俺が魔法少女になるんだよ!   作:赤しゃり

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通りすがりの狼藉者たち ③

「ちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんた誰!? なんで逃げてんの!?」

 

「しゅこー……! 魔人マジパないし! 邪魔になる前に逃げしか勝たん!」

 

「何言ってんだかさっぱりわかんないんだけど! 降ーろーしーなーさーいー!」

 

宇宙服に身を包んだ魔法少女に抱きかかえられ、崩壊した街並みを逃げ惑う。

頭が混乱してきた、何が起きているのかさっぱりわからない。

私は確かあの旧型機を追ってここにきて、それで……

 

「……ああもうっ、なんで私は……!」

 

思い出したのは旧型機に問い詰められ、処理落ちする寸前の記憶だけ。

“お前は誰かを殺すのか”、投げかけられたその言葉に私は答える事が出来なかった。

 

「いや、エラーの解決は後よ後! それより何なのあの3体! 私何も聞いてないんだけど!」

 

「な、なんだか店員さんと妹の子を狙っていたみたいだけど……」

 

「……なんですって?」

 

賢者の石を持つ2人を狙ったという事は創造主の手引きだろうか? いや、私は何も聞いていない。

まさか、すでに私は創造主から見限られ――――

 

「――――そんなはずはない、そんなはずがないわ! 私は完璧よ、あの旧型機とは違う!!」

 

「うわわ、暴れちゃ駄目だし! えっと……ネロぴ?」

 

「なんっなのよそのむかつく呼び名! 降ろしなさいバカ!!」

 

「ぴえぇん! 今戻るとマジ敵しか勝たんから! それに私はこっちに用があるし!」

 

「用!? なによ用って!」

 

「そりゃもう、()()()()()()()()()()っしょ!」

 

「…………はい?」

 

 

――――――――…………

――――……

――…

 

 

『オラオラオラァ!! どうした、避けてばっかじゃつまんねえぞ!!』

 

「チッ、しつこい……!」

 

もはや瓦礫の山と化した店内から脱し、大鬼の執拗な追撃から逃れ続ける。

拳の一振り一振りが鋭く隙が無い、技術云々ではなく単に動作の1つ1つが速いのだ。

盛り上がる筋肉質な体は高密度で鋼のように固く、そのうえ当たり前のように力も強い。 

 

《単純に硬くて速くて強い相手ってわけですね、シンプルゆえに対処が難しい!》

 

「そういうことだな、しかも――――」

 

『なにブツブツ言ってんだ、俺に集中しやがれ!!』

 

 

二度、三度、そして四度目となる拳の一撃へ向けて箒の柄を突き刺す。

魔力で補強されたとはいえ箒の傷は浅い、これだけでは大したダメージにはならないだろう。

だがそれでいい。 この箒の役割は楔だ。

 

≪――――BURNING STAKE!!≫

 

突き刺した箒の尻を蹴りつける事でさらに押し込むと、箒は鬼の拳へ深く深く沈み込んでいく。

柄が完全に刺さり切った瞬間、補強に当てていた魔力リソースを全て火力へ転換。

内部から炸裂した大鬼の右腕は肩から先が見事に木っ端みじんとなった。

 

『グ――――オオオオオオオ!!!? て、テメェ……やるじゃねえか!!』

 

「クソッ、本っ当にめんどくさいなお前!」

 

哀れ爆発四散……したかに思われた右腕は、しかし傷口から増殖した肉片によって数秒で完全に再生。

これですでに5回目だ、この大鬼最大の特徴は凄まじい速度の自己再生力にある。

 

『ハッハハハハハハァ!! 楽しいぜぇお前!! 俺の身体を傷つけられる奴は初めてだ!!』

 

「傷つけたそばから治ってりゃ世話ねえよ、あとどれだけ治せるんだテメェ」

 

『さぁなぁ、俺も知らん!!』

 

速く、硬く、強く、そして治る。 おまけに限界も分からないほどに再生の底は深い、もしくは無いらしい。

いよいよ相手しているのが馬鹿らしい相手だ。 こちらも無限の動力があるとはいえこのままでは千日手になる。

……いや、俺に対して千日手になるからこその選出か。

 

「ハク、このまま戦ったら周囲の魔力汚染は?」

 

《……当然広がり続けます。 今はまだ東京内部に収まっていますが、限界があるかもしれません》

 

賢者の石が放つ魔力に歯止めは効かない、戦いが長引けば長引くほどに世界に満ちる魔力の総量は増えていく。

幸いにもここは天の壁に囲まれた東京内部だ、多少の汚染なら直ちに影響はないだろうが、濃度が高まるほどにボイジャーたちの身に危険が及ぶ。

 

『ははは! 楽しいなぁオイ、()()()()ってのは! 何でここまで殴って当たんねえんだ、なんで死なねえんだ!? もっともっと殴り合おうぜ男女ァ!!』

 

「悪いがお前に付き合ってる時間も暇もないんだよ」

 

既に試したが頭や心臓を潰しても奴は動き続けた、おそらくあの大鬼にとって核となるような部位はない。

原型が残っていればそこからしつこく再生する、ならばこちらの作戦は一つだ。

 

「ハク、一撃で塵も残さず消し飛ばすぞ。 あいつの再生を上回るとしたらそれしかない」

 

《了解です、被害範囲は最小限に留めて見せます》

 

可能な限り汚染を広げないギリギリを見極め、高火力を叩きこむ。

もし見極めを誤れば即再生、込めた魔力が過剰になれば余計な汚染を生んでしまう。 調整に関しては相棒を信じるしかない。

 

「……自分の命も賭けずに“殺し合い”か、なるほどね」

 

波立つ心も魔力に()べる、分かり合えない相手に言い争うのは時間と労力の無駄だ。

こちらの主張をぶつけるのはたった一度だけでいい。

 

「――――決めたよ、お前は消し炭だ」

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