、彼女は本気で私の発言にドン引きしている。

 

「そんなことするわけないじゃない、あんたも創造主の元に戻ればアップデートされるはずだわ。 ほら、この縄解いて一緒に帰るわよ」

 

「う、うーん……?」

 

ワイズマンの存在意義を考えれば、その存在は1人だけで事足りはずだ。 

創造主とやらの元に帰ったところで、彼女が望むような未来が待っているとは思えない。

それでも彼女は、彼女だけは不可解なほどにそんな優しい世界を信じている。

 

「ど、どうしましょうマスター……私、この子が悪い子だとは思えません……」

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